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次の日。朝起きたら、停電は嘘みたいに元通りになってた。
エアコンもテレビも動いてる。
コンビニも普通に開いてる。
外はちょっと曇ってるだけで、特別なことなんて何もない。
だけど、
るかと顔を合わせた瞬間、
なんか、少しだけぎこちなかった。
「……おはよ」
「おは」
会話はそれだけ。
るかは、昨日と同じソファに座って、
スマホをいじりながら、足を小さく揺らしていた。
その小さな動きに、
俺はなぜか、やけに目がいってしまう。
(別に、いつも通りじゃん)
自分にそう言い聞かせて、
俺もテレビのリモコンを取った。
音だけが流れるリビング。
るかはスマホの画面を見ながら、たまに小さく笑ったりしてる。
(何見てんだろ)
聞こうとしたけど、
なんか、聞いたら負けな気がして、やめた。
⸻
昼すぎ。
二人でなんとなくコンビニに行って、
なんとなくお菓子を多めに買った。
帰り道、
信号待ちで立ち止まったとき。
「昨日の、……まあ、ありがと」
小さな声で、るかが言った。
「は?」
「別に。暗いの嫌だっただけだし。……助かったとか、そういうんじゃないから」
早口で付け足す。
「……はいはい」
俺は適当に流したけど、
心臓だけ、ちょっとだけ跳ねた。
⸻
部屋に戻ったあとも、
特に何かが変わるわけじゃなかった。
でも、
何気なく見るるかの横顔が、
昨日より少しだけ、近く感じた。
(たぶん気のせいだろ)
そう思って、
俺はソファに倒れ込んだ。
るかも、その隣に座った。
距離は、ちょうど、手を伸ばしても触れないくらい。
お互い、見ないふりをしながら。