テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
🐙side
あれから一か月、俺の記憶が戻る気配は微塵もなく、気持ちを吐き出した小柳くんは何事もなかったかのように友達として、仲間として接してくれる
それに小柳くんは配信活動を再開した
俺はと言うと任務での体調不良として無期限活動休止ということになっているらしい
ヒーロー協会にもファンからの心配の手紙が毎日のように届いているようだ
(なんにも覚えていないのに俺を好いてくれる人はこんなにいるんだ)
向けられた好意に今の俺は何一つ返すことができない
それだけで胸が締め付けられていてもたってもいられなくなる
町中でKOZAKA-Cが出て俺だけ何もできないとき、
ヒーローの会議に俺だけ出席できないとき、
これまでの役立たずの思いでがこれでもかとフラッシュバックしてくる
今の俺はみんなの足でまといだ
みんなが好きなのは記憶があるときの俺であって今の俺じゃない
どんどん呼吸が浅くなる、苦しい、なんで?
「星導!!!」
『ぁ…?』
「ゆっくり呼吸しろ、大丈夫、お前の存在価値はお前だけで決めさせないから」
『んぐっ、げほっゲホッ、』
どうやら全部声に出ていたようだ
『……ごめんなさい、思い出せなくて』
「大丈夫、いいから。でも自分を傷つけることはするな」
「記憶がなくとも、それは星導の身体だから」
『…はい、』
一見すると優しく慰めているように聞こえるが今の俺には逆効果、
大事なのは俺の体だけ、と言われた気分だった
「あ〜…、さ、最近さ!暗いことばっかだし」
「切り替えて記憶探ししに行か、ない…?」
『記憶、探し…』
「そ、そう!お前も思い出したいだろ?記憶。」
「思い出の場所巡ったらなんか思い出すかも…みたいな?」
記憶を失ってから環境に慣れることに精一杯でそんなこと考えてもいなかった
確かに、俺の記憶が戻ったらみんな俺を好いてくれるだろうか
記憶の限り見たことない焦りと励ましが沢山詰まった表情で彼は言う
『いいですね、記憶探し、思い出巡りですか』
「じゃあ決定だな、早速行ってみるか〜…」
『俺には記憶がないので小柳くんが案内してくださいよ?』
「もちろん」
これは頼もしい限りだ
さっきの俺とは打って変わって、今の俺には望郷の思いと好奇心で満ち溢れている
小柳くんが一番最初に選んだ場所は水族館。これまた王道な場所に来たもんだ
「この水族館は…」
『どのような思い入れが?』
ちょっと出し渋っている彼の背中を押すように問いかける
「ぇあ…、えっと〜…」
「俺と星導の初デート…?///」
『ふ〜ん、顔真っ赤ですよw』
「うるさいな、いざ口に出すと意外に恥ずいんだよ」
今の俺には他人事だ、好きなだけ煽り散らかす
どうせ記憶が戻ったら俺も恥ずかしい思いに遭うんだから
今のうちに煽れる要素はコンプリートしておこう
「で、なんか思い出しそう?」
『う〜ん、全く』
こう言う系は記憶を取り戻すときに頭痛があるものだ。漫画の知識だが
それらしき頭痛もなければ、頭のもやが晴れる気配もない
「そっか〜…じゃあ次だな」
『え〜!?この水族館の中でも特に思い入れのある場所とかないんですか〜』
あまりにも早い撤退、俺でなきゃ見逃しちゃうね
「思い入れのある場所?強いて言うなら…」
「あそこにあるタコの水槽、」
そう言って彼は一つの水槽を指差す
156
66
『タコ…俺らしいですねw』
『でも、あれ見ても何も思い出せません』
何の変哲もないタコの水槽、同族が閉じ込められているのをみるのは気分が悪いものだ
嘘だけど、なんなら優越感に浸りまくっている
次に来たのはプラネタリウム、またもや王道なデートスポットだ
『ここはどんなデートできたんですか?』
「デートなこと前提かよ、」
『だってそうでしょう?』
「まぁそうだけど」
「ここは星導がチケットがあるから〜って誘ってくれて来た」
『俺なかなかやりますね、自分から誘うなんて』
「俺は絶対に自分から誘わなからな」
過去の自分の功績に感心しつつ、小柳くんならそりゃそうかと納得する
「おい、それで納得するなよ」
『ありゃ、聴こえてました?』
「…まぁいい、もう始まるぞ」
駄弁っているうちに電気は落とされ、上を見上げれば真っ暗な中に少しずつ宝石が光り輝いていた
『わぁ、きれい』
思わず感想を口からこぼす
「よかったな」
まずい、眠くなってきた
ここで寝てしまうのは良くないな
少しでも眠気を誤魔化そうと隣の小柳くんに目線を移す
「ん?どうした?」
一方的に見ていただけなのに彼はこちらに気づいてくれた
『あ、あぁ、いや、眠いな〜って…』
「ふはッ、前来たときも寝そうになってたわ」
「変わんねぇな、お前」
『ふふっ、そうですか笑』
そんな他愛のない雑談を挟んで再度上を見上げる
[夏の大三角が〜]
ナレーションの声が落ち着いた男性の声で心地がいい。本当に寝てしまいそうだ
いかんいかん、俺は記憶を取り戻さなければ
「このナレーター、前来たときと一緒かも」
「声が似てる」
『そうなんですか、よく覚えてますね〜』
「星導と過ごした時間は忘れないよ」
『おぉ、口説いてます?』
恐ろしいほど甘い台詞に驚きが隠せない
小柳くんは恋人に対してこんなにも甘いのか
「ははッ笑、口説いてるかもな」
[これで宇宙観察ツアーを終わります、この度はご覧いただきありがとうございました]
少しずつ電気がついて明るくなる
『終わっちゃった』
「で、なんかピンときた?」
『いえ、全く』
『でも、頭のモヤがすこし強くなった気がします』
存在すら感じることのなかった記憶の違和感が少しずつ強くなっている
「そうか〜…」
結局、ただ成人男性(人外)2人でデートスポットを回っただけになってしまった。流石にきまずい
「こういうのって思い出す展開があるもんじゃないのか…?」
『漫画の読みすぎじゃないですか?現実そんな甘くないかも…笑』
『まぁ、楽しかったですよ』
『久しぶりにちゃんと笑えました!』
「そりゃよかったな」
『ほかにいった場所とかないんですか?』
「う〜ん…カフェとかレストランとか、細かいのは沢山あるけど」
「王道のデートスポット!みたいなのはないかも?」
『へぇ〜…』
「心底興味のなさそうな返事やめろ」
『ちゃんと感心してますよ!!』
『でも、流石に今日はつかれました…』
「帰るか〜…俺も疲れたわ」
太陽が地平線に隠れようとしている
夕日で辺りはオレンジに染まり濃く影が落ちる
今日は色々あったが充実していたな、一日を振り返り溺れるような彼の甘さをふと思い出す
恋人にはあんなに甘くなるのか
彼に恋愛感情は全くと言っていいほど抱いていなかったはずが、何故か好意を向けられると心が温まる
それに甘い小柳くんに対して不意に心がぎゅっとした
(もしかして、俺も小柳くんのこと好きなのかな〜…)
↓自我
ふはは、終わるとでも思ったか
まだ続きますよ、と
完結むずいね〜…行き当たりばったりで書いてるのがバレるわ、
今回はほのぼの回でしたね
しかも長い、3000文字ぐらいあります、私史上初の長さ