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瑠璃🍫✨💭ྀི
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「彼女、めちゃくちゃ可愛い人で。あ、顔がね。顔がすごい可愛い人で。性格はそうだな、可愛いとはいいがたいしっかりした人だったな。頑固で、真面目で。……似てるって思ったことないな」
この子がこんなに可愛いって言うくらいだ。相当な可愛い人だったんだろう。自分と似てるのか、なんて聞いてしまったおこがましさにますます顔が熱くなった。
やだもう、言うんじゃなかった。
なんで?とばかり首を傾げて顔覗き込まれると、唇を噛んで覚悟を決めた。
「忘れられない人の面影でもあるのかなって、そんな可愛い人とは思わなかったから、えっと……別に調子に乗ったわけじゃ……」
「あはは。別に調子に乗ってるとか思ってないし。向こうは単純に系統が可愛い系だったってハナシ。春美さんは綺麗系でしょ。性格は、押しに弱い」
「ぐっ」
また言葉に詰まった。広睦くんと話すといつも言いくるめられたりしてやられて言葉に詰まる。
広睦くんが笑うと触れてる私の背中が揺れる。振り向いた距離感に気づくと、恥ずかしく、いたたまれない。
「綺麗な人だなって思ったんだよ。俺にとって春美さんは春美さんです。そういうんじゃない。だから、安心してください」
「そっか」
不安で聞いたんじゃなくて、単に疑問だっただけ。そう思ったけど黙っておいた。わずかに、ほっとして背中から伝わる人肌の心地よさにしばらく包まれていたかったから。
似ていなくて恥ずかしいけど、ほっとしている自分に一番驚いた。
『沼だよ、沼! やっぱり付き合う前に引くべきだったんじゃないの? 』頭の中で声が聞こえた気がした。
「わかってる、大丈夫」
ちゃんと壁はつくってる。自分が越えないための壁。
「何が? 」
「何でもない」
少し顔を振っただけでぶつかる距離で、私は自分から彼にキスをした。一瞬彼はビクリと揺れ、すぐに私に応え始めた。
今だけ、今だけだから。
キスが終わると、恥ずかしがるでもなく至近距離で平気で微笑む。きっと私よりこの子の方が恋愛に慣れている。
「ねえ、春美さん。他の男と会ったら俺に報告してくれるんですか」
「どんな人と出会ったか……報告した方がいいの」
「ああ、そっか。そうだなー……他の男と会う日はずっとソワソワしなきゃならないな。けど、春美さんは俺と別れる日が近いのわかってるのに俺はわかってなくて、いつも今日で最後かもしれないって思いながら過ごすのはキツイか」
「報告するよ」
「そうですね、俺もいつも今日で最後かなって思うことにします。その方が後悔なく過ごせそう」
「私も、後悔しないために、あなたと付き合うことにしたんだから」
「あなた」
「広睦くん」
満足げに頷く姿に、胸がぎゅっとなる。罪悪感による痛みだと胸を押さえた。
そこからもうしばらく夜のライトが映る川を眺め、手を繋いで歩く。
大した話もなく、ぶらぶら繋いだ手を振って歩く。相手に何も求めない、相手からも何も求められない関係はもう何年も前にした恋に似ていた。
純粋に好きの気持ちだけでつき合えたあの頃の恋心。
駅に着くと、数駅同じ車両に乗って私の最寄り駅に着くと「じゃあね」と別れた。
ドキドキと高鳴った鼓動と昂った気持ちを抑え、これから先を考える。
部屋に着くと、今日のデートの余韻を打ち消すようにパソコンを立ち上げる。今日反応があったマッチングアプリの人たち。優しそうだな……そう思った人にアクションを返した。穏やかで地に足がついた関係。
自分の設定した未来に少しでも近づけるように。数年後、後悔が残っていないように。
静かな部屋にアプリの通知音が鳴った。それから続けてもう一つ。今度はメッセージアプリが鳴った。
『綺麗です』
いつの間に撮ったのか私の横顔とピースサインした広睦くんの写真だった。
この恋は、ぼんやりと過去を振り返り過去の総称である『あの頃』にしたかった恋愛が詰まっている。
相手の背景も肩書もなくただ相手を好きでいられた。周りも私も持っている物が同じだったころの恋――。
ただし、私は今32歳だ。
この事実が昂りを押さえ、地面に足を着けさせる。彼には彼の、私には私の未来がある。あの子の気が済むのにつき合うだけ。
マッチングアプリのメッセージを開きチェックする。マッチングアプリだと複数人同時進行も許されてしまうんだから不思議だ。なぜならそういうものだから。割り切らなきゃいけない。結婚するためには……。
大体の流れを調べると、何度かアプリでメッセージのやりとりして、会うことになって、数回会ってやっとどちらかが告白して付き合う。この間、数か月ってところ。3か月くらい見とけばいいのかな。付き合うことになって初めて連絡先を直接教える。なるほどね、全くの他人だと色々と危機管理も徹底しないと。慎重に、慎重に。
じゃあ、あと3か月は広睦くんといられるのか……。
無意識に考えてしまいハッとなる。
やだ、私ったら何を……。
結婚は、頭でするものよね。いずれ、心が追いつくから。
何人か同時にメッセージのやり取りをする。同じようなやり取りを同じように数人とする。これを面倒だと思えば次に進めない。それに、マッチングアプリだけに頼っていけない。
はぁ、それで久しぶりの友人たちに会って打ちのめされたんだった。まさか、結局21歳の子と付き合うことにしたんだ――なんて、言えないな。
これから私はどうなるんだろう。3年後の私はどうなっているんだろう。ちゃんと結婚出来ているのかな。不安に飲まれそうになる、けど、このまま今が続いて欲しい気持ちにもなる。
広睦くんが私を見つめる瞳は――……。
コメント
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うわあ、この回めっちゃ刺さった……! 春美さんの「今だけ」って割り切りと、でも心の奥で広睦くんとの時間を無意識に数えちゃってる感じ、すごくリアルで切なかった。「沼だよ、沼!」って脳内の声も分かる気がするし、最後の写真の送り方とか広睦くんのスマートさが憎いなあ(笑) 32歳の覚悟と21歳のまっすぐさ、これからどうなるかドキドキするよ!