テラーノベル
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「あ、正確には起きている由布ちゃんは初めましてかな!」
「え、あ、私も初めましての様なそうでないような…」
私もわけのわからない事を口走ってしまった。
おかしな人に思われたかなぁ…。
まぁでもまだ寝ぼけているフリをすればセーフであるが。
「僕、最近時々ここにコーヒー飲みに来ていたんだよね。そしたらいつもカウンターの端で気持ち良さそうに寝てる女の子がいるだろう、だから マスターにこの女の子はいったい何者なのかと聞いてみたんだよ。」
「あ、そうだったんですね。だから私の名前も…お恥ずかしい姿お見せしてすみませんでしたっ」
私は間抜けな寝顔を見られしかもヨダレも出てなかったかなと恥ずかしくなった。
でも見た目が絃さんなのでそんなに恥ずかしい感じがしない気もするが。
もし絃さんなら(ユウユウ可愛い寝顔だったよ!)とか言ってくれるのだろうなぁ…
そんな事を思ってまた寂しくなった。
実在なんかしないはずの絃さんなのに…。
「可愛い寝顔だったからついマスターに聞いちゃってさ!」
私はドキッとした。
絃さんによく似た低い声。
そして何度もあの夢の中で聞いた私が嬉しくなる気の利いた言い回しは絃さんそのものと思えた。
「可愛いかはわからないですが…あの、お名前は…?」
絃さんであって欲しいけど絃さんであって欲しくない。
夢で見た人と何もかも同じ人なんて存在するわけがないし…。
夢と同じ絃さんなら心の奥底の引き出しに閉まってある私の彼に対する思いは開けてはならないのだ。
もしも絃さんであるのなら置かれている状況.立場は夢とは違っていて欲しい…。
引き出しから堂々と自分の気持ちを出して何も気にせず’私の絃さん’と言えるように…。
なんて自分に都合の良い事を心の中でお願いをしていた。
ほんのうたた寝の間に見た夢とは思えない深くて現実味のある夢に翻弄されるなんて…。
でも実際私の隣には小鳥のキーホルダーを持った絃さんそっくりの男性がいる。
まったく訳がわからない状況の中でこの男性が誰なのか、いろいろな感情を持ちながら、彼の口から名前を告げられるのを固唾を飲んで待っていた。
コメント
1件
ああ、この焦れったくて甘酸っぱい空気感、たまりませんね……!「絃さんであってほしいけど絃さんであってほしくない」という由布ちゃんの揺れ動く心情がすごくリアルで、心臓がきゅっとなりました。うたた寝の夢と現実が交錯する感じ、現実の彼が口を開くまでの“間”の描き方も絶妙で、続きが気になって仕方ないです!