エレベーターがゆっくりと開くと、そこは一階。
しんと静まり返っている。
父さんと母さんも寝ているんだ。
なんだか不気味だけど、羽良野先生が率先してキビキビと歩いている。
その後ろ姿は、よく知っている学校の先生だった。
ぼくにはわかるんだ。
羽良野先生は根はいい人だと。
カタンと待合室の奥から、何かが倒れる音がした。
誰かが起き出したのだろうか?
怪物の羽良野先生と一緒だし、会うのはいけない気がする。
早目に父さんと母さんを見つけないと。
けれど、薄暗い間で目を凝らしてみると。
空調が壊れたような暑さの病院は、待合室の椅子が全て空っぽだった。
「羽良野先生! 父さんと母さんは!」
ぼくは涙を流していた。
床へと落ちだした。その幾つもの水滴は床を濡らした。
「歩君。落ち着いて。慌てては駄目。ご両親は、家に荷作りのために、一旦戻ったのかもしれないわ。それに、村の人たちに連れて行かれたとしても、例外はあるけど、すぐには殺されないの」
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