テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
午後の研修は、客室フロアでの案内だった。
「お客様をお部屋までご案内するのも大事な仕事です。笑顔を忘れずに」
律の説明に、華は緊張しながらも「はい」と答えた。
だが、実際にお客様を案内し始めると、途中の角を間違えてしまう。
「こちらでございます!」と元気に扉を開いた先は、全く別のお部屋だった。
「……桜坂さん、こっちです」
律が慌てて正しい部屋へ誘導し、深々と頭を下げる。
「大変失礼いたしました」
お客様が去ったあと、華は青ざめた顔で小さく声を絞り出した。
「……すみません」
律は深く息を吐き、表情を引き締めた。
「次からは必ず確認してください。小さなミスでも、お客様には不安を与えます」
淡々とした叱責に、華はただうなずくしかなかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!