テラーノベル
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mtk side
雨の日、僕達は同じ傘に入った。
自然と、距離が縮まる。
僕は一度、立ち止まって言った。
「今日は…触れても、平気」
若井は、すぐには動かなかった。
「本当に?」
「うん。今は、平気」
若井は、僕の手ではなく、
指先だけに、そっと触れた。
命令も、誘導もない。
ただの確認。
僕は、逃げなかった。
「…大丈夫」
その言葉で、若井は初めて少し息を吐いた。
「家、行こう」
そう言って、そっと手を取った。
〜
mtk side
関係が安定し始めた頃ほど、僕は不安定になった。
「近づいていい」と思えた反動で
「また壊れるんじゃないか」 という
怖さが顔を出す。
ある夜、僕は若井に
短いメッセージを送った。
“ 今、少しだけ不安かも ”
すぐに返事が来た。
“ じゃあ、近くに行く。
嫌がることは、何もしない。 ”
その言葉だけで、胸の奥が温かくなった。
〜
mtk side
若井は本当に、何もしなかった。
同じソファに座り、同じ方向を向き、
テレビの音を小さく流す。
触れない。
視線も合わせすぎない。
それなのに、僕は次第に
呼吸が楽になっていった。
「…若井ってさ」
「うん」
「一緒にいると、安心する」
若井は少し間を置いてから答えた。
「俺もだよ」
それは初めて、
若井が自分の欲求を口にした瞬間だった。
「だから、触れないって言っても
触れたくなる。」
「……、触れてよ、もう、逃げたりしないから」
そして、僕達が初めてちゃんと
向き合った証拠だった。
「俺、止まらなくなるかもしれない。
怖い思いをさせるかもしれない。
それでも、俺の好きなように触れていいの?」
そう言われると、少し怖気付く。
しかし、この関係である以上軽いケアだけで
済むことはおそらく少ない。
その時のために、慣れておきたい。
「いいよ。好きなように触れて。
僕は若井が欲しい。」
そう、目を見て告げた。
「…わかった。だけど、
体を使ってそれ以上へ行くつもりは無い。」
「うん、わかってる。」
そうして僕は、そっと若井の手を握り、
1本1本ゆっくりと指を絡める。
『元貴、Kiss(キスをして)』
どくん、と胸が高鳴る。
ふわりと、甘い香水の匂いがする。
甘く、くどくない、若井の愛用している香水。
そっと唇を重ね、少し離れれば
次は若井の方から唇が寄せられる。
腰を抑えられ、頭に手を添えられて
唇の隙間からぬるりと舌が入ってくる。
それを抵抗することなく受け入れ、
甘く、長いキスをしばらく続けた。
「んっ、ぁ…ッ、はっ、んんぅ、っ」
甘い声を漏らせば
ぐい、と頭を押し付けられる。
唇と唇が深く重なり合い、
銀の糸を引きながら、そっと離れる
『Good boy(いい子)』
ふんわりとした甘い匂いと共に
胸を熱く踊らせるほどの幸福感に包まれた
そして、若井はそっと口角を上げながら
ぺろりと唇の唾液を舐めとるかのように
舌を動かしながらこちらを見つめる。
「ん、へへ…っ、ぁりがと、わかぁ、」
甘く蕩け、お互いの心を満たしていく。
正式なパートナーではないのに。
こうした関係が、定期的に続くようになった
〜
Ryok side
二人の関係に、名前はまだない。
恋とも、パートナーとも、呼ばない。
ただ、
元貴は「近づくこと」を選び
若井は「支配しないこと」を選ぶ
その選択が、毎日更新されていく。
僕はそれを見て、何も言わない。
必要な時だけ、そこにいる。
静かで、慎重で、不完全な関係。
それでも、確かに前に進んでいるのを見てきた。
コメント
1件
もう結ばれてくれぇぇぇw