____久しぶりに夢を見た。朱色《しゅいろ》の鳥居がどこまでも続いていて、進んでも進んでも前に進んでいる気がしない。
日本にそんな場所があった気がする。あっ、たしか、京都にそんな神社があったな。えーっと、なんて名前だったかな?
たしか、伏見《ふしみ》稲荷大社《いなりたいしゃ》だったかな? でも、どうして俺はこんなところにいるんだ?
なぜ、このタイミングでそんな夢を見たのか、俺にはさっぱり分からなかった。
異世界の森や湖を見てきたせいなのか、それともミノリたちと旅をしてきたせいなのか……。
どちらにせよ、どうして俺がこんな夢を見ているのかは分からなかった。
先へ進むと、いつの間にか鳥居が周囲から消えていた。まあ、夢の中だから多少、体感時間が狂っていてもおかしくない……かな?
少し進むと、鳥居の代わりに小さな社《やしろ》の中に石が祀《まつ》られていた。
見た目はバレーボールより、一回《ひとまわ》り小さく、その左側には立て札があった。
それには、【封印石《ふういんせき》】と墨汁《ぼくじゅ》で大きく書かれていた。
そして、そのとなりには縦書きでこう書いてあった。
『この石に触れる者《もの》は、己《おのれ》が善《ぜん》であるか悪《あく》であるかを見極めよ。
そして、己《おのれ》の罪の有無を今一度、確認せよ。
この石に触れた者《もの》はこの石に封印《ふういん》されし、希望にも絶望にもなり得《う》る力を手に入れることができる。
しかし、その力を自在に操《あやつ》れるかどうかは己《おのれ》次第である。
右記《うき》を読んでなお、その力を欲するというのなら我々は止めない。
だが、これだけは言っておく。力の使い方を間違えれば、己《おのれ》自身を滅ぼすことになると……』
……なるほどな。つまり、この石は他のやつらに自分の力を取られたくないから、俺にその力を手に入れてほしい、ということか。
了解した。お前の力は俺が必ず取りに行くから、もう少し待っててくれ。
その時、誰かが俺を呼んだ。まったく、もう少し寝かせてくれよ……。
俺は、その声を聞きながら、その石の形と大きさを確認した。
その後、クルリと回れ右をすると、声のする方へ歩き始めた……。