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【iw】
最近佐久間の様子がおかしい。
2人でいてもスマホを触ってる時間が多くて、覗き込もうとすると画面を閉じる。
目の前で堂々とやってる所を見る限り浮気ではないのだろうけど、隠されると気になってしまう。
今も俺の家でソファに寝転がって、にやにやしながらスマホを見ている。
「何見てんの」
「んー」
声をかけても空返事。
「ねえ」
構ってほしくて顔を寄せると、ハッとしていつものようにスマホの画面を閉じて起き上がる。
「ごめんごめん!俺スマホ見すぎだよね!」
「最近ずっと何見てんの?」
直球で聞いてみると不自然に泳ぐ目。
怪しすぎるその様子にもしかして本当に浮気…?と不安が胸を過る。
そんな俺の心情を察したのか、違う違うと焦った佐久間が弁明を始めた。
「小説読んでるだけ!」
「じゃあなんで隠すの」
「えっ、え…えっちなやつ…だから…?」
「はい浮気」
「なぁんで笑」
笑って誤魔化そうとしてるけど、下手くそな嘘をついてまで隠そうとするものが何なのか余計に気になってしまう。
「じゃあ見せてよ」
「怒らない?」
「やましいことないなら」
渋々渡されたスマホを見ると、確かに小説の画面。
しかしその中身は、翔太と佐久間がありえないほど乱れて致している最中のもので…
「…は?」
え、待って、頭の整理が追いつかない。
こんな仕事をしてるからこういう世界があることは知ってるけど、なんで本人がそれをにやにやしながら読んでんの?
てかなんで翔太?どういうつもり?
完全にフリーズしていると、ぽんと肩を叩かれた。
「そうなるよね、ごめんね」
いや本当意味が分かんない。
謝ってはいるものの、ヘラヘラしているその態度からは真意が読み取れない。
「いやー最近なべさく推しでさー、塩かと思ってたら急に子供みたいにやきもち妬く翔太可愛くて…」
まじ何言ってんの?
やきもちなら俺だろ、いやそうじゃなくて…
「俺より翔太の方がいいの…?」
そう聞くと、やばいと思ったのかバッと顔を上げて俺の目を見る。
「違う違うそうじゃなくって!これはあくまでフィクションだから!本物の俺が好きなのは照だけ!」
まだ理解はできてないけど、その言葉を聞いてとりあえず安心する。
「こういうのって普通見るの嫌なもんじゃないの?」
「んー、まあ俺は自分のこと大好きだし?俺愛されてんなーって思う」
「…俺の愛足りてない?」
「足りてる足りてる、むしろもらいすぎてる」
お腹いっぱいみたいな顔して言うからちょっとムッとする。
それを見てケラケラ笑う佐久間に何がおかしいのって頬を抓ると、俺の手に擦り寄って幸せそうに微笑んだ。
「俺がメンバーから愛されてるって、ファンの子達が思ってくれてんだと思ったら嬉しいじゃん」
そういうもんなのか…?
分かんないけど、そんなに幸せそうな顔で言われたら何も言い返せない。
「あべさくは鉄板だけど、めめさくとかふかさくもよくってさ~、総受けも熱いよね!」
納得しかけたところでいきなり早口で捲し立てられて、また自分の恋人の思考が分からなくなる。
自分がメンバーに組み敷かれてるのを見てそんな喜ぶことある?
フィクションって分かってても俺は面白くない。
あれ、てかちょっと待って。
「俺と佐久間のは見てないの?」
「あっ…」
またやばいって顔。
「見てないんだ?」
問い詰めると急にもじもじしだす佐久間。
その様子が可愛くてちょっと意地悪したくなる。
「ねえなんで俺のは見ないの?俺達どんなことしてるか気にならない?」
微笑みながら詰め寄ると、もうやめてと言うように両手で口を塞がれた。
「見てないわけじゃないけど、照のはリアル知ってるからなんか恥ずかしいじゃん!」
なにそれ可愛い。
珍しく顔を真っ赤にしてる姿がたまらなく可愛くて、口を塞ぐ手にキスをすると慌てて手を離された。
「俺のだと意識しちゃうんだ?」
「わざわざ言うなよ…」
両手をぎゅっと縮こめて恨めしそうにこっちを見てくる。
小動物が威嚇しているようなその仕草がまた可愛くて抱き寄せると、佐久間もおずおずと背中に手を回してきた。
「佐久間がどうしても見たいんなら止めないけど、他のメンバーとのやつは俺の前ではあんま見ないで」
「まあ俺も照のカップリングはいわさく以外地雷だから気持ちは分かる」
これは喜んでいいのか…?
自分は他のメンバーと満遍なくいちゃついてるのを見てるのに理不尽じゃない?
「俺だけがいいのに…」
ぎゅっと抱き締める手に力を込めるとふふっ、と笑う声が聞こえた。
「それ前読んだ小説で翔太にも言われた」
「ねえ!やだ!!」
抱き締めていた手を離し、肩を掴んで訴える。
俺の言葉に他の男重ねるのはなしだろ。
読みすぎて悪い影響出ちゃってるじゃん。
「そんなこと言うんだったら禁止にするよ」
不貞腐れるとごめんと焦って謝ってくるが、本気なのが伝わってないのかどこかヘラヘラしている佐久間になんとも言えない気持ちになる。
本気じゃないのは分かってても、これから何度もこんなことがあったらさすがにきつい。
「でもこれ結構参考にもなるんだよ?」
「参考って?」
食い下がってくる佐久間を不満げに見つめる。
「ファンの皆こうゆうの喜ぶかなって勉強にもなるし!」
俺の視線は無視して、緊張感のない面持ちで佐久間が続けた言葉に俺の我慢は限界を迎えた。
「絡むとき参考にしよっかなって」
弁明のつもりだろうけど、これは聞き捨てならない。
いくとこまでいっちゃってる小説を参考にするって?
「は?これ参考にすんの?誰と?」
ハッと我に返った佐久間の顔色が変わる。
うん、完全に悪手だったよね。
「参考って言っても見えるとこだけね!全然変な意味とかではなく…」
「さっき地雷がどうとか言ってたけど、俺もいわさく以外地雷だから」
佐久間の言葉を遮って告げると、両手で顔を覆って項垂れる可愛い恋人。
そんな様子さえ可愛くて可愛くて仕方ないけど、鈍感でデリカシーのないこの人にはしっかり教えてあげないといけない。
参考にしようとしてること、実践したらどうなっちゃうのか。
「小説でやってたこと、全部やろっか♡」
にっこりと笑って伝えると、うぅ…と諦めたように唸ってから顔を覆っていた手を下ろした。
「今後気を付けるのでほどほどでお願いします…」
上目遣いでそんなこと言われたら煽られてるとしか思えない。
このあざとさが小説のおかげだとしたらそれはありがとうだな。
「可愛い佐久間たくさん見せてね」
観念した佐久間を抱き上げて、寝室の扉を開ける。
そっとベッドに降ろすと少し期待したような目をした佐久間と目が合う。
小説より現実の方が可愛いんじゃない?
明日はオフだし、フィクションなんて必要なくなるくらいたっぷり楽しもうな♪