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「あれ、五条先生なんか落ちたよ」
俺は前を歩く五条先生のポケットから落ちたそれを渡す。
「あ、ありがとう。チェーンが壊れちゃったんだよね」
「これってもしかして結婚指輪とか?」
「そうだよ」
「へー、先生も結婚して…結婚!?」
「そんなに驚く?」
傍若無人が服をきているような先生が結婚していることに俺は驚きで声を上げると目隠しの上からでもわかるくらいに呆れた顔をしている。
「えぇー、そりゃ驚くっしょ」
「ま、機会があったら会うこともあると思うよ」
上機嫌で先生はそう言い、伊地知に声をかけ悠二を任せるよ、と去っていった。
「ねぇ、伊地知さんは先生の奥さんの事知ってる?」
「えぇ、まぁ知っていますよ」
「どんな人?」
「どんな、ですか…綺麗な人ですよ彼女は」
そういい伊地知さんはメガネのブリッジをあげると空気を変えるように次の予定の話を始めたので俺は頭を切り替えた。「なー、伏黒は五条先生の奥さんの事知ってる?」
「え!?五条先生結婚してたの!?ちょっとどういうことよ!」
教室で本を読んでいる伏黒に話しかけると同じく教室にいた釘崎が反応する。
「…あぁ、それなりには」
「どんな人?」
「私もすごい気になるんだけど」
「どんなって…普通にすごい人だよ。あの人は」
「それってすごいアバウトじゃない。もっとないわけ?どんな顔してるとかスタイルがどうとか」
「そんなの五条先生に聞けよ」
「聞けないからあんたに聞いてるんじゃない」
わいわい騒いでいるとたまたま通りがかったのか夏油先生が教室をのぞいてくる。
「どうしたんだい?そんなに騒いで」
「あ!夏油先生は五条先生の奥さんのこと知ってるよな!?」
親友だという夏油先生なら知っていると思い聞と驚いた顔をしたかと思えば手を顎に当てて悩む。
「そうだね、彼女は猛獣の使い手かな」
「猛獣ってライオンとか飼ってる人なの?」
「そういう意味ではないけど近いかな。ね、恵」
「まぁ、言いえて妙ですね。しゃくですけど」
「どういうこと?」
「私もわかんないわよ」
夏油先生に聞けばわかるかと思ったが結局わからずに釘崎と頭を抱えることになった。
「ここまできたらどんな人か調べるわよ!」
やる気を出している釘崎に連れられ2年生の教室に向かう。「はー?悟の奥さん?」
「なんだってそんなこと知りたいんだよ」
「ツナ」
教室に行くと3人ともそろっていたので聞いてみると真希さんは嫌そうな顔をするが他の2人と同じように考えている。
「伊地知さんはきれいな人、伏黒はすごい人、夏油先生は猛獣の使い手ってことだったんだけど…」
「まぁ、確かに猛獣の使い手だわな」
「おかか」
「確かになぁ」
「まったく想像もつかないんだけど…」
ここまでくると意地になっているところはあるが全くもってイメージが付かず途方に暮れる。
「呪具の扱いがうまい」
「珈琲が好き」
「高菜」
「え、どういうこと?」
「ええい、次よ次!」
2年の先輩方に挨拶をして後にする。「あ、ナナミーン」
「その呼び方はやめてくださいと言ったはずですが」
「七海さんは五条先生の奥さんの事知ってますか?」
他の人がいないか高専内を歩いていると前からナナミンが歩いてくるのが見え早速聞いてみた。
「あの人ですか?…怒らせてはいけない人でしょう」
「ナナミンでもそう思う人ってどんな人なの?」
「本当にわからなくなってきたわ…」
「ほかの人にも聞いてみるといいでしょうね。知りたいなら」
「もしかして皆クイズ気分でいない?」
「それはおそらく今更だと思いますが」
「なら教えてくれてもいいじゃない!」
釘崎が食いつくがナナミンはこれから任務だと言い去っていくのでその後姿にいってらっしゃいと声をかける。「ほかに誰に聞く?」
「あー、あの人は?伏黒のお父さん」
「どこにいるだろうな」
「なにがだ」
「「うわっ!」」
歩いていると突然後ろから声を掛けられ釘崎と共に飛び跳ねる。
「驚きすぎだろう」
「いきなり後ろに出てくるからじゃん!」
「流石ね…」
呆れ顔のパパ黒がいた。
「パパ黒は五条先生の奥さん知ってる!?」
「パパ黒をやめろ。…あー、俺の飼い主」
身を乗り出しながら聞くとおでこをはたかれた。
「だって伏黒と被るし。…飼い主?猛獣の使い手と似てんね」
「あ、だから猛獣の使い手ってこと?」
釘崎と顔を見合わせているとパパ黒は俺のことじゃないと不機嫌そうな顔をして去っていった。場所を移動し自販機でドリンクを買ってベンチに座った。いろんな人に聞いているがいまいち要領を得ず久しぶりに頭を使ったような気がする。
「結局わけわかんねー」
「五条先生の奥さんって誰なのよー!」
釘崎が頭を抱えながら叫んでいると声が聞こえた。
「ふふ、元気ね」
「あ、綾音さん!」
「綾音さんなら知ってるわよね!五条先生の奥さん!」
1級術師の神崎 綾音さんがくすくす笑いながら自販機で珈琲を買い、釘崎の隣に座った。
釘崎は身を乗り出しながら綾音さんにそう聞くと綾音さんはきょとんと目を丸くした後にあー、というと珈琲を一気飲みする。
「甚爾がいってたのはこのことね…」
げんなりした顔をしたと思えば釘崎と俺ほうを向き口を開く。
「五条の奥さんってのは…」
「お疲れサマンサー!」
やっと答えが聞けると思ったがその前に五条先生がやってきた。
「…五条」
「いい加減教えなさいよ!」
「五条先生―教えてよ」
綾音さんはあきれ顔で、釘崎は立ち上げって五条先生に詰め寄るがどこ吹く風だ。
「あれ、もう知ってると思ったんだけど。綾音と一緒にいるし」
「…どういうこと?」
「えー?どうって、僕の奥さんのことでしょ?」
「もしかして…」
「まさか…」
五条先生の言葉に綾音さんのほうを向くとため息をついて左手を顔の近くに持ってくる。薬指には結婚指輪がはまっているのは知っていたが、俺は今日同じデザインの指輪を見た。
首を思いきり先生のほうにむけるとニヤニヤしながらポケットに入れていた左手を出す。そこには拾った指輪がはまっており、それは綾音さんと同じデザインだった。
「「五条先生の奥さんって綾音さんだったの!!??」」
「そんなに驚く?僕ってば愛妻家だよ?」
「普段の軽率さがあるからでしょう」
思わず釘崎と声をあげると先生は不服そうにしていたが綾音さんはばっさりと切っている。
「え、え、綾音さんどうして五条先生なんかと結婚したの!?もっとほかにもいい人捕まえられるって!」
いち早く回復した釘崎はそう綾音さんに詰め寄ると何かってひどくない?僕最強だよ?と五条先生がいじけているが俺を含めて無視をした。
「久しぶりに聞かれたわ。その質問」
綾音さんはそう言って笑うと、
「気づいたら外堀を埋められていたのよねー」
とてもきれいな笑顔でそういった。
「え、え!?」
「うわぁ、それはないわ」
まさかの綾音さんの解答に思わず釘崎とドン引きしていると五条先生が慌てながら
「それってひどくない!?確かに逃げられないように歌姫とかにいろいろやったけどさ…」
と言い訳をするが余計にドン引きする。
「でも、逃げられたのに逃げないでおとなしく捕まったのよ?」
その綾音さんの言葉に五条先生はがばっと綾音さんに抱き着いた。
「綾音!もう大好き!結婚しよ!」
「もうしてるわよ」
体格差のある五条先生に抱きしめられてもびくともしない綾音さんは素直にすごいと思う。そしてその姿を見て猛獣の使い手というのがうっすらと理解できたような気がした。