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どう見てもエルフの女性に塩味の魚を餌付けした俺は、代わりにこの辺りの情報を聞いた。

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「ふむ。ということは、俺みたいな人はこの辺りには住んでないと。

で、アンタはぼっちってことだな」

「そゆこと。ボッチってなに?」

「一人きりって意味だ」

「セイもぼっち」

くそっ!こっちは飯を恵んでやったんだぞ!

言って良いことと悪いことがあるだろ!

お前もいってるだろって?

俺は良いんだよ。フツメンだからな!

だが、美男美女は言ってはならない!







翌朝、昨日の話が酔っていたせいで間違えていたらと思い、聞き直しているところだ。

「でも、私はあの山を越えたら仲間がいる」

「そうなのか。じゃあ仲間の分も余分に塩を持たせてやるよ」

「流石精霊様」

「エルフジョークはわかんねーな」

俺たち的に言うと『神様か?』ってところだろうか?

「私達の里には岩塩が少しだけ採れるところが近くにある。

でも、強い魔物がよくいるから危険。だから塩は貴重品」

来日二年目の外国人みたいに聞こえるかもしれないが、言葉は流暢だ。

言葉足らずなだけだな。

「そうか。というか、俺も同じ方角にむかってるんだが、そこは俺が通ってもいいのか?」

「セイなら誰も文句言わない。精霊様だから」

うん。塩って大事だもんね。





と、いうことで、俺達は準備が整うとエルフの里に向かうために湖畔を後にした。

道中は俺の『魔力視+魔力波』コンボ並みに、エルフの女性アニータの索敵は的確だったから戦闘はなかった。

「ふふっ。私にかかればここは庭。セイは寝ていても大丈夫」

うん。寝ていたら先に進めないよね?

この調子でアニータと駄弁りながら歩いていると思っていたより早く着いた。


「ここ。私の里」


うん。知ってる。

だって、途中からずっと大勢のエルフが付いてきてるんだもん。

初めは黙って斜め後ろに並ぶもんだから、連行されるのかと焦ったけど…その後も何事もなく、何も言われなかった。

それで気付いたら、いつの間にか20人くらい無言のエルフを引き連れて……

「それで?いい加減教えてくれよ。この人達は何なんだ?」

道中同じ質問をしても笑ってるだけだったからな。

「セイは精霊だからみんなが祈りたくてそばに来る」

「…は?意味がわからんのだが……」

俺はアニータが何を言っているのかわからなかった。

そんな俺に声を掛ける人が現れた。

「はじめまして。この里の里長です」

「セイです。はじめまして」

老エルフの男性が話しかけてきた。

やっとまともな人が来たな……

「貴方は人ですね?我々エルフには貴方が精霊様に見えるのですよ」

「そうなんですね…何ででしょう?」

「エルフには、人には見えない精霊を見る力が生まれつき備わっています。貴方は私達が稀に見る精霊様と非常に似ている輝きを放っておられる。

それゆえのことです。お気を煩わせますが何卒ご容赦ください」

まぁ。郷に入っては郷に従えというしな。

拝まれるのは諦めよう。

恐らく月の神様から授かった能力が関係しているんだろうな。

「セイ。こっち」

「ん?ああ」

アニータは説明も何も無いから会話に困るな……

よくわからんがついていこう。お祈りされるのにも飽きたし。

アニータに連れてこられたのは、粗末では無いが素朴な一軒の小屋だった。

「入って」

「ああ」

なんなんだここ?

通された小屋の中は、中央に囲炉裏のようなものがある8畳程の空間だった。

どうやら土禁らしく、土間で靴を脱いで上がった。

「ここはなんだ?」

「私とセイの家」

うん。俺にはいつの間にか同棲相手が出来ていたようだ。

んな馬鹿なっ!?

「ちょっ…ちょっと待て。俺は旅……」

あれ?…別に目的地やそもそもの目的があるわけじゃないから、いいのか?

好きに旅するんだから、ここに少しの間エルフの生活を見るために滞在するのもありだな……

だが……

「妙齢の女性と一つ屋根の下はなぁ…」

聖奈さんやエリーはいいんだよ。異性の前に仲間だからな。

ミラン?天使が部屋に住み着いてくれているんだ。文句などない。

「妙齢?じゃない。私はまだ45歳」

「妙齢どころか倍も年上かーいっ!?」

やべっつい心のつっこみ神が……

「?セイはエルフじゃないからわからない?エルフの成人は100歳。

さっきの里長は一番長生きで300歳」

「…ってことは、アニータは人で換算すると10歳くらいか?

里長が丁度300ってなんだか適当な気もするが」

「里長の正確な年齢は誰も知らない。 一番年上だから。

次の年上が290歳くらいだからそんなもの」

いい加減だな…日本では考えられないが……

まぁ世界のびっくり人間とかで、150歳とか適当なことを言う人がいるみたいなものか。

戸籍がなければ誰にもわからんもんな。

うーーん。10歳なら一つ屋根の下でも問題ないか?

そう言われたらなんだかそれくらいの子供に見えなくもないな。

いや、雰囲気ね?

見た目はただの絶世の美女で、同年代なんだけど。

「エルフの人達はどこで年齢を見分けるんだ?」

俺にはみんなモデルみたいな美男美女で20〜25歳くらいにしかみえん。

中には里長みたいな年寄りもいるけど。

中年がいないんだよな。あと子供も。

「エルフの年齢は耳に出る。私はまだ尖りはじめたばかり」

「ああ。そういえば確かにみんな違ったな。個性かと思ってたけど、年齢によるものか…」

俺の呟きに律儀に答えてくれたアニータ情報によると、成人までは徐々に人と同じ耳だったものが尖ってくるみたいだ。

それを超えると緩やかに上に長くなり、老化が始まると少し垂れてくるようだ。

里長くらいまで行くと人と同じように老けるようだが、瞬く間に老けるようで、エルフには中年の見た目がいないとのこと。

まぁみんな美男美女でアニータも例に漏れないが、俺のタイプではないので同棲しても俺個人としては問題はない。

俺個人としては……

「黙っていればわからないか……よし。じゃあ暫く世話になるよ」

「精霊様の世話をする。当たり前。とりあえず脱いで」

「ああ。ってなるかーーいっ!!?」

何言ってんのこの子?痴女なの?エルフって変態なの?

「汚れてる。服と身体洗う」

「……自分でする。それに俺は精霊様じゃない。人だ」

「それはセイの主観。私には精霊様とセイは同じに見える」

それ貴方の感想ですよね?

人を馬鹿にした笑みを浮かべそう言ってくる某氏が、俺の脳裏に浮かんでは消えていった。

一先ず自分のことは自分ですると伝えた。

不承不承ではあるが何とか理解させて、不思議な同棲生活が始まった。






滞在三日目。

今日もまた朝起きて小屋を出ると、小屋の前で片膝を着いて祈りを捧げるエルフ達に解散してもらう。

朝食に、お布施というか捧げ物のようなエルフ達が置いていった魚を捌いて囲炉裏で焼いて食べた。

初めは拒否していた。

里長も皆に説明した。

皆納得(?)して祈りはやめることになった。

だけど、俺は失敗したんだ……


二日前。里の中央広場に集まったここで暮らす全てのエルフに、里長から上記のことを説明してもらったんだけど……

「じゃあ、俺が精霊様じゃないってことがわかった所で、里のみんなにお裾分けがあるんだ」

俺はそう告げると魔法の鞄から大量の塩や香辛料、砂糖、鉄製の鍋を取り出して、里長にみんなで仲良く分けて使ってくれと伝えた。

見たこともない魔法の鞄から、これまた見たこともない調味料をそれは大量に寄付した俺は、再び崇められるようになってしまったのだった。

うん。自業自得だな……

でも俺とアニータだけ美味い飯を食うのは居候の身としてはつらいじゃん?


そして今日。どうせ祈ることや崇めることをやめされられないならと、徹底的にしてやろうと行動することにした。

「使わないで無駄に溜まっている金を使う時が来たようだな。

……地球でも恵まれない子供に寄付をしよう」

精霊にはなれないが、聖人もどきにはなれそうだな。


エルフの里に良くも悪くも変化をもたらすことに決めた。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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