テラーノベル
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研修が再開しても、華の胸には先ほどの光景が残っていた。
――律が柊木先輩に向けていた、柔らかな眼差し。
「桜坂さん、次はフロントでの接客練習です」
律のぶっきらぼうな声に、華は慌てて姿勢を正した。
(私のときと、全然違う……)
注意されるたびに冷や汗をかきながらも、心の奥で比べてしまう。
律はいつも自分に厳しい。けれど、先輩に向けたあの笑顔は、どこか優しくて温かかった。
「……はい。頑張ります」
口ではそう答えながらも、華の胸の奥には言葉にならない小さなざわめきが広がっていた。
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