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大丈夫…だよね?変、じゃないよね?
と落ち着かない様子で緊張気味にスマホの暗い画面で自分の顔を確認して
視線を落として自分の服装を再度確認する那緒。
日曜日、その日は那緒にとっては待ちに待ったルイとのデートの日。
デート…なのかな?デート…ではないか…。…デートなのかな?
と頭の中で考えていると
「お待たせ」
と声がして声のほうを向く。
すると薄い青色の薄い猫のシルエットが散りばめられている柄シャツに白いTシャツ。
ピタピタというほどではないスキニージーンズ。紐が青の白いスニーカー。
小指にピンキーリングをしており、ピアスもファーストピアスからリングタイプのピアスに変わっていた。
綺麗なブロンドヘアーも前髪、触角部分を残し、耳の上から編み込みが始まり
耳の裏を通ってポニーテールの中へ入っている髪型になっていた。ポニーテールの位置は後頭部の中央。
そのオシャレさとルイの元来のスタイルの良さ、ルックスの良さから
周囲の人がチラチラ見るほど、いつも以上にビジュアルのクオリティーが上がっていた。
そんないつもとは違う、オシャレなルイを見て那緒は
これは…デートだ!
と確信した。
「ま、ま、ま、待ってないよ」
「ままま?」
「な、なんでもない!」
「服」
「服?あぁ、ルイの?に、似合ってるよ。か、か」
「カッコいい」と言おうと首を横に振るルイ。
「ん、ん?」
「那緒の。服可愛いね。似合ってる」
「…」
可愛い?カワイイ?あの可愛い?私が?ルイが?私に?
と思い頭が沸騰したヤカンのようにブフンッっと蒸気をあげる。
「さ、さあ、行こうか!」
上擦った声で右足を出したときに右手を出し、左足を出したときは左手を出すという
あからさまに普通の歩き方ではない歩き方で歩いていく那緒。
壊れたロボットかな?
と思いながら那緒についていくルイ。時を遡ること2日前の夜。
「お兄ちゃん!!」
夜ご飯を食べ終わった後、ルビーがソファーで寝転がっているルイの元へ駆け寄り、ルイのお腹の上に座る。
「ぐっ…。ルビー…夜ご飯…出るって…」
「お兄ちゃん!」
「…なに?」
「今度の日曜日、那緒ちゃんと出掛けるってほんと!?」
ルイはコクンと頷く。ルイの上から降りてルイの視線に合わせるようにしゃがむルビー。
「なんで言ってくれなかったん!?」
「逆になんでルビーに言うの?」
「だってお兄ちゃんデートの服とかわかんないでしょ?」
「…デート?」
「デートでしょ!」
「そうなの?」
「だって」
「那緒ちゃんお兄ちゃんのこと明らかに好きじゃん」と言おうとして言い留まる。
ルイは眠そうな目でキョトンとした顔をする。
「イ…」
「イ?」
「イケメンが!」
ルイの足を叩くルビー。
「…痛い」
「とにかく!明日お兄ちゃんのデート服決めるから!」
「えぇ〜…。テキトーなTシャツにジーンズでいいじゃん」
頭の中でルイにテキトーなTシャツにジーンズを着せてみる。
「…いや、似合うけどさ」
「ありがと」
「でもダメ」
「なんで」
「キメていきなさい」
「キメるの?ぶっ飛ぶってこと?」
「そっちのキメるじゃない。那緒ちゃん怖がるでしょ。幻滅よ」
「んんー」
「とりあえず今持ってる服見せて」
「明日でいいっしょー」
「いいよ。昼から見せてね」
「勝手に部屋入って見て」
「はいよ」
ということで土曜日の昼。ガサゴソする物音で目が覚めたルイ。
自分がかけていた掛け布団の上にハンガーにかかった服が並べられているのに気づいた。
「あ、お兄ちゃんおはよー」
「…んん〜…。もうやってんの?」
「うん。さっき起きて、洗濯機回して、お兄ちゃんのコーディネートどうしようかって」
「お疲れ様です」
「ん。あ、お兄ちゃん立って。ちょっと合わせるから」
とルビーが言うとルイは掛け布団と捲り
「これで合わせられる」
と言う。ルビーはジト目でルイを見るが
「ま、これでもいっか」
ということで寝転がっているルイ相手に服を当てがってコーディネートを決めていく。
「お兄ちゃんどんな靴持ってたっけ?」
「ん?わかんない」
「自分の靴なのに?」
「最近Dadが作ってくれたスニーカー型のサンダルしか履いてないから」
「あぁ、あれね。私も貰って履いてるけど。…まあ…たしかに楽なんだよねぇ〜」
「でしょ」
「靴って」
「シューズクロゼットの箱に入ってんじゃない?」
「ま、この際ひと通り見てみますか」
と言ってルビーはルイの部屋を出ていった。ルビーは玄関付近のシューズインクロゼットに入る。
そこにはルビーが個人的に可愛いと思ったスニーカーなどが置いてある。
「ま、改めて見ると私もお兄ちゃんのこと言えないな…」
可愛いと思って買ったが、2、3回しか履いていない靴が多かった。
「無駄遣いしてるなぁ〜…女子高生のってか?私はなんだ?
キャラ的にはリリィ様に近いからそのまんまルビーかな?それともルビィ?」
なんて呟きながら靴を漁る。
「うわ。これDadの靴じゃん。イギリスに送ったほうがいいのかな」
「うわ。これはMumの靴だ。地味なの好きなんだよねぇ〜あの人」
なんてルイとルビーの父と母の靴もあり、イギリスにいる父と母を思い出す。
「あ、これお兄ちゃんの靴か。Mumの誕プレか?
あの人自分は地味な靴履くくせに、お兄ちゃんには派手なの履いてほしいんだなぁ〜」
「あ、こっちはDadのプレゼント?紳士的な靴。お兄ちゃんが履くはずないのに」
ととりあえずカジュアルな服装に合いそうな靴を玄関に出した。
「なるほど。全体的に白ベースでピンクだったり青だったりかぁ〜…なるほどなるほど」
玄関に5足ほどを並べてルイの部屋に戻る。ルイはベッドの上で微動だにしていなかった。
「…お兄ちゃん飽きないの?」
「なにが?」
「その格好でいること」
「ただ寝転がってるだけを飽きたらいよいよでしょ」
「あ、そーゆー自覚はあるのね」
ということで靴を念頭に置いて再度コーディネートを考えるルビー。
「うんうん。これでいいんじゃないでしょうか」
「ルビーのチョイスなら間違いない」
「おぉ。嬉しいこと言ってくれるじゃない。ま、とりあえず一式ここに掛けとくからね」
「ん。ありがと」
「どういたしまして。お昼ご飯食べよー」
「ん」
「あ、お兄ちゃん片付けるの手伝って」
とルビーが言うとベッドで起き上がったルイはまたベッドに倒れ込んだ。
「おい」
2人で服を片付けてお昼ご飯へ。
お昼ご飯を食べた後、ソファーで寝転がるルイを座らせて、ルビーが後ろに回り込む。
「さて。髪型どうするかだよね」
「別に垂らしとけば良くない?」
「良くない!いや、カッコいいけど、ダメ」
「褒められてんのかなんなのか」
「特別な日なんだから」
「普通の日曜日だよ」
「那緒ちゃんにとっては特別な日なの」
「そうなの?」
「そうなの」
「なんで?」
「これに関してはいくらダルがりなお兄ちゃんでも教えない。自分で答えを考えて。
ちなみにこれに関して考えないとか考えるのダルいって言ったら、私は今後お兄ちゃんを軽蔑します」
「は、…はい」
ジト目でルイの目を見つめて言うルビーに気圧されるルイ。
ルイの顔から髪に視線を移しルビーが髪を手櫛で梳かしながら考える。
「無難にポニテ?でも無難すぎるか?でもシンプルポニテカッコいいんだよねぇ〜」
「まあね」
「うん。お兄ちゃんのそーゆーとこ嫌いじゃないよ」
「ありがと」
そんな話をしながらルビーがいろいろと試行錯誤し、髪型も決めた。そして迎えた日曜日、当日の昼。
「お兄ちゃん!起きて!」
「んん…」
「レディーを待たせるなんてダメだよ!」
「なんて時代錯誤な妹だ」
「なんだって?」
「なんでもないです」
と起きたルイは歯を磨き、顔を洗い、お昼ご飯を軽く食べ、ルビーが選んだコーディネートに着替える。
「おぉ〜。いいじゃん」
と自分のコーディネートに満足げなルビー。
「そうだ」
と言ってリビングを小走りで出ていく。自分の部屋に入って出てくるルビー。
「お兄ちゃんこれ小指なら入るんじゃない?」
「…リング?邪魔だからしたくない」
「大丈夫。小指なら気にならないって」
と言われて小指に指輪をはめる。
「うん。いいじゃんいいじゃん。アクセントアクセント」
自分の小指を見るルイ。
「アクセントね」
「んで」
ルビーがルイに近づいて首元のネックレスをTシャツの上に出す。
「ネックレスを見えるように出して」
ルビーがルイを見ながら後退る。全身を見る。
「うん。いいね。はい」
ソファーをトントンと叩く。
「座って」
言われるがままソファーに座る。櫛やヘアスプレー、ワックスを駆使して髪型を作るルビー。
「痛い…ルビー…あんま引っ張らないで」
と言うルイの声も無視。
「よし!できた!」
ということでできた髪型が前髪、触角部分を残し
耳の上から編み込みが始まり、耳の裏を通ってポニーテールの中へ入っている髪型。
「編み込み…これ生え際痛くなってくるやつじゃない?」
とルイが言うと、ルビーは笑顔で
「オシャレは我慢だから」
と言う。
「…よく聞くけど。…我慢するなら自分の好きなファッションじゃないでしょ」
と呟くルイ。
「なにか言った?お に い ちゃ ん」
「なんでもないです」
と玄関へ向かうルイ。
「お兄ちゃん。現金持った?」
「カードでいいでしょ。それかスマホ」
「いや、一応現金も持ってきな?」
「Mumかな?」
ルイの部屋に入っていくルビー。現金を持って出てくるルビー。
「ま、2万くらいあればいいでしょ」
「少なくない?」
「少なくない!そんなお金があったら食洗機買います」
「あ、まだ食洗機迷ってんだ」
「でも勿体ないので買いません」
「あとなんでオレの部屋の現金の在処知ってんの?」
「んふぅ〜。お兄様のことはなんでもお見通しなのよ。ねっ?お兄様ぁ〜!どお?谷崎妹感。
まななっちおぉ〜ってね。それか歩鳥ちゃんね。声優さん繋がり」
「…よくわからん。谷崎妹って誰」
「一緒にアニメ見たじゃん!お兄ちゃんもおもしろいって言ってたやつ!」
「…あぁ〜…あのsiblingか」
「そ。マジで第2話で泣ける神アニメよ。神アニメ神アニメ神アニメ神アニメ神アニメ。
どお?声優さん泣かせ」
「じゃあ言うなよ」
「もう一般人が語ろうもんなら…cut that person’s tongue like Tanzaku,
write my wish on it, braid it, and stuff it down their throat.」
と笑顔で言い放つルビー。(知りたい方は翻訳してみてください)
「怖いって…」
「あ、靴はそれね」
ルビーが選んで出しておいたスニーカーを履く。
「お兄ちゃん」
「はい」
「まず那緒ちゃんの服を褒めること。可愛いねとか似合ってるねとか」
「どんなにダサい服でも?」
「…ほ、褒めよう。というか大丈夫。たぶん那緒ちゃんもそんなダサい服を着てくることはないはず」
たぶんうたちゃんとかに相談してるだろうし
と思うルビー。
「そうなの?」
「とりあえず褒める。いい?」
「わかった」
「あと」
「車道側はお兄ちゃんが歩くこと」と言おうとしたが
この兄、たぶん小さい頃にDadに教えて貰ったんだろうな
小さい頃から普通にやってたし、今でも私に対しても車道側歩くしなぁ〜…
と思い
「この天然イケメンやろう」
と言った。
「急にどうした?ありがとう」
「あとは…そうだなぁ〜…。とりあえず今日はお兄ちゃんが那緒ちゃんをエスコートする感じで」
「でもオレ行く場所とか聞いてないし」
「そこは那緒ちゃんの行きたいとこについていく。
あとは些細なことでも、ちゃんと那緒ちゃんをエスコートしてきなさい!」
笑顔で両肩をサイドから挟まれるように軽く叩くルビー。
「はい。いってきます」
「はい!いってらっしゃい!」
ドアを開けたルイ。振り返る。
「現地まで歩くのダルいからヘリコプターとかで行けないかな」
と言うルイ。一方の那緒は
歌乃「罰ゲームの発表でぇ〜すΨ( Φ∀Φ)Ψィヒヒ
罰ゲームはぁ〜…ルイと1日2人切りでお出かけぇ〜(。 >艸<)ウシシ♡」
という歌乃のメッセージの後からずっと
「あぁ〜服装どうしよぉ〜〜。えっえっ。香水とか。いや、それよりも服装。
オシャレな服。デート…デートではないのか。いや、でもルイと2人でしょ?あっ、待って待って」
といろいろと悩んでいた。
うた(歌乃)に相談するのもなぁ〜…あの人が企画したことだし…
と悩みに悩んだ結果
「なるほど。それで私に頼みたいと」
頷く那緒。頼んだ相手は歌乃の妹、詩衣。
「まあ、那緒さんの幸せのためだから、さすがのあの姉もふざけはしないでしょうけど…。
まあ、私でよければ」
「ありがとう!詩衣ちゃん」
「いえいえ。じゃあとりあえず那緒さんのクロゼット見せてもらってもいいですか?」
「どうぞ先生」
「先生はやめてください」
と言いながらクロゼットの中を見る詩衣。
「うぅ〜ん…。ルイさんとのデートですもんね?」
「うん。…あ、デートでは、ない、かも?」
「そうなんですか?」
話しながらハンガーにかかった服を見ていく詩衣。
「だって、なんかねぇ?」
「なんか?」
「だって詩衣ちゃんもクラスの男子と2人で出かけることをデートとは呼ばないでしょ?」
「…まあ…たしかに…そうですね?でも那緒さんはルイさんのこと好きなわけじゃないですか」
「う…ん?」
「ですよね?」
「な、なんで?」
「まあ、見てればわかりますし、お姉ちゃんから聞いてますし」
「うため…」
「まあ…。でもお姉ちゃんから聞かされてなかったとしても、那緒さん見てればわかりますって」
「嘘?そ、それはなんで?」
「んん〜…態度?なんだろう。
ま、ルイさんに対して、明らかに特別な感情を抱いてるってのは明白っていうか。
ルイさん本人が気づいてないのが不思議なくらいですよ」
「嘘」
「マジです」
「態度に出てる?マジ?」
「話し方とか、あとルイさんに対して普通に赤面するし」
と言われて自分の頬を掌で触る那緒。
「那緒さんはガッツリ安井さんですよ」
「安井さん?私苗字は本栖(もとす)だけど」
「あぁ、安井さんって私の友達が使ってる言葉で「わかり易い」とか
「使い易い」とか「なになに易い」っていうのを総称して「安井さん」って言ってるんです」
「へぇ〜。流行ってんの?」
「んん〜…。私の高校では流行ってますけど
世間的にはそもそも「安井さん」って言葉自体知らないんじゃないですかね。
私たちもまだ使い慣れてないですし」
「へぇ〜」
「…うん。なんか、無難なアイテムしかないですね」
と言う詩衣。
「無難」
「可愛いアイテムがない」
バッサリ斬る詩衣。
「可愛いアイテムない、ですか」
わかってはいたけどショックを受ける那緒。
「ないです。なんか、…はい。うん…。パンツはジーンズのみですか?」
「うん…。スカートは制服でしか着てなかったし、ショートデニムもハーフパンツも恥ずかしいし」
「…買いに行きたいくらいなんもないですね」
「そ、そんなダメですか」
「私の家行きましょう。私かお姉ちゃんの服でコーディネートしますので」
「え。あ、はい。お願いします」
ということで場所を那緒の家から歌乃、詩衣の家へ移した。
「よっ」
クロゼットを開く。
「うわぁ〜。華やか」
「那緒さんのクローゼット白と黒だけでしたもんね」
「黒が細く見えるって聞いたことあったから。収縮色?だっけ?」
「たしかに黒はシュッっと見えて明るい色は、こう、広がって?見えますけど
それは使い様の話であって、コーディネートでは明るい色も使ったほうがバリエーション豊かにできるので」
「まあ、…たしかにそれはそうか…」
「あと那緒さん別に、色気にしなくていいと思いますけどね。細いし」
「細いかなぁ〜…」
自分のお腹を見る詩衣。
「本気で言ってるならゴミダサコーデで放り投げますよ?」
と怖い笑顔で言う詩衣。
「え。なんで、ごめんなさい」
「まったく。私がどれだけ食べるのを我慢していることか。私少し食べただけでも太るんですから」
「でも詩衣ちゃんも細いじゃん」
「細くないです。着痩せして見えるだけです。
あと、もし細く見えてるんだとしたら、努力です。間食とかおかしも控えてるんで」
「すごいなぁ〜。あ、これとか可愛い」
と言い指指す那緒。
「…那緒さん。マジで言ってます?」
「え。可愛くない?」
「可愛いですけど、これは私の部屋着です。
これを外に着ていくことは、デートに着ていくなんてもっとないです」
それはヨダレモンスター(通称:ダレモン)のTシャツで
眠そうな半目のポヤポヤしたオレンジ色のダレモンが中央にプリントされており
そのダレモンの上に「ネムインダモン」と書いてあるものだった。
「え。そうなの?」
「那緒さん…」
詩衣は
この人、ファッションセンスない系の人だ…。ありがとう那緒さん、相談してくれて
と思った。
「じゃ、今度ダレモンのTシャツあげます。ただ部屋着にしてください」
「は、はい。わかりました。ありがとうございます」
「じゃ、コーディネート選んでいきますよ」
と詩衣が考え始める。
「スカートはどうです?」
「スカートは…ちょい恥ずかしいかも」
「パンツスタイルのほうがいいですか?」
「うん…できれば」
「ま、ここぞのときじゃないですもんね。動き、…うん。安井さんのスタイルのほうがいいか」
「できるなら」
「じゃこれ一式着てみてください」
と言われて着る那緒。
「ハーフパンツも恥ずかしい…」
脚を閉じてモジモジする那緒。裾にいくにつれ広がっている感じのベージュのハーフパンツに
胸の中央に少し英文が書いてる白いTシャツをインし、その上にベージュの薄めのロングカーディガン。
「ハーフパンツも恥ずかしいですか。めっちゃいいですけどね。じゃ、次」
とどんどんと試着していく那緒、試着させていく詩衣。
「んん〜っと?ショートデニム、ハーフパンツ、スカート、脚を見せるのは恥ずかしいと」
頷く那緒。
「ピンク系統の服も似合わないからあまり」
頷く那緒。
「かといって黄色とかオレンジとかの蛍光色のような派手な色も」
頷く那緒。詩衣はにっこり笑顔になって
「わかりました」
と言う。嫌な予感がした那緒。詩衣チョイスのコーディネートが入った紙袋を渡される。
「詩衣ちゃん、着てみなくていいの?」
「いいんです」
「確認とか」
「しなくて大丈夫です」
「…詩衣ちゃん、ありがとうね。いろいろ私のために考えてくれて」
「いえ。私も楽しかったので」
「じゃ、お借りします」
「どうぞどうぞ」
ということで詩衣の服を借りて家へ帰った。玄関で那緒を見送り、ドアが閉まった後
那緒さん、すいません…ハーフパンツ無理とか色無理とか言われて少しイラッっとしたのに加えて
あのコーディネートを着てドキマギする姿を想像したら楽しくなってました…
と半分反省、半分笑いを堪えていた。家に帰ってコーディネートを広げた那緒。
一番最初に着た裾にいくにつれ広がっている感じのベージュのハーフパンツに
胸の中央に少し英文が書いてある白いTシャツ、そして薄ピンクのロング丈のYシャツだった。
「う…詩衣さん?」
まぁ、パンツは私の持ってるジーンズを履けばいいか
と思い、ふとスマホを手に取ると、詩衣からメッセージが来ていた。
詩衣「あ、パンツを那緒さんの持ってるやつと取り替えて着ていったら
私からルイさんに那緒さんがルイさんのこと好きなのチクりますので。よろしくお願いします」
「見透かされてる?」
いや、でも変えても詩衣ちゃんにはバレない…よね?あ、でもルイに聞くかもしれない…そしたらバレる…
ということで日曜日、当日。詩衣に貸してもらったコーディネートを着る那緒。
「脚がスースーする」
ともじもじする。
「で?」
詩衣からの助言メッセージを見ながら整える。
詩衣「薄ピンクのYシャツは長袖なので、七部丈ほどに折って捲ってもらって。
白Tはハーフパンツにインで。あとはネックレスなんかあればネックレスしたり」
「袖は捲った。Tシャツはインした。ネックレスも…一応
高校生のときに買った猫がぶら下がっているようなネックレスつけたし」
と準備が整った那緒は待ち合わせ場所へと向かった。そんな準備をしたルイと那緒のデート?がいざ始まる。