-あるところに美しい女の子がいました。彼女は実は魔女で、魔女の中では珍しい『人の心を読む』魔法を持っていました。彼女の両親はその事に初めは気づきませんでしたが、気づいたあと彼女を数人の召使いと共に館に閉じ込めてしまいました。召使いは心を読まれたくないので彼女に必要以上に近づきません。彼女は親の愛、人の優しさを知らずに成長しました。両親がそばにいないのは忙しいからだと教えられても、賢い彼女は心を読まずともそれが分かっていました。
彼女に与えられたのは館の中だけでの自由と莫大な量の本。そして「これで勉強をしなさい」と渡されたパソコンだけでした。
ある日、彼女はパソコンのアプリでネット上の友の心が読めることを知りました。友相手に使ってはいけないと思っても、好奇心に耐えきれず使ってしまいました。結果、得られたものは今までに貰ってきた言葉がただの薄っぺらい紙のようなものだということだけでした。
彼女は苦しくなりました。
「どうして私は誰にも愛されないの?私は好きでこんな魔法が使えるのじゃないのに…」
怖くなった彼女は会う人会う人に必ず魔法を使いました。自分に害をなす人を近くに置かないように。自分が傷つかないようにするために…
そんなことを始めて数ヶ月。彼女が本当に信じられる人が少しづつ増えてきた頃。彼女はある青年と出会いました。青年と話す度に彼女は楽しくなり、青年に恋をしていると自覚をしました。
彼女は成長の途中で自分の魔法で相手の考え、気持ちを操れるようになれました。
はじめ、彼女は青年にそれを使おうとしました。愛に飢えていた彼女は青年を独占したいという欲が強かったのです。しかし、どうしても出来ませんでした。
「恋をするのにこんなことをするのはいけない。こんなことをしても虚しいだけね。」
彼女はそう考え、その魔法を使いませんでした。