テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
6件
さっくん…じゃなさそうだし、康二かな?🤔🤔
翔太 side
亮平が沖縄へ行って2日が経った。〝おはよう〟〝おやすみ〟のメッセージ以外何も寄越してこない。仕事が忙しいみたいだ。
主人の居ない家は静まり返りリビングは居心地が悪く、 亮平のモノで囲まれたこの家は当たり前だけど自分の〝家〟という感じはしなかった。
今更この家を出るわけにも行かないし、亮平と離れるなんてもはや考えられない。
昨日の朝の生放送の中継に出ていた亮平は、沖縄感満載のかりゆしウエアーに身を包み、引っ掻き傷が生々しく残る腕をスタジオの司会者に突っ込まれていた。
亮平💚『実はメンバーの佐久間くんの家にお邪魔した時に〝お転婆なシャチくん〟に引っ掻かれました』
なんて適当な事を言っていてリビングで見ていた俺はひとりお腹を抱えて笑ってしまった。その後爽やかに朝の天気予報を読み上げた亮平は、いつもより引き締まった表情をしていて俺の頰を赤く染めた。
暫く見ていると佐久間から電話が入った。
大介📲『お前いつからオレんちの〝猫〟になったんだ?確かにお前猫っぽいもんな』
どの辺が猫っぽいのかさっぱり意味が分からない。
佐久間は〝晩ご飯食いに行こうぜ?お前1人だろ〟と言って誘ってきたが、〝2人では会わないって言ったでしょ〟と言って電話を切ろうとするとじゃぁ誰か誘って食べに行こうぜと言ってきた。
3人ならと了承すると3人目の都合で今日の夜、行く事になった。
俺は生放送が終わると録画を停止させて、もう一度見たくて再生ボタンを押した。 今度は余計に亮平に会いたくなって見終わった頃には俺の表情を曇らせた。
翔太💙『亮平…会いたいよ』
亮平の居ないリビングに俺の寂しい声だけが響いた。こんなに寂しくなるならやっぱり会いにいけば良かった。亮平からすぐに断られた事を思い出して益々寂しさが募り孤独感に苛まれた。
次の日、和食屋さんで待ち合わせの俺は仕事終わりにサウナに寄ってから時間ギリギリでお店に着くと、先に到着していた佐久間と合流した。
翔太💙『ねぇもう1人ってだぁれ?』
大介🩷『あっ?居ねえよ、涼太誘ったけど予定あるって断られた』
早速佐久間と2人きりになってしまった。ほら俺が注意してたって結果こうなる・・・
大介🩷『康二なら暇そうだけど呼ぶか?』
意地悪な笑みを浮かべている。嫌なやつ・・・
翔太💙『何で俺の決意を無碍にするんだよ』
大介🩷『ふん難しい事言ってねぇでお前らしく生きたら?そのうち息詰まっちゃうよ?』
翔太💙『これじゃぁ亮平に秘密ができちゃって余計息が詰まる』
大介🩷『言えばイイだろ別に。食事するだけなんだから・・・それとも言えない事でもするつもりなのか?エッチな翔太くん』
あぁ何言っても通用しない。案内された個室のテーブルに座ると佐久間は俺の隣に横並びに座った。
翔太💙『何で隣に座るんだよ。向かい合わせに座ればいいだろっ』
大介🩷『お前知らないの?ペアで座るときは隣り合わせの方が喧嘩しないらしいよ』
何言ってんだよ〝カ、カップルじゃないし〟顔が熱くなったのが分かって、佐久間に背を向けた。
〝はぁ?誰もカップルだなんて言ってないだろ?ヤダァ意識しちゃって可愛い〟そう言って肩を小突かれた。もうお手上げだ。俺の手に負えない。無言を貫く事に決めた。佐久間は楽しそうにメニュー表を見るとアレやこれやと注文している。誰がそんな食うんだよ。〝翔太は何食べる?〟おい今のお前一人分かよとツッコミたい衝動をグッと堪えた。
翔太💙『佐久間のオススメでいいよ』
そう言って瞼と口を閉じ貝になった。佐久間は暫く1人で喋っていたが無反応な俺に痺れを切らし〝なんか悪いことしたな…ごめん〟としおらしくなると、今度は俺が悪い事をしてしまった気分になって〝俺の方こそごめん折角誘ってくれたのに態度悪かった〟と言うとホッとしたのかニコリと笑って〝まぁ飲もうぜ〟と言って日本酒を注いだ。
翔太💙『いや俺お酒は・・・』
〝一杯くらい付き合え〟そう言ってチビチビ佐久間が飲んでいるのを横目に見ていた。お酒を煽る佐久間はいつだって色っぽい。
小さなお猪口に注がれた日本酒は透き通っていてほんのり甘くフルーティですごく飲みやすかった。
〝美味しい〟 思わず声が出る美味しさだった〝飲みやすいけど強いから一杯だけな〟そう言う優しい口調は何だかまだ慣れなくってむず痒さを感じたが居心地は良かった。佐久間は料理に合わせて日本酒を変えて食事を楽しんでいた。
翔太💙『ねぇそんなに味が違うの日本酒って?』
大介🩷『まぁね、もう一杯だけ飲んでみるか?』
〝やめとく…また亮平悲しませたらヤダ〟自分がお酒弱いの分かってるんだからそもそも最初の一杯だって飲むんじゃなかったとちょっぴり反省した。
大介🩷『ほら、また息が詰まってる。飲みたいなら飲めよ?俺は酔っ払いを襲うような真似しないよ』
そんなの分かったもんか。用心に越したことはない。佐久間は〝つまんない男になったね〟なんて言いながら飲んでいる。つまんなくて結構だ。お前のために俺が居るんじゃない。
俺は亮平の為に…亮平何してるかな。携帯を見るけど今日も何の連絡も入っていなかった。
大介🩷『何だよ?寂しいのかよお子様だね翔太は』
いちいちなんなんだよ。何だかイライラする。
翔太💙『佐久間はどうなんだよ?耐えられるの好きな人と何日も会えないだなんて』
大介🩷『お前誰に聞いてんだよ残酷なやつ…』
全く噛み合わない話しに余計にイライラした。〝お前何言ってんのさっぱり意味わかんない〟そう言う俺を怒ったように荒々しく後ろに押し倒すと、悲しい顔をした佐久間と目がぶつかった。
大介🩷『好きな人から拒絶された人の気持ちお前にわかんのかよ?辛いってもんじゃない。まさかお前から言われるなんてな』
数日前〝もう二人きりで会わない〟一方的にそう告げた。オレから離れられずに居たのはオマエのくせに・・・そう言われている気がした。
大介🩷『俺はお前を捨てなかったけどね?』
〝捨てる〟その言葉が冷たく耳に残った。お情けで捨てずにいたとでも言いたいのかよ・・・
嫌な記憶が蘇る・・・こいつの前で絶対に泣くものかと歯を食いしばってみたものの、涙は出ていなくとも泣いているのと、きっと同じだった。
大介🩷『・・・悪いまた酷い事を言った・・・撤回させて今の無し』
翔太💙『それがお前の本音だろ?』
言葉は吐き出したら修正は聞かない。俺の心を抉る言葉の数々は今も深く突き刺さって抜けない傷になっている。
翔太💙『情けかけるくらいなら捨ててくれた方がマシだった・・・帰る』
みっともない醜態を晒したってあの頃の俺は捨てられることの方が辛かった・・・最低なのはお互い様なのかもしれない。依存していたのは事実なんだから。我慢も虚しく個室を出る時には既に涙は頰を伝って流れ出ていた。
店を出ると生温かい南風が髪を靡かせた。タクシーに乗り込むと雪崩れ込むように佐久間が乗り込んできて行き先を告げた。
大介🩷『おまえ毎回金払ってねぇからな!』
翔太💙『へっ?』
思わず変な声が出た。そういえばこのところ佐久間を置き去りに店を出ていた事を思い出す〝それにネックレス早く返せ。あれはおれの大事なモノなんだ・・・〟
知ってる。佐久間の大事なモノだって事は。
デビューが決まった記念に佐久間が買ったモノだ。そんな大事なモノを何も言わずに俺に貸してくれたことが正直嬉しかったんだ。
亮平のマンション前に着きタクシーを降りると佐久間も一緒に降りてきた。
大介🩷『上がっても?』
翔太💙『ダメです』
〝ネックレス取ってくるから待ってて〟そう言ってエントランスホールで佐久間を待たせ、エレベーターに乗った。きっとアイツを部屋に入れると俺は流される…そんな気がした。
部屋の鍵を取り出し中に入ると、いつもと違う香水の香りがした。
自分の部屋に入り、大事にクローゼットの戸棚の奥に直していた佐久間のネックレスを取り出した。
デビューからの佐久間を見届けてきた大事な物だ。これで本当に佐久間とはサヨナラだ。俺の好きだったひとだ・・・
翔太💙『さよならだね……ンンンッ!』
急に首元に強い圧迫を感じて息が上手く出来ない。
この香水の香り何処かで嗅いだ事がある…バタバタと足が暴れると背中がベットに付いてそのまま身体が沈んで行く感覚がある・・・怖い
翔太💙『リョウへ…』