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翌朝、○○は亮の車で学校に向かう。
助手席に座る○○の手を握りながら、亮はいつもより少し真剣な表情だ。
「……今日、迎えは?」
「今日は蓮と帰るから大丈夫!」
軽く答える○○に、亮の視線が鋭くなる。
「……ふーん」
小さく吐き捨てるように言って、車が学校の駐車場に着くと、亮はドアの前で立ち止まる。
○○が降りようとしたその瞬間――
「待て」
亮はさっと前に出て、○○の唇に熱いキスをする。
短いけれど、力強く、見せつけるようなキス。
○○は驚きと甘さで思わず目を閉じる。
「……俺の○○は、誰にも渡さない」
唇を離したあとも、亮の腕がそっと○○の肩に回される。
朝の忙しい空気の中で、二人だけの世界が一瞬だけできたような、そんな感覚だった。
○○は頬を赤くして小さく笑う。
「……亮さん……」
「ん……頑張れよ」
亮の手を握り返し、○○は胸の奥でじんわりと甘さを感じながら、一日を迎えるのだった。
教室に入ると、いじめていた子たちの姿はなく、その代わりにクラスの子たちがにこやかに声をかけてくれる。
「○○ちゃん、一緒にお昼食べない?」
「いいの?」
「もちろん!ずっと話したかったんだよ〜」
そうして迎えたお昼休みは、今まで考えられないくらい笑顔で過ごせた。
笑い合ったり、他愛もない話をしたり……○○はようやく「普通の学校生活」を味わえた気がして胸が温かくなる。
蓮と別れ家に入ると亮がリビングで待っていた。
いつもなら「おかえり」と優しく迎えてくれるのに、その日は違った。
「……楽しかったんだろ?」
「うん!みんなとお昼食べたんだよ!すごく楽しくて!」
嬉しそうに話す○○を見て、亮の胸の奥にざらついた感情が広がる。
(……俺じゃなくても、○○は笑っていられるんだな)
その思いが、口をついて出てしまう。
「……ふーん。よかったじゃん。俺がいなくても、もう平気そうだな」
その声音は冷たく、○○は思わず表情を曇らせる。
「え……亮さん……?」
亮は自分でもなぜこんな言葉を口にしてしまうのか分からない。
嬉しい気持ちと同時に、○○を誰にも渡したくないという強烈な嫉妬が絡み合って、素直に笑顔を返せなかった。
○○は小さく首を振りながら、寂しそうに呟く。
「……私は、亮さんに喜んで欲しかっただけなのに」
その言葉が胸に刺さり、亮は言いようのない後悔と葛藤に飲み込まれていった。
「○○、ごめん、」
亮の口からはそんな情けない声しか出なかった。
第7話
〜完〜