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私はテーマパークのオフィシャルホテル、プリンセス・モチーフルームのベッドの上に横になっていた。
シックなホテルのつくりなのに、プリンセスのカラーであるスイートピンクが配置されていて、可愛い部屋だ。ルームフレグランスもどこか甘い香りで、肺に満ちるほど幸福感が増していく。
そんな素敵な空間で私は、お風呂にも入って上質なガウンを羽織り。今日の潤とのデートをスマホで撮った写真で見ながら、幸福に浸っていた。
「あぁ、とっても楽しかったな。パレードは見られたし、ファストパスで乗り物はスイスイ乗れたし。潤とウォータースプラッシュコースターで、びしょびしょに濡れたけど、楽しかった」
ふふっと笑みが溢れる。手元のスマホの画像には、潤とお揃いの猫耳付きカチューシャをつけて、マスコットキャラ達と撮った写真があった。
私が今日の記念にどうしても撮りたかった一枚。
画像の中の私はにっこり微笑んでいるけれど、潤は瞳を逸らして照れているのが愛おしい。
写真を撮る前に潤が「俺に猫耳は似合わないのに」と、呟いて照れていたのもすごく可愛かった。
きっと、十年前に一緒にテーマパークに行っても、こうやって同じ行動をしていたと思う。
唯一違うと思えるのは、私と潤の薬指で輝く結婚指輪。
これは十年前にはなかったけれど、この先ずっと私の指先で光る指輪に間違いない。
今も私の薬指にきらっと輝く指輪を見ると、口元が緩むが今は何も隠すことはないのだ。
えへへっと薬指に馴染んだ指輪とスマホの写真を交互に見て、私はまた微笑みながら、スカイビルでのあの日の出来事に想いを馳せる。
あの日、私と潤は本音を曝け出して、それでもずっと一緒にいたいと心の底から分かりあえて、お互いに欠けていた自信を手に入れて──契約結婚をやめた。
そしてスカイビルをあとにした私達は、私達が出会ったあのカフェチェーン店に行った。
私が働いていた店舗じゃなかったけれど、とても懐かしくて十年前のことをたくさん、たくさん話し合った。
そこでコーヒーやドリンク、軽食をたくさん食べた。
どんな高級店のディナーよりも潤と私には懐かしい味わいで、素敵なひとときだった。
「本当にあの日は大変だったけれど、潤とすべて分かり合えた日だったな」
ある意味、あの日は本当の結婚記念日かもしれない。そうして、私たちは本当の結婚をした。
指輪はそのまま。
買い替えるなんてとんでもない。
私はこの指輪を一生大切にする。
契約結婚をやめて、私達の環境は変わったかというとあまり変わらなかった。仕事上での夫婦別姓はそのままだ。
変わったのは、以前は首から下げていた指輪をこうして指に嵌めたこと。
会社の人たちに「結婚したのか」と尋ねられたら、「そうです」と結婚をオープンにしたくらいだ。
相手は誰かと聞かれる前に周囲は何やら察したみたいで、私は何も聞かれなかったが、以前私のことを悪く言っていた人たちが謝りに来てくれた。私はその謝罪を快く受け入れた。
その後、社内で謝罪をしてくれた彼女たちを見かけると、こちらから先に元気よく挨拶するようになった。
「きっと、前までの私だったら謝罪を受けても、彼女たちを避けていただろうな……」
潤は潤で、男女一緒の皆とのランチなら時たま顔を出すようになったと聞いている。
小さな私たちの変化。
それがとても喜ばしい。
これからどんどん、新しい変化が私たちに訪れるだろう。大きなことも、小さなことも、びっくりすることも。でも、大丈夫。
もう、私は迷わない。
そう思ったとき、耳元で「知佳」と名前を囁かれた。
振り向くと、そこにはお風呂上がりの潤がいた。白いガウンに、まだ乾ききっていないしっとりとした前髪。ガウンから覗く、くっきりとした鎖骨。ホテルのボディソープの香りを纏わせた潤は、今日も色っぽい。
微笑みながら「潤とこうしてテーマパークに遊びに来られて嬉しいなって思っていたの」と言うと、潤もベッドの上に寝転び私を抱き寄せた。
潤の腕の中。温かくて気持ちよくて、私が世界一好きな場所だ。
「十年待たせて、悪かった」
「ううん。連れてきてくれてありがとう」
カフェチェーン店でたくさん話をしたとき、次の休みは十年前に行くことができなかったテーマパークに行こうと、潤に誘われたのだ。
私はもちろんその場で快諾した。
潤自らこんな賑やかなところに行こうと言い出したのは少し意外だったが、それも「大人になって誘うのは、躊躇ってしまった」と笑顔で言っていたので、潤の十年分の気持ちにも良い区切りができたと思った。
そうして今日は朝からたくさん遊んで、たくさんお土産を買って、夜にはこうして潤に抱きしめられる。
私にとってきっと、これ以上の幸せはない。
またふふっと笑ってしまうと、背中に回った潤の手が、私の背中をゆっくりと撫でた。
「知佳はまた、今日も変わってしまった」
「変わった?」
「毎日、毎日可愛く変わるから、俺は朝起きるたびに知佳に惚れ直している。知佳は罪作りだな」
「もう、潤ってば。そんなの私だって同じだよ。潤はずっとかっこよくて、潤しか目に入らない。他の人を愛せない。来世まで潤に結婚してもらわないと困る」
ごそっと潤の腕の中から潤を見つめると、お互いどちらからともなく笑い合って、おでこをくっつけ合う。
「そうだな。俺も知佳としか結婚できないから、知佳に結婚してもらわないと困るな。知佳、愛してる」
「うん。私も愛してる」
部屋に漂うフレグランスより甘い言葉は、心をも蕩けさせる。
潤が私の頬にキスをしながら、ゆっくりと覆いかぶさってきた。
これからさらに濃密な甘い時間が始まる。心も体も蕩けてしまうと胸がきゅんとしたとき──
「知佳、今日は付けないで抱いていいか?」
潤が静かに囁いた。
コメント
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おお!完結までまとめて読めるって嬉しいけど、1週間待つのはちょっと長いな…!でも、ここまで40話も連載してきたんだもん、最後までしっかり書ききってほしい気持ちもあるし、待つ価値はあると信じてる🔥 頑張ってください、猫とろさん!ラストスパート応援してます💪