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33 - 第31話 無自覚

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2024年11月27日

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静寂の船上、萌香は一人で膝を抱えたまま、先ほどの「事故」の余韻に震えていた。夜風が彼女の顔をそっと撫で、恥ずかしさと悔しさを一層強くする。

「こんなこと…バレたくない…」

心の中でそう呟きながら、萌香は深くため息をつく。

しかし、その静けさを破るように、ゆうなが背後からやってきた。

「萌香、こんな夜遅くに何してるの?」

ゆうなの明るい声に、萌香は一瞬ビクッと体を震わせる。

「あっ、ゆ、ゆうな!?いや、その…ちょっと星を眺めてたの。」

萌香は慌てて笑顔を作り、なんとか誤魔化そうとする。

しかし、ゆうなは彼女の隣に腰を下ろし、無防備に手を伸ばして床を触れた。

「え、なにこれ、濡れてる…? 萌香、ここどうしたの?まさか…船、壊れてる?」

その言葉に萌香の顔は一気に真っ赤になり、体が硬直する。どうしても誤魔化したい、でもどう説明すればいいか分からない。

「えっと、それは…!」

萌香は言葉を絞り出そうとするが、声が震えて出てこない。

ゆうなは疑問の目を向けたまま手を嗅ぎ、「えっ…これって…」と呟く。

その時、いさなが突然現れた。

「何してんの、お前ら?」

彼は無邪気な表情で二人を見下ろしながら問いかける。

「い、いさな!?いや、何でもないの!」

萌香は咄嗟に叫び、ゆうなの手を払いのけようとするが、時すでに遅し。

ゆうなが何かに気づいたように目を丸くし、「もしかして…萌香…これって…」と驚愕の声を漏らした。

いさなはその様子を見て首をかしげるが、何も気にしない様子で近づいてくる。

「おい、何だかよく分かんないけど、喧嘩ならやめろよ。俺も寝る準備するからさ。」

「そ、そうだね!もう寝よう!」

ゆうなは強引に話を終わらせ、立ち上がると船室の方へ逃げるように走っていった。

萌香はほっと胸をなでおろしながら、いさなに振り返る。

「いさな…あの、何でもないからね!」

彼女は震える声でそう言ったが、いさなは全く気にしていない様子で肩をすくめた。

「早く寝ろよ。明日も忙しいんだから。」

萌香はその何気ない一言に救われた気がした。いさなが何も気づかずにいてくれたことで、ほんの少し軽くなったのだった。


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