「英ぁぁぁぁ」
寝不足で声が掠れる。瞼も重い。
半目で英にヨタヨタと近付くと、英は私の目の下にある隈を見て大きな瞳を更に大きく、見開いた。
「また寝ずに勉強してたの?」
呆れたように問いかける英に
「うん…だってそうじゃないと資格取れないもん……笑」
と、あがらない頬を精一杯あげ笑った。
ふーん、と言いながら英はソファから立ち上がった。
そしてそのまま部屋をスタスタと出ていく。
私はなんでどっか行っちゃったんだろうと思いながら、誰も座ってない大きめのソファに横たわる。
目を閉じるとすぐに眠りにつきそうだった。
ウトウトしていると、ぽやぽやした視界の中に誰かがいて私に毛布らしき暖かいものを掛けてくれていた。
あったかいな…そう思いながらゆっくりと眠りについた。
スマホから視線を外して、気持ち良さそうに眠る姉をじっと見つめる。
目の下の濃い隈、ボサボサの髪、窶れた顔…大事な時期だと姉は言っていたが、それで体調を崩したら元も子もないじゃん…と頑張りすぎな姉にほんの僅か不満を持っていた。
いつも楽しそうに笑う姉は、最近は無理に笑顔を浮かべているように見えた。
前に一度、大丈夫かと尋ねたことがあった。
でも姉は目を見開いて、その後嬉しそうに笑い、大丈夫だよ、と安心させるような声音で言った。
その時に少しイラついたのを覚えている。
「全然大丈夫じゃねえじゃんか…」
そう零しながら姉の白い頬を人差し指で突く。
今日くらいはゆっくり休んで欲しいなと思いながらスマホに視線を戻した。
パチッと目が覚める。
ここは…?と一瞬混乱に陥るも、私が横たわっている隣に英が座りながら寝ていた為、家だと理解した。
私の身体に掛けられた毛布と、頭にあるクッションを見て、英がやってくれたのかなと頬が緩む。
よし、まだちょっと眠いけれど勉強するか!と立ち上がると腕が引っ張られる。
驚いて振り向くと、いつの間にか起きていた英が私の腕を掴んでいた。
「姉ちゃん…また勉強すんの?」
睨みながら言ってくる英に、
「うん!あ、心配してくれてる??なら全然、大丈夫!さっき寝たし!」
一方的にそう告げ、英の手を優しく解くとリビングを出ようとした。すると、
「大丈夫じゃないでしょ?やっぱり隈すごいし。顔も窶れてる。今日くらいは休みなよ」
大丈夫!ともう一度言おうと振り向くと、先程とは違い、心配そうにこちらを伺っている英が見えた。
…………………いやまぁ、確かに疲れてるし。
今日くらいは?勉強休んでも?良いよね?
そう思い、最近は連絡手段としてしか使わなくなっていたスマホを取り出す。
久しぶりにハマっていたゲームにログインし、“自分”を操作し始める。
思いの外、のめり込んでしまい無我夢中でやってしまっていた。
そんな私に満足したように勝ち誇ったような笑みを浮かべる英を可愛く思いながらまたスマホの画面へと視線を戻した。
コメント
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尊い_:(´ཀ`」 ∠):