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[彼女目線]
文化祭の階段横の静かな通路。
人混みから一度離れて、ちょっとだけ休憩しようと立ち止まった時だった。
「ねぇ、ちょっといい?」
知らない男子が突然横から現れた。
人懐っこそうな顔をして近づいてくる。
「ここの子だよね、可愛いから声かけちゃった」
「すみません、友達と──」
「いいじゃん、ちょっとくらい!
てか彼氏とかいんの??」
ぐいっと近づく距離感に、思わず後ずさる。
文化祭ってこういうことあるから嫌だ……
誰か……けいちゃん、どこ……?
「怖がらなくていいって。俺、優しいよ?」
その言葉が一番怖い。
「やめてください」
そう言っても、男子はニヤッと笑って一歩近づく。
「ちょっと話そ──」
「……その子、困ってますよ」
落ち着いた、聞き慣れた声が後ろから落ちてきた。
振り向くと、赤葦京治が立っていた。
冷静な顔。
だけど目が明らかに怒ってる。
「け、けいちゃん……!」
赤葦はゆっくり歩いてきて、私の前に立つ。
その背中がすごく大きく見えた。
他校の男子は一瞬で雰囲気の違いに気付いたらしい。
「え、えっと……別に困ってるとかじゃ──」
「困ってないなら、なぜ後ろに下がったんですか?」
赤葦の冷静な問い。
淡々としているのに、逃げ場がない。
男子は「あ……」と口ごもる。
赤葦はさらに一歩踏み込み、
わざと優しい声で言った。
「……申し訳ありませんが、彼女は僕の大事な人です。
これ以上は困ります」
はっきり。静かに。
でも、絶対逆らえない言い方。
男子は小さく謝って逃げていった。
赤葦は私に向き直り、
そっと頬に触れた。
「大丈夫ですか」
落ち着いた声。
だけど、触れる指がほんの少し震えていた。
「……怖かった」
言うと、赤葦はぎゅっと手を握った。
「ごめん。
離した僕が悪いですね。……もう離れません」
その言葉に胸が熱くなる。
「けいちゃん……ありがと」
赤葦はふっと微笑んで、
私の頭を包むように撫でてくれた。
「僕の前で泣くのはいいです。でも──
二度と誰かに怯える顔はさせないから。」
その言い方が優しくて、
少しだけ甘い毒みたいに胸に落ちた。
コメント
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あかあしっオメェいけめそすぎんだろぉ