「本当ですか? それはもちろん僕の夢ですからやってみたいです。でも、今の僕にできるでしょうか?」
自信なさげな表情は、涼平があまりにも真面目で責任感がある証拠だ。そういうところを俺は理解し、信頼してる。
「ああ、涼平なら大丈夫だ。自信を持って指導してもらいたい。まずは、来月からAクラスの指導員の補助に入ってくれ。先輩からしっかり学ぶんだ」
「ありがとうございます! 自分が選手として叶えられなかった夢を……今度は他のみんなに託して頑張ります」
涼平の目がキラキラ輝いた。
「その意気だ。お前には期待してる」
「はい、ありがとうございます。頑張って期待に応えます! あっ、双葉さんのこと……幸せにしてあげてくださいね。僕にはできなかったけど……」
「何も心配するな。双葉も結仁も俺が必ず幸せにする。だから、涼平もいつかは……」
「えっ、ああ、そうですね。僕もいつかは……。でも、僕はかなりの恋愛下手なんで、新しく好きな人ができるかどうかは疑問ですけど」
「俺は、兄としてお前に幸せになってもらいたい」
「その言葉、すごく嬉しいです。常磐先生に言われたら、絶対幸せにならないとダメですね。本当に……僕みたいなまだまだ未熟な人間に、色々チャンスを与えてくれて、ありがとうございます」
「涼平らしく、気負わず、元気に頑張ってくれ。子ども達の心のケアも頼んだぞ」
「はい。TOKIWAスイミングスクールから、必ず将来のオリンピック選手を出してみせます!」
その顔には決意がみなぎっていた。
涼平みたいな素晴らしい人材がいてくれて、TOKIWAスイミングスクールの未来は明るい。
俺にとって家族のように大切な涼平が、大きな希望を抱いてくれたことがたまらなく嬉しい。
いつか出会う大切な人と、愛に満ちた幸せな生活を送ってもらいたいと、心の底から願わずにはいられなかった。
俺は、涼平と別れ、彼の父親の運転する車で急いで仕事に戻った。
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