船室の隅、萌香は震える手で自分の服を見つめていた。染み付いた恥の痕跡が、まるで彼女の心そのものを映し出しているかのようだ。
「どうしよう…このままじゃ…」
小声で呟きながら、萌香は意を決して服を脱ぐことにした。
船室に誰もいないことを確認し、萌香は慌てて濡れた服を脱ぎ捨てる。
「とりあえず洗って干さないと…」
彼女は手近にあったタオルを羽織り、染みた服を抱えて小さく息をつく。
しかし、そのタイミングでドアが急に開いた。
「えっ!? 萌香、何やってるの!?」
そこに立っていたのは、みりんだった。
タオル姿で硬直する萌香と、目を見開くみりん。状況を理解した瞬間、萌香は顔を真っ赤にしながらタオルをきつく掴んだ。
「な、なにって…! その…着替えを…!」
萌香はしどろもどろに言葉を繋げようとするが、みりんの視線は床の濡れた服に止まっていた。
「え?これ…もしかして…」
みりんは疑問を口にしかけたが、すぐに言葉を飲み込んだ。そして気まずそうに目を逸らしながら、ぽつりと呟く。
「そっか…大変だったんだね。」
みりんの優しい口調に、萌香はかえって胸が締め付けられるような気持ちになる。
「違うの!これは…ただのアクシデントで…!」
必死に弁明しようとするが、みりんは軽く手を上げてそれを制した。
「いいよ、何も言わなくて。そんなことより、替えの服持ってきてあげるから待ってて。」
萌香はその一言に救われた気がした反面、どこか釈然としないみりんの表情に違和感を覚えた。
みりんは船室を出て、萌香の替えの服を探しに行く。
「萌香も大変だな…けど、チャンスかも?」
彼女は心の中でそう呟き、複雑な笑みを浮かべる。
みりんにとって、萌香が抱える秘密を共有することは二人の関係を深める良いきっかけになると考えていたのだ。
「ふふ、これでちょっとは私の方が優位に立てるかもね。」
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