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#年の差
水無月 京
836
鷹槻れん

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鷹槻れん

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#強引
二人の墓はひときわ綺麗に手入れされていて、供えられた花も比較的新しく、誰かが定期的に訪れていることが窺える。
「ここは俺と組長が探して決めた、二人の墓だ」
そう言って墓石へ視線を向ける。
「景色の綺麗な場所が好きだった香恵さんの為に出来るだけ眺めのいい場所を選んだんだ」
「凄く、素敵な場所ですね」
羽衣子は周囲を見渡しながら柔らかく微笑んだ。
ここなら眠っている間も美しい景色を眺めていられるような気がすると思いながら。
昴はおもむろにポケットから煙草の箱を取り出すと、それを墓前にそっと置く。
「これは慶太さんが好きだった煙草なんだ」
「そうなんですね」
「あの人、かなりのヘビースモーカーだったからな。俺が来た時には必ず供えてる」
そう話す昴の声にはどこか懐かしむような響きがあった。
羽衣子は墓前に置かれた煙草を見つめる。
こうして故人が好きだったものをきちんと供えている昴が二人をどれほど大切に思っているのかが伝わってきて、温かい気持ちになっていた。
やがて昴は墓石へ向き直ると静かに口を開いた。
「慶太さん香恵さん、この方が今、希海のことを見てくれている羽衣子です」
突然紹介された羽衣子は少し驚いて昴を見る。
「希海も凄く懐いています。そして……彼女は俺の大切な人です」
「……昴さん……」
思いがけない言葉に、羽衣子の胸の奥はじんと熱くなる。
嬉しくて思わず泣きそうになるけれど、ここで涙を見せるのは違う気がした羽衣子はそっと息を吸い込み、一歩だけ墓前へ進み出た。
「慶太さん、香恵さん、初めまして。吾妻 羽衣子です」
そして二人に語りかけるように、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「お二人が大切に思っている希海くんのお世話をさせてもらっています。希海くんは、私にとっても大切な存在です。これからも昴さんと一緒に希海くんが幸せになれるように……お手伝いをさせてください」
言葉を終えると羽衣子は静かに頭を下げた。
その横顔を見つめていた昴は、ふっと表情を和らげる。
「……きっと二人も安心してるだろうな」
「え?」
「羽衣子が希海を見てくれているから」
「そうだといいんですけど……」
羽衣子は少し照れたように笑った。
「きっと大丈夫だ」
昴はそう言うと墓へ視線を戻し、少しだけ間を置いてから羽衣子に告げた。
「悪い。少しだけ二人に報告しておきたいことがあるから時間をくれ」
「はい、もちろんです」
羽衣子が頷くと昴はその場にしゃがみ込み、墓前で静かに手を合わせて目を閉じる。
羽衣子はそんな昴を一歩離れた場所から見守った。
何を話しているのかは分からないけれど、きっと大切なことを二人に伝えているのだろう。
そう思いながら羽衣子もそっと両手を合わせて目を閉じると、墓の中で眠る二人のことを思いながら静かに祈った。
(どうか、これからも希海くんのことを見守っていてください……それと、二人が弟のように大切に思っていた昴さんのことは、私に任せてください。私にとっても昴さんは大切な人なので、幸せに出来るよう、精一杯努力します)
無言の時間が流れる中、高台を吹き抜ける風が二人の間を静かに通り過ぎていくのだった。
それから暫くして、墓前での挨拶と報告を終えて二人がその場を離れようとした時、昴が羽衣子へ声をかけた。
「羽衣子、ありがとうな」
「え?」
突然の言葉に羽衣子が不思議そうに顔を上げる。
「こうしてここへ来るのを理解してくれたことも、二人に挨拶してくれたことも……全部」
昴はそう言って穏やかな表情で羽衣子を見つめると、羽衣子は柔らかく微笑んだ。
「お礼を言うのは、私の方です」
「……え?」
「ここへ連れてきてくださって、ありがとうございます」
そう言って羽衣子はもう一度墓の方へ視線を向ける。
「昴さんと希海くんにとって大切な人たちに私を紹介してくださったこと……凄く嬉しかったです」
その言葉を聞いた瞬間、昴の胸に温かなものが込み上げてきた。
そして、改めて思う。
羽衣子は自分にとっても希海にとっても、なくてはならない存在なのだと。
こんなに素敵な女性はどこを探しても見つからないだろうと。
「……お前は本当に、良い女だよ」
「そ、そんなことないです……」
照れたように俯く羽衣子を見て昴は小さく笑った。
「いや。俺には勿体ないくらい良い女過ぎるな」
「昴さん……」
褒められた羽衣子は困ったように笑いながらも嬉しそうに昴を見つめる。
「それを言うなら昴さんだって……私には勿体ないくらい素敵な人ですよ?」
「俺なんてそんな風に言ってもらえるほどの人間でもないが……」
昴は少し照れたように視線を逸らす。
「お前にそう思ってもらえるなら、嬉しいよ」
「…………狡いです」
「何が?」
「そんな風に返してくるの……」
羽衣子は頬を赤らめながら小さく息を吐いた。
「私だって……嬉しいです。昴さんに良い女だって言ってもらえて……」
「それなら良かった」
昴は安心したように頷くと自然な流れで羽衣子の手を取る。
「それじゃあ、そろそろ宿へ向かうとするか」
「はい!」
繋がれた手に羽衣子がそっと指を絡めると、二人は並んで歩きながら来た時よりもどこか軽い足取りで車へ戻っていった。
コメント
1件
うわあ…昴さんの過去に触れるお墓参りのシーン、すごく心に響きました。 慶太さんの好きだった煙草を供えるところ、羽衣子さんを「大切な人」って紹介するところ…昴さんの誠実さが伝わってきて温かくなりました。 羽衣子さんが「私に任せてください」って心の中で誓うのも、彼女の覚悟が感じられてじんときました。 ラストの照れ合うやり取りも可愛すぎて、この二人をずっと見ていたい気持ちでいっぱいです🤍