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ギルド報酬を貰った後、おれは倉庫の後片付けを始めようとしていた。まずは自分の部屋から、そう思って部屋に戻ろうとしたそんな時、ミルシェが声をかけてきた。
「アックさま、この倉庫から出て行く前にお話がありますわ。よろしいかしら?」
「どうした?」
「アックさまはこれからご自分の故郷へ行かれるおつもりですのよね?」
「そのつもりだな」
「でしたら、今のうちに役割をお決めになるべきかと思いますわ」
役割というと、回復系とか支援系とかをしっかり決めて迷わせないようにするということだろうか。そんなのは今まで特に気にして来なかったが。
それにしてもミルシェ・オリカ。彼女は見た目だけならほぼ人間といっても間違いじゃない。水棲怪物だった頃の姿と違って、気品に溢れた王女そのものに見える。名残で髪の色こそ水色に染まっているが、長い髪で姿勢も良くそれでいて……。
「そんなに見つめられると、襲いますわよ?」
「いや、ごめん」
さすがに気付かれた。
「コホン……。アックさまは、圧倒的な魔法の強さに加えて精霊獣をお使いですわ。さらにはルティをも凌ぐ拳。恐らく、地上において攻撃で優る存在などいないと思いますわ」
「そんなことは分からないが……」
「ですけれど、そこまでのお力を有しながらご自分で回復は出来ないとお聞きしておりますけれど、間違いありませんか?」
「あぁ。精霊の守りもあるから回復魔法までは求めなかったな。まぁ、やろうと思えば出来るかもしれないが、回復役が二人いるしな」
大部分はガチャのおかげだ。
「ですので! 行ったことの無い場所に行く前にも、役割分担を明確にしておきたいと思ったのですわ」
「それは構わないが……ミルシェの役割は?」
「あら、すでにお気づきなのでは?」
「そうだな。交渉事は任せられるし、おれから特に言うことは無い」
「フフッ、もっとも商売事はルティに任せますけれど」
おれは最初こそルティの拳に頼りっぱなしだったが、今ではその力を上回った。今はルティが近くにいるだけで癒されている……そんな存在だ。
「シーニャはワータイガーだが、回復も使えるぞ。あの子をどう使う?」
「虎娘でしたら自由にやらせるしかありませんわね。そもそも懐いているのがアックさまと両手剣娘だけですし、分担などさせてもいうことなんて聞きませんわね」
シーニャには自由に動いてもらう……それが最善か。
「なるほどな。そうなると回復魔法では無いが回復メインはルティでいいんだな?」
「ええ。それにあたしも防御魔法が使えるようになりましたし、アックさまには傷なんてつけさせませんわよ!」
「そうだな。頼りにしてるぞ」
「それではそういうことで……」
そういうと、ミルシェがどこかへ行こうとする。
「待った! フィーサは? あの子の役目はどうなるんだ?」
「アックさまの剣ですわね。役目も何も、アックさまの望むままにしてやればよろしいのでは?」
「それだけでいいのか?」
「……他に何が?」
魔法エンチャントも可能な両手剣で、最近はプラチナ化で神剣にもなった。しかし、今の今までフィーサを使って戦うことが多くなかった。神剣になってもレベルは一つしか上がっていない――ということは、単におれが使いこなせていないということにつながる。
「いや……」
「フフフッ、人化と両手剣とで使いこなしておられるようですし、そのうち磨かれていくと思いますわ」
「磨きか。そういうことなら努力するしかないな」