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あの瞬間。
名もなき少女に“リネア”という名を与えた時――
アリアの背後で、世界が震えた。
「ようやく見つけた。煌王よ……お前が“名前”を与えた者から、世界は崩れてゆく」
それは、音のない声。
けれど“心”に直接響くような、絶対的な“存在の圧”。
「――出なさい」
アリアが言った瞬間、霧が裂ける。
そこに立っていたのは、
“影に喰われた者”――〈祈者(いのるもの)〉。
ローブの奥に顔はない。
ただ無数の赤い目が、内側からうごめいている。
「……ッ、レイヴン、下がって」
「命令違反を承知で申し上げます、陛下。
アレは……“殺す”以外に止め方はありません」
「……私が、名を与えた子の前で、“殺す”など――できない」
アリアが煌を集める。
虹色の光が周囲を包む。
だが――
「“光”は無力だ、煌王よ」
バチッ――!!
空間が、裂けた。
リネアの体が一瞬にして吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「リネアッ!!!」
アリアが駆け寄る。
レイヴンが剣を抜き、影に切りかかる。
斬撃は確かに影の体を貫いた。
……だが、血は流れない。
代わりに、“黒い手”がレイヴンの腹部を貫いた。
「ッ、が……」
「貴様も、“煌”に近すぎた。
忘れられし者に、忠義を尽くすなど、哀れな存在だ」
レイヴンの仮面が割れる。
白い肌。
若い。
まだ十代にも見えるほどの顔。
その瞳は――アリアを見ていた。
「……逃げて、陛下……あれは……“神に拒まれた者”」
アリアは膝をつきながら、煌を全解放する。
塔の頂でしか見られない光が、霞の街に放たれる。
けれど、〈祈者〉は止まらない。
「お前が名を与えるたび、我らは力を得る。
煌が“価値”とされる限り、我らの祈りは終わらぬ」
アリアは立ち上がる。
「だったら――わたしが、終わらせる!!」
両手を広げ、巨大な煌の円陣を展開。
それは“煌王”にしか許されない、“命を削る魔法”。
「煌よ。
この命ごと、焼き尽くして――私の声を、世界に響かせて!!!」
リネアの叫びとともに――
爆発が起きた。
霞の街の半分が、光に飲まれる。
だがそれは、破壊ではなかった。
“影”を焼き払い、“希望”の煌を残す爆発だった。
***
時間が、止まっていた。
リネアが目を開けると、アリアがそばにいた。
「……い、生きて……る……?」
「ええ、あなたも。レイヴンも、まだ微かに……」
「な、んで……助けたの……」
アリアの答えは、短かった。
「あなたが……“名を呼んでくれた”からよ」
***
その夜、〈祈者〉の残響は、王都にまで届いた。
「“名づけ”によって、影が強くなる」
「煌王が、世界を壊し始めている」
人々の囁きは、やがて“恐怖”に変わる。
そしてその中心で、誰よりも冷静に笑っていた男がいた。
「やはり、“彼女”は鍵だな……」
――その名は、クレイズ・アークライト。
世界の裏で“煌の崩壊”を計画する、反煌連盟の首領。
「煌王が涙を流した時、この世界は……砕ける」
👑To be continued…👑