テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
(大きなタワーマンションッ!!)
夜。仕事を終え、私は睦月君が住むというマンションへ行った。住んでいるというタワーマンションを見上げて語彙力のない感想が脳裏によぎったところ。
あれから婚姻届けは彼が出しに行くと言ってくれたので任せた。その後、残した仕事があるから会社へ戻ると言って帰って行った。
先ほどもらった指輪はしっかりと左手にはめられてしまったので、もうこれで契約完了。そして婚姻届けも正式に受理されたと連絡が入ったため、私は突然『高梨佑里香』から『天川佑里香』になってしまった。
ああ…夢なら覚めて…と願うも、これは現実。受け入れてどうにか借金返すまでやっていくしかない。身の回りの生活を整える仕事をめいっぱいフルで頑張ったら、固定給で30万円もらえると仮定し、概算で計算したら、5年と半年でなんとか2千万円に到達する。もらえる概算のお給料が随分高額であるとか、税金とかその辺りは…深く考えない!
あんな若い子の貴重な5年を、私みたいな女が占領するなんて、足枷もいいところだろう。ほんとに申しわけない。あれもこれもすべて、お父さんのせいだ。マルヨーさんの株が急騰して株価がもとに戻ればいいのに。
店にいる間、睦月君のことをもう少し知りたくて、もらった名刺にQRコードが付いていたのでリンクを辿ってみた。睦月君の会社、天河(てんが)のHPがあったので覗いてみると、すごい事実が判明した。
ベンチャーキャピタル、天河について
僕が若き才能・企業に投資する理由――そんな見出しから始まり、大きく睦月君の写真が掲載されていた。
きゅっとしっかり絞められたブルーのネクタイ、整った髪型、輪郭、目、鼻、口――トレードマークの右目の下の泣き黒子、美しい細身の体を包むダークネイビーのスーツがよく似合っていた。
彼はとても綺麗な顔立ちで、思わず見惚れてしまうほどだ。新進気鋭の若者代表といった感じで、投資についても詳しく語っていた。
驚いたことに、彼はこの会社を立ち上げる際の資金を『伝説のトレーダー』として活躍し、得た利益をすべて投入したと書いてあった。
睦月君は元トレーダーだったのか。だからあんなに株のことが詳しかったんだ……。
現在睦月君はトレーダーを引退し、立ち上げたTENGAを運営、スタートアップ企業を応援している、と書いてあった。
『かつては僕も、貧乏で苦しい幼少期を送っていました。
しかし恩人に出会うことで助けられました。
僕の原点は、いただいた恩を返し、人と人との輪を繋いでいくことです。
だからこそ、この仕事を天職だと思い、
皆様のお役に立てるよう努力いたします』
公式HPに掲載されていた記事を読んで、彼を助けてくれた人が大勢いたのだと安心した。
きっとその中には私も一部含まれているのだろう。
ほんの少しでもあの頃の睦月君の役に立てていたのなら…幼い彼が救われていたのだったら嬉しいと思った。
それにしてもこの会社――…というか睦月君の経歴がすごいっ。
小学生の頃から株に興味を持ち、未成年口座を開設、運用、アルバイトで稼いだ元金を元手にコツコツ資金を増やす。
堅実なトレードで資産を増やし、一流大学入学後、増やした資金を元手に投資会社を設立――
それが、天河(てんが)なんだ。苗字の天川(てんかわ)から 漢字を改変させ、無限に広がる天の川と銀河をかけて、天河と名付けたみたい。
そして睦月君の会社はなんと都内で一等地のオフィスビルに入っている。
儲かっているのね。そして自宅がタワマンよ。
「ここが自宅なんて…」
通い妻になった気分でもう一度地上から聳え立つタワーマンションを見つめた。首が痛くなるほど反らさなきゃ、てっぺんが見えない。
何階建てなのかな。1,2,3……数えていたら余計首が痛くなる。下からでは数え切れなかった。推測だけれども、40階くらい上までありそう。
私は自慢じゃないけれど、商業施設以外で5階建て以上の建物に上ったことが無いのよ~っ。
大きな自動扉を抜けてマンション内に入ると、警備員が立っている。ひえっ。庶民はお呼びでない場所だわ。
無駄に広いデザイン性のあるエントランスが続いている。入ってすぐ右側に大きなお花が飾られていた。
更に進むとホールのようになっていて、ゆったりくつろげるスペース、ラグジュアリーな空間を意識した配置、高級そうなモノトーンのテーブルに椅子、グランドピアノ、奥にはキッズのプレイルームのような場所までひとつの空間に集約されていた。
エレベーターホールの近くには地下へ続く階段があった。恐らく地下の駐車場などへ行けるのだろうと想像した。
でも、実のところ行ったことがないからわからない。ただの想像だけど。違っているかもしれない。ワインセラーのようなものがあったり、バーのようなものがあるかもしれない。
エレベーターは3基あった。朝は混むのだろうかと想像するがわからない。住んだこともなければ、利用したこともないから。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!