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牢屋の中は昼の光が差し込み、看守の姿が鉄格子の向こうに見えた。健は小声で、『合図したら倒れろ』と告げると、紗羅から手を離した。
しばらく無言が続き、やがて健が突然、鉄格子に体当たりしながら叫んだ。
『おい、お前ら!こっち来い!この子が倒れた!』
紗羅はすぐに膝から崩れ落ち、呼吸を荒げる演技をする。
看守が慌てて鍵束を取り出し、鉄格子の錠を開けた。
その瞬間、健が稲妻のような速さで看守の腕を掴み、床に押し倒す。
『今や!』
紗羅は頷き、牢屋の奥の緩い床石を持ち上げた。
そこには、闇へと続く細い穴が開いている。
『行け!』
健が看守を押さえつけながら、紗羅を促す。
しかし……
紗羅は健の手を離せなかった。
「健も一緒じゃなきゃ行かない!」
『アホ!俺が足止めせな二人とも捕まる!』
迷っている時間はほとんどない。
外からは別の足音が近づいてくる。
健は紗羅の手を力いっぱい引き寄せ、目を見据えた。
『信じろ……必ず後から行く。』
その瞳に嘘はなかった。
紗羅は唇を噛みしめ、暗闇へと身を滑り込ませた。
背後で、健の低い唸り声と看守たちの怒号が響く。