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友人依存の太陽、針金の巣

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友人依存の太陽、針金の巣

7 - 第7話目の前には、一冊のノートがある。

♥

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2022年10月06日

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には兄がいるのですが、兄はよく私のことを「可愛い妹」と言います。それはつまり私が彼にとって「かわいい女の子」だからでしょう。私からすれば兄の方がよっぽど可愛らしい男の子なのですが……。

ちなみに私が彼に対して抱く感想も同じです。「かわいい人」ですね。兄の方がよほど頼り甲斐があって素敵だと思うんですけどねー。

さて、今回は兄について書いてみたいと思います。

兄は私から見ても魅力的な人間だったと思う。

優しかったけれど、いつも何かに対して怒っていた気がする。

それは仕事であったかもしれないし、自分のプライドの問題かもしれなかった。

ただ、少なくとも私は、兄のそういうところが好きではなかった。

私にとって兄は完璧な存在で、完璧すぎて怖かったのだ。

兄には欠点というものがなかった。

だから私が、兄の気に入らないことをしたり言ったりすると、ひどく傷つけられた。

今から考えると、どうしてあんなことで傷ついたのか分からないほど些細なことだったのだけど、当時の私にとっては大きな問題だった。

もちろん大人になった今では、当時感じた違和感の原因が何なのか分かる。

それでもやっぱり、兄に対する苦手意識は完全に消えない。

あの頃の私は、兄に嫌われたくなくて必死だった。

それなのに、結局兄は私を嫌ったまま死んでしまった。

今でも時々思い出しては苦しくなる。

きっと一生忘れられないだろう。

私は兄のようになりたかったわけではない。

むしろ逆で、兄みたいになりたくて仕方がない時期もあったくらいだ。

でも私はいつの間にか、兄のような人と結婚したいと思うようにさえなっていたらしい。

そう思うに至った経緯ははっきりと覚えていないけど、とにかく気がついたらそうなっていた。

もし結婚したら、私も少しは自分の嫌なところを直せるだろうか? そしていつか自分も、誰かを許せたりするようになるんだろうか? そう思っていたはずなのに……。なんでこんなことに……

なぜこうなったのかはわからない。

でも、今、自分がどんな状況に置かれているのかはわかる。

私は今、監禁されているのだ。

それも自分の意志ではなくて、相手の意思で。

一体どうしてこんなことになってしまったのか……

あの時、私が何か失敗をしたからなのか……

それとも最初から仕組まれていたことだったのか……

そもそもどうしてこうなる前に気づけなかったのか……

考えれば考えるほど後悔ばかり浮かんできてしまう。

だが、今はいくら考えたところで答えなんて出ないのだから、まずはこの状況をどうにかしなければならない。

「よしっ!」

気持ちを切りかえるために頬を叩き、改めて現状を確認しようと思うのだが、今の自分は手錠をかけられた状態でベッドの上に寝転んでいる状態なので、身体を起こすことができない。

つまり何もできないということである。

この状況でできることといえば、目を閉じることと呼吸くらいなもので、目を閉じていればいずれ眠くなってそのまま意識を失うこともできるかもしれないが、あいにくと睡眠薬のようなものも飲まされていないらしく、眠りにつくこともできなかった。

しかしこのままこうしていても仕方がない……。

なんとかしなければ……。

そう思いながら、僕はただ黙々と作業を続けた。

目の前には、一冊のノートがある。

表紙に大きく『日記』と書かれていることから察してもらえるかもしれないけれど、僕が書いているのはこのノートについての日記ではない。

僕の身のまわりに起こった出来事についての覚え書きのようなものだ。

日記をつけ始めたのは二ヶ月ほど前からだった。

きっかけは些細なことだ。

ふと思い立って、自分の人生を振り返ろうと思ったのだ。

毎日同じことを繰り返すだけのつまらない人生を送ってきたからこそ、新しい出会いを求めて街へ出る。しかしそこで出会った女の子たちと楽しくおしゃべりをするだけで満足してしまい、「今度デートしようね」「じゃあ連絡先交換しておこうよ」と言いながら結局何もしないで終わる……なんてこともよくある話だろう。

だが、それではいけないのだ! そうやって日々を過ごしていても、いつまで経っても同じことをしているだけになってしまう。

だから僕は決めた。これからはもっと積極的に行こう。そしてたくさんの人と出会いたい。もちろん可愛い子との出会いだって逃さないぞ!

――と意気込んでみたけれど、僕には友達と呼べる存在がいない。

そもそも人と話すことが苦手だし、あまり仲良くなると別れが辛くなるかもしれないと思うとどうしても一歩を踏み出せない。

それに、昔から気になっていたことがある。それは僕みたいな冴えない男が、突然モテ期が訪れたかのように女子たちから言い寄られるという現象についてだ。あれは何だったんだろうか? あの時の彼女たちの顔はとても幸せそうだったが、同時にどこか必死さのようなものを感じてしまった。きっと何か理由があるはずだ。その理由を突き止めるまでは迂闊に手を出すべきではないと思っている。

だが、このままだと一生独身のまま終わってしまいそうな気がする。

やはりここは僕の将来のためにも、まずは恋人を作っておくべきだろう。そのためにも今日はまず街に出て、ナンパに挑戦してみるつもり

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