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夜10時すぎ。俺はリビングで、だらだら動画を流してた。
るかはソファに横になって、スマホで音楽聴きながらウトウトしてる。
そんな、なんでもない夜だった。
――パチン。
突然、全ての電気が落ちた。
「……え?」
「…………っなに?」
暗闇の中、るかが一瞬で目を覚ましたのがわかった。
外からは、遠くの犬の鳴き声だけ。
部屋は、手を伸ばしても何も見えないほどの暗さ。
「停電……か?」
「……マジ?」
耳元で、るかの声がした。
普段より少し、声が小さい。
「スマホ、スマホ……」
慌てた手の音。
俺もスマホを探して、画面をつける。
薄暗い光が、
顔だけをぼんやり照らした。
「……こわ」
るかが、ぽつりと言った。
「意外。ビビるタイプ?」
「ビビってねーし。ただ、……真っ暗って、なんかやだ」
その言い方が、やけに子どもみたいで。
俺は思わず、少しだけ笑った。
「なに笑ってんの」
「別に」
数秒の沈黙。
暗闇って、不思議だ。
普段なら話さないことも、ふと口から出そうになる。
「……るかさ」
「ん」
「友達、いっぱいいるんだな」
言った瞬間、
るかの目線が、スマホの光越しに刺さった気がした。
「別に。あの子ぐらいだし」
「そうなんだ」
「うるさい。喋るな。余計、怖くなる」
すぐに、いつものキツい口調に戻った。
その直後、外の電線がバチンと音を立て、
一瞬だけ、部屋の窓が青白く光った。
俺は何も言わず、
隣に座ったるかの存在だけを感じながら、
停電が終わるのを待った。