それにしても……
今回、皆さんにご紹介した五回目の観察、いいや四度目のナッキ自身が覚醒するまでの顛末(てんまつ)には、個人的に思う所が多い出来事となった。
無論、我が父、ナガチカが空気読めないバカヤロウであった事の再発見、そんな瑣末(さまつ)な事では無くてね。
この前の時代は、コユキと善悪のガッツと闘魂、そして数多(あまた)の悪魔、いいや神々達が、世界を救う為に地上を去って行ったお話を一緒に観察して頂いた。
それから二十数年経たこの時代では、自らの意思で地上に残った神々、悪魔達や魔獣の王、魔獣神達まで次々と、その身を隠した時代だった……
神無き時代が始まってしまったのだろうか?
人を始め、地上に残された弱者たる命は、祈る対象すら永遠に奪われてしまったのだ、私はそう思ってしまっていた。
確かに、古くから命有る者を守り続けて来た神々は、止むを得ない事態に際して地上を去った。
しかし、しかしなのである!
今ここにナッキが、いいや、彼だけでなくサニーもティターンとして存在している。
ここまでの観察による知識では、ティターンとはルキフェル、バアル、アスタロト、サタナキアの共通の親である、クロノスやウラヌスの種族名、つまり紛れも無い『魔神』の系譜、その名であった筈である。
つまる所、この時代、この『美しヶ池』に、新たな時代を担う『魔神』が誕生した事になるのだ。
無論、数年後にカーリーの後継として次代の『魔神』として歩み始めた私、観察者である幸福(こうふく)聖邪(せいや)も次世代の神なのかもしれない……
改めて身が引き締まってしまう思いである、まあ、身は残っていないんだけど……
何が言いたいかと言うと、この段になっても尚、この世界、地球は諦めていなかったのではないか? と言う事だ。
レグバのラダ達か、はたまたメットカフーだろうか? この星の原初の神々たちは、新たな神としてナッキとサニーを産み出す運命を用意していたのではないだろうか?
それに、ヒルミミズや魔力を吸収し転じて生き物に魔力を与える事も出来る魔力草、柿の存在……
私の時代まで必需品として珍重されている三種の薬剤の誕生。
まあ、瑣末(さまつ)な事であろうが、数年後に目覚め、その後、無限とも思える時間を観察し続けてきた私の存在意義も彼らの意思、神々の思惑ゆえかも知れない…… そんな事さえ感じてしまった。
失われた神々の代わりと言う訳では無いだろうが、偶然か必然か、この時代には新たな神々が誕生したのだ、それだけは疑い無く確かな事実である、果たしてその事に意味は有るのだろうか?
んな事を考えている間に、我が父、思ったより滅茶苦茶軽かったナガチカは鼻歌混じりで帰って行き、『美しヶ池』の面々も各々眠りに就いたようだ。
今日はこのまま観察を中断せずに、ゆっくり自分に与えられているかも知れない使命とか、何か考えを巡らしてみたい気分になった私、観察者である。
皆さんはどうかゆっくり休んで欲しい、また明日♪ ふぅ~、神、悪魔、か…… ムニャムニャ、グーグー……
コメント
1件