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「記憶…喪失…? 」
そんなはずなかった。
だってそんな外傷もそんな記憶も、ない。
有り得るはずない。
こいつらが何か冗談でもっ…
そう思ったが2人の顔は真剣で、嘘をつくような感じではなかった。
本当にそうだとしたら、いつ?
「…紫はわかんないと思うから言うけど。」
中学2年の頃だった。
紫はいつも通り部活して、美術部の俺らと合流して帰宅してた。
その途中で生徒会終わりの桃を見つけた。
遠くだったから駆け寄った時、
桃がこちらを見て慌てた様子で走ってきて、
気がついた時には、酷く嫌な音がなった。
何かがぶつかった音。
でもそこに倒れてたのは
桃だった。
「じゃあ俺は?」
「重症を負ったのは桃々で、紫ちゃんは、桃々が庇ったおかげで、怪我こそはなかったけど」
「桃が守るために紫を突き飛ばして、壁に頭をぶつけたんだよ。」
「それで、紫は打ちどころが悪くて、記憶喪失になった。」
最初からこいつらわかってて…?
今日の集まりに強引にも参加させようとしたのはそういうこと?
なら最初からそういえば…
「桃から初対面として対応してって言われてたからさ。」
マネージャーがいる場だから、そうしろ。
という意味だろうか?
対応してって言われてた…会って早々にあいつは何も言わなかった。
「ん?お前らどうやってやり取りしてんの?」
一瞬、それも忘れてんのか、というような表情をされたがまぁいい。
こいつらいつから繋がってんだ?
そもそも事務所はそれはいいのか?
あらゆる疑問が浮かび上がるが、そんなことどうでもよくなるようか言葉が出た。
「紫ちゃんから教えてもらった。」
は?と思わず言葉に出したが、俺が記憶ないということは、事故より前のことだろう。
俺は今はもう全ては飲み込まなくても、
知らない情報を仕入れて後で整理しようということにした。
「…これだけ聞いてもいいか?」
1番引っかかる点を聞いておきたかった。
「俺は事故の後、お前らのことは覚えてたのか?」
そう聞くと、一瞬悲しそうな顔をした。
その表情からして、良い方ではないと判断した
「…覚えてたよ。」
そう言った、
だから、なんだ…よかった、と思った。
でも。
「俺のことはね。」
そう赫が言った。
翠はまだ悲しそうな顔をしていた。
「すごく警戒されてさ、俺が知ってるのは赫だけだって…。」
いつも追い出して、突き放して。
まともに俺の話聞かなかった。
そう翠は続けた。
だから、一時期諦めたんだって。
その後赫が必死に思い出話して、紫が知らない顔して聞いてた。
赫の連れだと言って再び翠を連れてきても紫は見向きもせず、
翠とは一からの友達として関わることになった
そう説明してくれた。
「だとしたら、俺結構酷いことしてるよな?」
そう聞いても翠は微笑んで
「今は、こうして前みたいな関係だから、気にしてない。」
その微笑みは少し悲しいという感情が入っていた。
その日はそれ以上話すことなく赫の家で寝た。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
久しぶりに学校に行った。
懐かしい感情より不安が勝つ。
でも両隣に赫も翠もいる。
教室前で黈を見つけた。
翠が駆けつけて“おはよう“と礼儀正しく挨拶して、一緒に教室に入っていった。
「あいつ、いつも黈見つけたら駆けつけるから紫いねぇと俺一人なんだけど~。」
隣でそう嘆いた。
教室に入ると、瑞が1番に赫に声をかけていた
「1人じゃないじゃん…ボソッ」
来たところで俺が1人になることは想像していた。
だからこそ考えた。
“付き合わない?“
その言葉に。
深い意味があるのだとすればそれを知らなければ俺にとって相当なリスクだ。
だが、昨日の、
“紫のこと守って重症を負った“
その言葉は、きっと返しきれない恩だ。
だったら多少なリスクを背負って、深い意味があるかもしれないことに付き合うことも良い案ではある。
もし、何か理由があるとしたら、なんだろうか
仮に、嫌で
俳優をやらされているのだとしたら…?
その思考を巡らせた時、頭に酷い痛みを覚えた
「ぃ“ッッ“」
頭を抱え、周りが歪んで、赫と翠が慌てた様子で駆けつけていた。
微かに、桃の姿を捉えたがそこで意識が途絶えた