彼らが引き受けた理由とは
◇ しろせんせーside
「坊主。話せるようになったか?」
「う、、ん」
坊主はあの後、店の入口で泣き出してしまった。並々ならぬ思いでここにきて、言葉を絞り出したのだろう。感情が高まったことにより本人もパニックを起こしてしまったから、一旦奥に通したのだ。
「大丈夫。ゆっくり話してごらん?」
「…分かった。」
まちこがそう言うと坊主はたどたどしく、でも自分が傷つかないよう、言葉を選ぶように話し始めた。
「俺には姉がいます。姉は宮川誠子という名前で…あ、俺の名前は誠也と言います。死んでしまった母によると、父の名前である『誠』という漢字を入れたかったらしいですが…」
『宮川 誠子』
その名前には聞き覚えがあった。嫌な予感がした。予感。その“予感”は、坊主…誠也が続けた言葉によって“確信”に変わった。
「今回お願いする依頼は…この事件に関することです。」
そういい、誠也はある記事を見せてきた。
「それって…!?」
「あぁ、せやな」
「さっきの男の…」
_それは、さっきあの男に見せられたものと文面は少し違えど、内容は同じ『記者を務める20代女性、ビルから転落死』という内容が書かれていた。
「…もしかして姉さんの事件のことについて何か知ってるの?」
「…知ってるも何も。だよね。」
「…それに関するこをある男が俺らに依頼してきたんや。」
「っえ、、?」
「お前の姉ちゃんの…事件隠蔽を」
彼は目を見開いた。ショックなんてものじゃない。その目には“絶望”という文字があった。
事件隠蔽。その言葉の意味。その言葉の重さを彼は理解したようだ。
「…やっぱり、お兄さん達には迷惑かけたくない。だから、今までのは無かったことに」
「するわけないやろ」
彼は驚いた。彼自身、ここに来るのにも相当勇気が必要だったし、ここにもダメ元で、藁にも縋るような思いで来たはずだろう。
だから、簡単に引き下がって貰っては困る。大切な…大切なことだから。
「な、、んで、?」
「迷惑?俺らはそんなこと思ってへんわ。こんな依頼のひとつやふたつ、どうったことも無い。だから…だから自分で殺すな。《お前の意思》を。俺は…俺らはお前らの味方やから。 」
こんな言葉…久しぶりに言ったな。なんてことを考えながら誠也の方を見る。
誠也は驚いているようだった。でも、さっきの顔とは違う。目を見開いて俺たちを見ているが弱々しい瞳ではない。覚悟を決めた、強い顔だった。
「今回は、その男達に復讐をしたくてここに来たんです。」
「なるほど…よし。これは兄ちゃん達に任しとき」
「いや、僕の手で仇を討ちたいんだ…っ!」
「ダメや。お前には危険すぎる。」
俺はそう言うと立ち上がり誠也の肩を掴んだ。
「そうそう。これは俺達3人がやる。君の手は汚させないから。」
りぃちょも誠也に近寄る。
「でも、兄ちゃん達が死んだら…」
はっ、、俺らのこと誰やと思ってんねん坊主。
「アホ。 死んだりせんわ。」
「こんなんで死んどったら命がいくらあっても足りひんわ」
そういい俺は立ち上がりドア近くにかけてあったスーツの上着を着て、みんなの方を見た。
「まちこは情報収集。りぃちょは伝手をまわってくれないか?」
「了解。せんせー」 「りょーかい」
こいつら2人…いつにも増してノリ気だな。
「それじゃ、俺がこの子送ってくるわ」
「気をつけてよねーせんせー。」
わざとらしく俺の方を見ながらいうまちこ。
「さすがに大丈夫やで笑」
そう俺が返事をしながら、俺らは誠也の方を向く。
「安心してね僕。」
まちこがそう言うと俺らは誠也の方を見ながら、明るく笑う。
“絶対解決させるから。
もう2度と…2度と君から大切なものを失わせないよ。”
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