第二話 ウワサ
引っ越してから数日。あの隣人とは、エレベーターや廊下で何度か顔を合わせた。
会えば軽く会釈するだけ。会話はほとんどない。
相変わらず地味で、目立たない。
それでも、なぜか印象に残る。
その日、ゴミ袋を片手に外へ出ると、集積所の前で数人が立ち話をしていた。
近所の人らしい。
「……ねえ、あの部屋の人知ってる?」
その一言で、足が止まった。
「〇〇号室の? ああ、ウワサ絶えないよね」
笑い混じりの声。
「ほら、前に住んでた人もすぐ引っ越したでしょ」
心臓が、嫌な音を立てた。
――ウワサ?
俺はゴミ袋を持ったまま、気づかれないように少し距離を取った。
――今思えば、聞かなきゃよかった。







