テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
キャラ設定
若井滉斗 :見た目はクールだが、内面では不器用で繊細な高校生
藤澤涼架 :明るく、天真爛漫な女の子。
若井の幼なじみ
プロローグ:小さな日の物語
若井side
僕の祖父は、いつも僕を膝に乗せ、揺れる椅子に腰掛けていた。
窓の外はもう真っ暗で、遠くで犬の鳴き声が聞こえるだけ。
暖炉の中で薪がパチパチと音を立て、部屋は優しい光に満ちていた。
「滉斗、またお話聞かせてやろうか」
祖父がそう言うと、僕は嬉しくて、祖父の膝の上で跳ねた。
僕のお気に入りは、決まって『運命の女神』のお話だ。
「昔々、この世界のどこかに、湖を走る鹿の群れがいたんだ。その鹿は、みんな、運命の女神さまの遣いだ。 呼吸する乾いた高原で、生きるために追いかけっこをしてたんだよ」
祖父はそう言って、僕の頭を優しく撫でた。
その手は、ゴツゴツしていて、でも温かかった
「おじいちゃん、作物は?」
僕が尋ねると、祖父は目を細めて微笑んだ。
「そう、作物はね、僕らを潤してくれるんだ。運命の女神さまが、一生懸命頑張る人たちに、恵みとして与えてくれたんだよ」
祖父の話は、いつも不思議で、でも、どこか懐かしい風景が浮かんでくる。
僕はその世界に夢中になって、続きを促した。
「ねぇ、おじいちゃん。お話の続きは?」
「そのオーロラはね、運命の女神さまが人と人を繋ぐために、この世界に置いていった大切な光なんだって。 その光を見た二人は、いつか、たとえ遠く離れていても必ずまた再会できるって言われてるんだ」
僕は、祖父の言葉に目をキラキラさせた。
「おじいちゃんは、オーロラを見たことある?」
僕の問いに、祖父は何も言わなかった。
ただ、僕の頭をもう一度撫でて、そして、揺れる椅子の背もたれに、深くもたれかかった。
「おやすみ前に、またあの『お話』聞かせて。
この世界には、『運命の女神さま』がいるってお話を」
僕がそういうと、祖父は僕を抱きしめてくれた。
その温かくて、優しい腕の中で僕はいつの間にか夢の中へ落ちていった。
次回予告
[おとぎ話の忘れ物」
next→❤︎500
コメント
3件
これnornですよね?毎回言ってますが神作品ですね!!
nornだ!