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アリィ「なんか涼しくない?」
ジーク「そうか?」
ポルポル「ギィー。」
一行は足を止めることなく進んでいく。
アリィ「まだ朝なのにどんどん夜みたいになってく…。やっぱりちょっと寒いかも。」
ジーク「…確かに少し涼しいな。一体どうなってるんだか…。」
アリィ「悪魔じゃありませんように!!」
ジーク「フラグ建てやがった。ポルポル、そろそろ着くから、来な。」
ポルポル「ギィー。」
ポルポルは浮くのをやめ、荷物を入れたバッグを出し、大人しくジークの腕に抱かれる。
ジーク「アリィ、頼んでもいいか。」
アリィ「大丈夫だよ。ねぇついでにアレ使っていい?」
ジーク「…もしかして…携帯暖火(けいたいだんか)か…?いや流石にそれはちょっと…」
アリィ「ダメかぁー!まぁ雪が降ってるような場所で既に使い切ってたら困るよね…。」
ジーク「悪いな…。」
ジークはハッと自分の腕に抱いたポルポルを見る。
ジーク「…いる?」
アリィ「ほ、欲しくないって言ったら嘘になるけど…そしたら荷物持てないから…」
ジーク「俺持つぞ?」
アリィ「だめ!ジークにばっか持ってもらってるもん!」
ジーク「気遣ってくれるのは嬉しいけど…無理はするなよ。まだ傷だって回復しきってないんだし…いやまて…魔法って…」
アリィ「あ、そんなに負荷はかからないから大丈夫!ちょっとお腹空くけど…。」
ジーク「ほんとに…?」
アリィ「ほんとに!流石に早く走ったりとかは無理だけど、重たいものを持つだけなら出来るよ。」
ジーク(嘘はついてなさそう…。)
「じゃあ頼む。」
アリィ「うん!…またあの時みたいにいきなり警備隊が押しかけてこないといいんだけど…」
ジーク「フラグを建てまくるんじゃない。」
門番の1人「先輩、今何時です?」
呼ばれたもう1人の門番「なんだお前、時計忘れたのか?今は9時30分だが。午前のな。」
門番の1人「ちくしょー!まだ朝かよー!」
呼ばれたもう1人の門番「お前はとても門番とは思えないな。どうして門番になったんだか…。」
門番の1人「給料良くって。」
呼ばれたもう1人の門番「まぁ俺もそうなんだが。」
門番の1人「なんだコイツ。」
アリィ「あの…。」
呼ばれたもう1人の門番「お、よかったな。お前俺の説教から逃れられたぞ。この人達に感謝するんだな。」
門番の1人「マジありがとうございます!入国っすかね?」
ジーク「そうです。」
門番の1人「んじゃお荷物検査させて頂きますねー。その白いのは…」
アリィ「圧縮装置付きバッグです。入国なので、ちょっと今は全部出しちゃってますけど。」
呼ばれたもう1人の門番「こりゃまた随分と可愛らしいデザインで…相当高かったんじゃ?」
ジーク「貰い物でして。」
門番の1人「その人凄い太っ腹すね!お二方、この国に来るのは初めてですかね?」
ジーク「はい。」
呼ばれたもう1人の門番「ここは夜になると、もっと寒くなりますので、防寒着を着ていた方がいいと思いますよ。」
アリィ「じゃあ後で着替えようか。」
ジーク「そうだな。ところで…この国ってずっと暗いんですか?」
ジークがそう聞くと、荷物を検査している門番は気まずそうに答える。
門番の1人「…そうなんですよ。もうおかげで時計がないと、時間感覚が狂っちゃって。」
アリィ「どうしてなんですか?」
呼ばれたもう1人の門番「すまない、我々はその理由を立場上言えないんです。」
門番の1人「聞くなら、一般職の方に聞いた方が教えて貰えると思いますよ。はい、検査終わり!通っていいですよ!」
アリィ「そうしてみます、検査ありがとうございます。」
門番の1人「いいえー!」
ジーク「小国だからすぐ橋に行けると思うけど…一応宿も探すか?」
アリィ「着替えたいから宿行こうよ。大体の宿は着替えるだけでも場所貸してくれるし。」
ジーク「そうしよう。」
アリィ「にしても本当に時計が有名なんだね!あちこちに時計がある!」
ジーク「1個くらい買ってもいいかもな。」
アリィ「私達持ってないもんね。あっ…でも私の治療費でお金…ないんじゃ…」
ジーク「治療費のことなら心配ない。あれは全部サンドラ負担だ。」
アリィ「あっそうだったの!?」
店主「銀貨2枚だよ。」
アリィ「銀貨!?嘘でしょ!?」
ジーク「おい、これぼったくりだろ…。まぁいいや…泊まる必要はそこまでないし…。行こうアリィ。」
店主「待って待って!お願い!!アタシだってこんな値上げしたくなかったさ!!これでもウチは他に比べて安い方だから!!」
アリィ「そもそもなんでこんな全体的に高いの…?」
店主「物流が良くないからだよぉ!」
店主はべそべそと泣く。
ジーク「宿って物流関係あるのか…?」
店主「あるさ!物を運んでくるのは誰だい?行商人、そうつまりヒトだ!その人達が来ないせいで商売あがったりで厳しいんだぁ!」
アリィ「…なんか可哀想に見えてきたね。」
ジーク「だからと言って不必要に泊まりたくは…」
店主「3食ついてくるよ!」
ジーク「3食…!?」
アリィ「ジーク…、耳を貸しちゃだめだよ。着替えたいから場所だけ貸して。騒ぎ立てないでよ。」
店主「権力を傘にしてくるぅ!はいはい、分かりましたよ…残念。」
ジーク「ここそんなに検査が厳しくもなかったのに、どうして行商人が来ないんだろうな。」
アリィ「さぁ…。」
店主「空を見ました?」
アリィ「見たけど…それがどうかしたの?」
店主「見ての通り、この国は朝でも夜のような暗さの国なんです。明るさも気温もさほど変わらない、文字通り永遠の夜の国なんです。」
アリィ「それがどうして行商人が来ないことに繋がるの?」
店主「この国は永遠なんてかっこいい言葉を使ってますけど…実際は停滞なんです。時が止まってる。商人にとって停滞はいや〜な言葉なんです。変化を望まない、需要がないから来ない。商人というのは満足することの無い生き物ですから。この国に来る価値はないってことなんですよ…。」
ジーク「ま、どんまい。」
店主「そんな軽く!」
ジーク「着替え終わったか?」
アリィ「うん。」
ジーク「それじゃあ行こう。」
店主「そんなー!」
ジーク「橋を渡るだけにどうして、小金貨が要るんだ!?ヒトの足元見すぎなんじゃないか!?」
橋の監視人「そんな顔で凄まないでくださいぃ!決してそういうのじゃないんですうぅ!」
ジークと橋の監視人は橋直前の通行所で揉める。
アリィ「じ、ジークちょっとまずいかも…。このままだと通報されかねないよ…。」
ジーク「そうは言うが…!」
橋の監視人「橋を渡るのも命懸けなんです!!」
ジーク「…命懸け?」
橋の監視人「あぁ〜言っちゃったぁ…!頼みますから他の人には言わないでください…!ますます外国の人減っちゃう…!!」
ジーク「これから話す内容による。」
橋の監視人「全部話しますから!!」
ジーク「聞こうか。」
橋の監視人「この橋は、監視人無しには渡れないんですよ。つまり僕も渡る必要があるんです。」
ジーク「……。」
アリィ「えっと…どうして一緒に渡る必要があるの?」
橋の監視人「それは、ウチの戦争に一般人を巻き込む訳にはいかないからなんです。今こう言うと怒られちゃうんですけど…」
そう言って監視人は二人に耳打ちする。
橋の監視人「時の国の内戦に巻き込む訳にはいかないんです…それこそもっと大きな問題になりかねないので…。」
ジーク「でも、なんでわざわざ橋に?攻めるなら普通陸から行けばいいよな?橋を渡ってすぐに気候が変わる訳でもないのに。」
橋の監視人「そもそも僕雇われの傭兵なんで、そこまで詳しくないんですけど…この橋を渡って、今まで帰ってきた永夜の国の民は居ないらしいです。」
アリィ「…人質?」
橋の監視人「恒陽の国から何の要求もないらしいので違うかと。噂ではあちらに奴隷にされてるんじゃって話です。それを気にしてるみたいで…。」
ジーク「…確かに他国の民に同じことが起きれば大問題だな。」
橋の監視人「だから、護衛なんです。自分は。」
アリィ「そんなに危険なら小金貨も納得かな…。物流がよくないのはこれも関係してそうだね。」
橋の監視人「まさにです…。国から雇われているので、値段は僕にはどうしようも…」
アリィ「どうする…?」
ジーク「小金貨をか…。う〜ん…。」
アリィ&ジーク(…ていうかそもそも…ヒト相手なら勝てると思うんだけど…。)
ジーク「お、泳ぐ…?」
アリィ「うっそでしょ!?」
橋の監視人「無理ですってぇ!」