テラーノベル
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翔太と焼肉デートを終え、自宅に戻り鞄からPCと筆箱・・・ノートがない・・・マズイ事務所に置いて来ちゃった。
慌ててマネージャーに電話するけど、忘れ物など無かったと言われる。どうしよう・・・
インターホンが鳴り玄関へ向かうとモニターを見て絶句する。モニターに映る康二がニヤニヤしながらノートを掲げて見せた。
面倒な奴の手にノートが渡ってしまった。
玄関の扉が開くと、お調子者のお馬鹿さんが侵入して来た。
深い溜息をつく。
康二🧡『どないしたん?そんな溜息着いて』
亮平💚『ノート返して』
ノート高く掲げて見せた。全く返す気がなさそうだ。さては中身見たな。
康二🧡『阿部ちゃんて案外ロマンチスト?詩人なんやね』
亮平💚『それは、今度仕事で使うの返して』
〝そんな訳ない〟とか何とか言ってる。引き下がる訳にいかない。積年の想いをこんなお馬鹿さんに邪魔されてたまるか。
亮平💚『ねぇ本当に今度雑誌の特集で使うんだから、返せよ』
一瞬怯んだように見えたけど、尚も返す気がない。
康二🧡『返してもいいけど、一つお願いがあんねん。それ聞いてくれたら返したってもええよ。阿部ちゃんにしか頼まれへんのよ』
何だろうお願いって。ノートと引き換えなら何だってしなきゃだけど。ろくな事じゃ無かったら嫌だし。
亮平💚『何するの?内容による』
康二🧡『そっじゃ別に他当たるからええで』
何よ、俺にしか頼めないって言った癖に。
クソ!意外とお馬鹿じゃないな・・・
亮平💚『分かったよ。やるから返して』
康二🧡『あかんで、ちゃんと任務遂行したら返します。ちなみに、これ誰の事想って書いてん?』
亮平💚『協力しなくてもいいの?』
人の恋心に土足で侵入してくるなよ。
〝こんな本気のラブレター見たら女の子は皆んなイチコロ無敵やで阿部ちゃん〟そう言ってノートを頭上に高く掲げると握り拳を差し出した。
康二🧡『交渉成立やで』
拳が重なり合う鈍い音がすると〝ほなその時になったら連絡するで〟そう言ってノートをひらひらさせながら帰って行った。
夢の様な素敵な翔太との時間から、地獄に突き落とされたようなそんな息苦しさを覚えた。
亮平💚『協力して欲しい事ってなんだろう』
ノートの代わりに、今日起きた幸せなことだけをスマホのメモに記した。
翔太が優しく手を握ってくれたこと。
心配して下から俺を覗き込んでくれた事。
一緒に焼肉を食べた事。二人きりのドライブ。
そのどれもが特別な出来事で幸せなひと時だった。
〝はぁ〜〟
毎日の日課になっていた。
長年書き記した翔太への想いを、その日の終わりに読み返す。彼の事を思い馳せながらベットに沈み込むと不思議と癒されて疲れが取れていた・・・
今日はその読み返すノートがない。
亮平💚『早く取り返さなきゃ・・・』
1週間経っても、康二からの連絡はなかった。
ふざけるなよ。大事なノートを1週間も人手に渡ってしまってるだなんて気が気じゃない。
整体へはあの後一回行ったきりだ。二度目は1人で行った。翔太にこれくらいのことで迷惑かけられない。今日は配信の撮影で、翔太と康二、ラウールの4人での仕事だ。翔太に会えて嬉しいはずなのに、康二のせいで気分が悪い。
集合場所へ行くと、先に来ていた翔太と2人きりになった。胸がドキドキと騒がしい。
翔太💙『亮平1週間ぶりだね。首の具合はどう?』
亮平💚『心配ありがとう。もう平気だよ』
痛みが残るけど嘘をついた。心配かけたくなかった・・・〝そう?〟と訝しげに答えた翔太は視線をスタッフに向けると、何やら楽しそうにスタッフと話し出した。
なんか、辛い・・・
康二🧡『お疲れ様あれしょっぴー髪切った?』
えっあっ本当だ。少し襟足が短くなってる。気づかなかった・・・
翔太💙『よく気付いたね康二さすが』
康二🧡『しょっぴー愛が半端ないからね。しょっぴーを愛してたら普通分かるで』
なんか、しんどい・・・
ラウ🤍『お疲れ様。あれしょっぴー髪切った?』
皆んな気付いたのに・・・俺だけ分からなかった。
ラウ🤍『阿部ちゃん?どうしたの具合悪いの元気ないね?』
亮平💚『そんな事ないよ』
なんて事ない・・・
翔太の髪型の変化に俺だけ気がつかなかったなんて大した事じゃないだろう?
翔太の事になると心に余裕がなくなる。
終始、空回りして収録を終えてしまった。康二と翔太が近い距離感で楽しそうに収録を進めていく姿に嫉妬し酷く心を掻き乱された。
帰ろうとしていた康二にノートの件を確認すると〝あぁごめん今忙しいねんまた連絡する〟と言って次の仕事に迎う為に足早に去って行った。
人の大事なノートを勝手に捕らえておきながら、不誠実な対応に腹が立つ。
続けてラウールも手を振りながら帰って行った。
翔太💙『亮平なんか困り事?今日ちょっとらしくなかった』
胸がザワザワとうるさい。思い通りに行かない現状に苛立ち心が辛い。
亮平💚『俺らしいって何?翔太に俺の何が分かるって言うんだよ!』
あぁやっちゃった・・・こんな筈じゃない。
こんな事言いたい訳じゃない。
〝好き〟
翔太に言いたいのはその2文字だけだ。
普段声を荒げない俺に翔太は戸惑いを隠せず悲しい顔をすると、後退りして俺と距離をとった。
望んだのはこんな未来じゃない。
変わらない距離を望んだ。
伝えられない想いを抱えたまま、これまでと同じ変わらない距離を保ったまま、何も期待せず望まない事が俺の幸せなんだ。
〝ただ翔太を見ていたいだけなんだ〟
気付いたら卑怯にもその場を全速力で逃げていた。
後ろから翔太が追いかけてきたけど、目の前に止まったタクシーに乗り込むと肩を震わせて泣いた。
翔太💙『お前足速いな!』
最悪だ…行き先告げるの忘れてた・・・
コメント
11件
阿部ちゃんテンパリすぎ🤣 タクシーの運ちゃんも、行先言わずに泣いてるイケメンがいたら、声掛けられなかったのかな🤣
しょっぴーがんばれ👍👍💙