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翠の家
_____黈視点
翠 「ここ、俺の部屋だから好きに使っていいよ。」
広い家の中の広い一室に俺と紫暮さんは案内される。
翠川さんの家は噂の通り医者の家系で、家も尋常じゃ無いくらいに広い。
黈 「すごい…本がいっぱいだ 」
翠 「気になるのあったら呼んでいいよ、持って帰ってもいいし。」
茈 「やっぱいつ来てもお前の家のデカさには驚くわ。」
紫暮さんは何回かこの部屋に来たことのある様子だったけど、俺はこの広さの部屋を一日で楽しみきれるか不安になるくらいに広い。
それに、とにかく本が多い。小さい子向けの本は1冊もないのに、分厚い医療関係の本や勉強の為の本くらいしか置いてない。
せっかく読んでもいいと言って貰えたのに俺にはそんな本を読む気力が無いから、近くの椅子に腰をかける。
翠 「…面白そうなものはあった? 笑」
黈 「いや…全然…おれ難しい本読めないから…」
翠 「難しい、か……ごめんね。俺の家にはこんなものしかないから 笑」
あんなに外ではうるさくて自由な人だと思ってたのに、この家というバフがかかることで翠川さんが知性的な人に見える。
いや、本当は頭がいいけど馬鹿なフリしてるだけなのかな…?
黈「…翠川さんって、勉強できる人なんですか…?」
翠 「自慢するほどの学力はないよ。それに、翠川じゃなくていいからね?この家は全員翠川だし…笑」
茈 「んなこと言ってもこいつ、この家では飛び抜けて頭いいらしいからな。らんよりも良いぜ?」
黈 「っえ、桃瀬さんって学年1位なんじゃ…」
茈 「学問だったらな、その他の知識に関してはこいつの方が上だし実戦経験も多い。」
翠 「そんなことないって…」
少し辛そうに苦笑いをしながら翠川さん改め、すちくんは紫暮さんの肩を掴んでよく聞かせるようにすこししゃがんで目線が会うようにしてから話しかける。
翠 「実践経験なんて何もないよ。俺は世間知らずだったからみこちゃんも泣かせちゃった。……ね?よく出来た人間なんかじゃないよ。」
茈 「…っ、ごめん…」
翠 「いいよ。今日はすごく喋りたい日?それとも熱…?」
すちくんは紫暮さんの前髪をあげて、平然とおでことおでこをくっつける。
そんなふたりを目の前でみた瞬間、 こんな風にかっこいい人になりたいって気持ちと、誰にでもそういうことが出来ちゃうんだ…そう思ってしまった。
俺は別にすちくんの恋人でも、同級生でも無い。ただ、俺の一方的な恋心はいつも目の前でだんだんと潰されていく。
翠 「…熱だね、また無理したの?」
茈 「寝れんかっただけ…」
翠 「それだけじゃこんな熱になると思えないけど?」
茈 「……いわない」
翠 「…はぁ、頑固だなぁ。みこちゃん、少し手伝ってくれる?」
黈 「っへ?あ、うん…」
茈 「っはッ、あぁはっw いたぃッ、やめて…っw」
黈 「……」
翠 「今日は粘り強いな…、後輩がいるからか?まぁ、吐かせるんだけどね。」
なんだこれ、こちょこちょ?
俺は紫暮さんを後ろから腕を上げたままの姿で抑えてて欲しいって言われたけど、この人めっちゃ弱い。
腕なんて強く握ったら折れそうだし、くすぐられる度に体に当たってくるけど痛くなさすぎる。
茈 「や”ぁだ!やめろッ!っはッw…あははっッww」
翠 「えぇ…まだ吐かないの?熱あるなら尚更頭痛いから弱いはずなのに…」
黈 「……人の心ってあるんですか?」
茈 「こいつになんかッ…っねぇよッ!あはッはーッwしぬッ、やめろ…ッはッw」
翠 「せっかくやめてあげようって思ってたのになぁ〜?そういうこと言っちゃうんだ?」
この、すぐに煽ってくる癖…俺バイト先でも経験したことある。
何回も「挿れて欲しい」って懇願させられたっけ…
黈 「……っ⸝⸝⸝」
なんで今更こんなこと思い出すんだろう。
茈 「っはッあはは…ッwちょっとッまて…っガチめにしぬッ…」
翠 「…笑いすぎで死ぬこともあるらしいからやめておくけど、熱が出た原因は?」
茈 「はぁーッ、はぁ…せなか反りすぎていてぇ…」
黈 「かわいそう…」
床にぐでっとしながら真っ赤な顔で腰をさすってる紫暮さんと余裕そうに隣に座ってるすちくん……事後の恋人じゃん。
なんて勝手に思ってしまった。
翠 「…2人ともお腹減ってない?なんか作ってくるよ。」
茈 「なんか、軽そうなもんで…」
黈 「何でも大丈夫です…! 」
流石に翠川さんも疲れたのか、ゆっくり立ち上がってからキッチンへ移動していた。
その間にも紫暮さんは痛みのある頭を床に打ち付けてずっと小さく何かを呟いてる。
黈 「…大丈夫ですか…?」
茈 「だいじょうぶ…じゃない…」
弱々しく帰ってきた返事に少し戸惑いながらも、紫暮さんの額に手を当てて自分の体温と比べる。
圧倒的に紫暮さんの方が体温は高いし、冷たかったはずの俺の手が一瞬で温まってしまった。
茈 「…それ、貸して…」
黈 「えっと…これですか??」
指さされた先にあったのは俺の腕で、本当にこれであってるのか…?と思いながら、引っ張られるまま身を任せる。
茈 「……これいいわ…」
小さい先輩を包み込みながら、頬や首に俺の腕を当てて紫暮さんの保冷剤の代わりとなる。
こんな使われ方をしたのは初めてで、変な気持ちになりながらも俺を助けてくれた人への恩返しだと思えば安いものだった。
黈 「いつから熱あったんですか? 」
茈 「…昼ぐらいに頭が痛かったのは覚えてる。すちと会った時…くらいだな。」
すちくんの前では素直に言わなかったのに、熱で頭もやられてしまってるのか紫暮さんの口は饒舌だ。
それに、体が暑いのが余程気になるのか少しずつ体勢を変えながら冷たいものを探して動き回っている。
黈 「……保冷剤でもすちくんに貰ってきましょうか?」
茈 「大丈夫…お前はこの部屋から出るな、めんどくさい事になる…」
黈 「……それって、本当はこのお家にお邪魔しちゃダメみたいなことですか…?」
小さな言葉遣いに引っかかって揚げ足を取るような感じで質問をしても、紫暮さんは答えてくれた。
茈 「本当はな。すちもきっと俺らを入れるのは迷ったはず…」
翠 「こら、余計なことは言わないの。俺がいない間に後輩に変なこと教えちゃダメだよ〜?」
黈 「すちくん…?」
なんで迷うんですか?そう聞こうと思った瞬間、後ろから俺を間に挟んですちくんが紫暮さんの口を塞ぐ。
耳の横からはすちくんの声が聞こえてくるし、目の前からは言葉ならない声が聞こえる。
茈 「んなぁせ…っ!」
翠 「いやだよ。だって離したら余計なこと言うでしょ?俺のおうちでは俺のことを探るのは禁止だから!」
子供のような言い方で紫暮さんと俺に言い聞かせてから、すちくんはゆっくり紫暮さんの口から手を離して横に抱き上げる。
そのまま俺に着いてきてと声をかけて、すちくんは部屋の奥に紫暮さんを連れて歩いていく。
部屋の奥に行くまでの道にも本は沢山あった。俺の目に入ったのは「受検対策」や「卒業アルバム」、「医療機関の仕組み」などの何も関連性の無い本たちばかり。
いつかじっくり見させてもらいたい本も沢山あったので、またこの家に来れるときがあったら見せてもらおう。
そう決めてまだまだ長い廊下を歩いていく。
翠家 (奥の部屋)
_____翠視点
翠 「……おしゃべりないるまちゃんには、ほんとうに困っちゃうなぁ…笑」
茈 「すぅ…すぅ……」
黈 「っんぅ…すぅ、すぅ…」
暗くした部屋の中で、2人の寝息の音と俺の独り言だけが聞こえる。
いるまちゃんは寝る前までも熱が下がらなくて、流石にこんな状態で家に返したら家でいるまちゃんが苦労することは目に見えた。
それに、みこちゃんをこの家に連れてきたのも全部俺がやってきたことのツケが回ってきただけで、みこちゃんは何も悪くない。
翠 「…けど…やっぱり連れてきたく、なかったなぁ…笑」
心の奥底で思っていたことを口に出してみたら、少し心が軽くなった気がした。
窓辺から差し込んでくる月のあかりに照らされて、ひとり、夜が明けるまで本を読み続ける。
コメント
5件
初コメ失礼します!! このお話ものすごく大好きです! 今回も茈くんが熱出お喋りさんなのがものすごく可愛くて、、、 これからも無理せず頑張ってください!楽しみにしています!!! 初コメ失礼しました!!
もう第11話読み終わったよ〜!!😭💕 黈くんの一途な恋心が切なすぎて胸がぎゅーってなった…「誰にでもそういうことが出来ちゃうんだ」って思っちゃうとこ、すっごくわかるよ…。 すちくんの家での振る舞い、外とは全然違って知性的でギャップ萌え🥺✨ でも「連れてきたくなかった」って最後の独白がすごく気になる…! 黈くんにとってすちくんはどう映ってるんだろうね? 続きが気になりすぎるよ!!🌸
空虚🎼🌸🍵@眠いです
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#らんこさ
クッキー
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