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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第22話 〚張り詰める視線〛(澪視点)
最近、
空気が重い。
◇
理由は、
分からない。
◇
誰かに何かを言われたわけでもない。
嫌なことが起きたわけでもない。
◇
なのに。
◇
教室に入ると、
背中に、
視線が刺さる気がする。
◇
(……見られてる?)
◇
澪は、
無意識に肩をすくめた。
◇
前を向く。
黒板。
机。
ノート。
◇
いつも通り。
◇
隣を見ると、
海翔がいる。
◇
それだけで、
少し呼吸が楽になる。
◇
「大丈夫?」
小さな声。
◇
澪は、
首を横に振った。
「うん……たぶん」
◇
“たぶん”。
◇
その言葉に、
自分でも違和感を覚える。
◇
◇
昼休み。
◇
澪は、
一人で図書室へ向かった。
◇
本棚の間は、
静かで、
落ち着く。
◇
(ここなら……)
◇
本を一冊、
手に取った瞬間。
◇
――ぞく。
◇
背筋に、
冷たいものが走る。
◇
心臓が、
一瞬だけ、
強く跳ねた。
◇
(……なに)
◇
頭は、
痛くない。
◇
でも。
◇
胸の奥が、
きゅっと締めつけられる。
◇
澪は、
ゆっくり振り向いた。
◇
誰もいない。
◇
(気のせい……?)
◇
そう思おうとした、その時。
◇
本棚の向こう。
◇
「……」
◇
微かな、
気配。
◇
誰かが、
“見ていた”気がした。
◇
澪は、
一歩後ずさる。
◇
心臓が、
また、
強く鳴る。
◇
(予知……?)
◇
でも、
映像は来ない。
◇
未来も、
見えない。
◇
ただ。
◇
「近い」
◇
そう、
本能が告げていた。
◇
◇
教室に戻る途中。
◇
廊下の向こうで、
りあが誰かと話しているのが見えた。
◇
笑顔。
高い声。
いつも通り。
◇
……なのに。
◇
視線だけが、
一瞬、
澪に刺さる。
◇
(……)
◇
胸が、
また、
きしむ。
◇
海翔の姿を探す。
◇
見つけた瞬間、
心臓が、
少しだけ落ち着いた。
◇
(大丈夫)
◇
(私は、一人じゃない)
◇
そう思っても。
◇
張りつめた空気は、
消えなかった。
◇
まるで。
◇
“何か”が、
静かに、
近づいてきているみたいに。
◇
澪は、
胸に手を当てる。
◇
鼓動は、
確かに、
早かった。
◇
(……見られてる)
◇
理由は、
分からない。
◇
でも。
◇
この違和感だけは、
嘘じゃない。
◇
そして澪は、
知らなかった。
◇
この視線が、
ただの視線ではないことを。
◇
選択を、
迫る前触れだということを。
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