テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
63
コメント
2件

もう本当にいつも最高です! ありがとうございます✨️
きゃーー!😳😳 天才ですか??💓
.
文化祭当日。
教室の前は人で溢れていた。
呼び込みの声、笑い声、知らないやつらのざわめき。
その中で、柔太朗は少しだけ居心地悪そうに立っていた。
「……人多すぎ」
「文化祭だからね」
隣で笑う佐野勇斗は、やたら楽しそうだ。
「柔太朗、似合ってる」
「……うるさい」
クラスの出し物で着せられた衣装。
普段より少しだけ目立つ格好に、視線が集まるのが分かる。
「さっきからめっちゃ見られてるよ」
「言うな」
「可愛いもん」
「やめろって」
小声でやり取りしていると、知らない女子たちの声が聞こえてくる。
「ねえあの人めっちゃ顔良くない?」
「写真いいですかって聞いてみよ?」
その瞬間。
「——だめ」
低い声が割り込んだ。
気づけば、勇斗が一歩前に出ている。
「あ、えっと……」
「ごめん、この人無理なんで」
笑っているのに、目が全然笑っていない。
女子たちは気圧されて、そそくさと離れていった。
少しの沈黙。
「……はやちゃん」
「なに」
「今の、感じ悪い」
「知ってる」
あっさり認めて、勇斗はため息をついた。
「でもやだ」
「は?」
「柔太朗が他のやつにとられるの」
「見られてるだけだろ」
「それもやだ」
即答だった。
そのまま、ぐっと手首を掴まれる。
「ちょ、どこ行くの」
「裏」
「は?今仕事中——」
「一瞬だけ」
有無を言わせない力で、校舎裏に連れていかれる。
人の気配が一気に遠のいた。
壁に軽く押し付けられて、距離がゼロになる。
「……はやちゃん、近い」
「近くしてる」
「意味わかんない」
そう言いながらも、逃げない
むしろ、少しだけ視線が揺れる。
「さっきのやつらにさ」
「……うん」
「触られたらどうしようって思った」
「触られてない」
「でも想像したら無理」
真っ直ぐすぎる言葉に、息が詰まる。
「俺だけにして」
低く、甘い声。
次の瞬間、唇が重なった。
一瞬じゃ終わらない。
逃げようとした手首を、逆に強く引かれる。
「ん……ちょ、待っ——」
言葉は全部、飲み込まれる。
深く、確かめるみたいに。
「……はや、ちゃん……」
やっと離れた頃には、呼吸も乱れていた。
「……今の、長い」
「足りない」
「は?」
「全然足りない」
額を押し付けられて、逃げ場がなくなる。
「柔太朗が可愛すぎるのが悪い」
「意味不明……」
「ほんとに」
もう一度、軽く触れるだけのキス。
さっきより優しくて、でも離す気がないみたいな距離。
「戻るよ」
「……うん」
歩き出しかけて、また手を引かれる。
「文化祭終わったら、続き」
「……やだ」
即答なのに、声が弱い。
「絶対やる」
「勝手に決めるな」
「決定事項」
そのまま指を絡められる。
人混みに戻るのに、手が離れない
「……離せ」
「やだ」
「見られる」
「見せつける」
「最悪」
でも、振りほどかない。
むしろほんの少しだけ、握り返す。
文化祭のざわめきの中で、
二人だけの距離は、さっきよりずっと近くなっていた。
.