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夜の城。
『……旦那様、本日の会合はこれで終了です』
「ご苦労」
『失礼いたします』
ローレンが扉に手をかけた瞬間。
ヒュッ―――
『……っ!?』
背後で風を切る音。
ローレンの肩に、黒い刃がかすめる。
『……いたっ、……』
「ローレン!!」
影のような刺客が窓から逃げる。
葛葉は一瞬で距離を詰め、ローレンを抱き止めた。
「……血の匂い」
『……大した傷じゃ……』
「黙れ」
ローレンの肩から、赤い血が滲んでいた。
「……誰の差し金だ」
『……多分……反吸血鬼派の貴族……』
「……俺の周りを嗅ぎ回るからだ」
葛葉はローレンを抱き上げる。
『……人前だ、よ……』
「今はいい」
『……旦那様』
「2人きりだろ」
『……くっさん』
「……死ぬなよ」
『……簡単に言うな』
部屋の奥、私室の寝台にローレンを座らせる。
「……治療薬」
『……効く前に……血、足りなくなる』
「……あぁ」
葛葉は沈黙する。
ローレンは察した。
『……吸う気か』
「……他に方法がねぇ」
『……秘書を食う貴族とか』
『……笑えねぇな』
「……黙ってろ」
葛葉の声が低くなる。
「……お前」
「俺の血袋じゃねぇ」
『……分かってる』
「……でも」
「死なれたら困る」
『……それが本音か』
「……それだけじゃねぇ」
――――――――――――
葛葉はローレンの肩に手を置く。
「……いいか」
『……来て』
「……動くなよ」
『……怖ぇ顔すんな』
「怖ぇのは俺だ」
牙が、そっと触れる。
ローレンの体が僅かに震える。
『……冷て……』
「……すぐ終わる」
牙が沈む。
『……っ』
声は、抑えられている。
「……痛いか」
『……少し』
「……すぐ済む」
葛葉の喉が動く。
血の匂いが部屋に広がる。
『……なぁ』
「喋るな」
『……くっさん』
「……何だ」
『……俺を』
『……道具みたいに扱うな』
葛葉は動きを止める。
「……扱えるかよ」
「……お前を」
ゆっくり牙を離す。
傷口は、もう塞がり始めている。
ローレンは息を整える。
『……助かった、?』
「…ああ」
『……秘書として』
『……優秀だな、俺』
「……人としてだ」
『……どっちだよ』
葛葉はローレンの額に手を置く。
「……もう」
「俺の前に出るな」
『……仕事だぞ』
「……俺の命令だ」
『……貴族の命令は』
『……絶対か』
「……秘書には」
『……卑怯だな』
「……失う方が怖ぇ」
ローレンは目を伏せる。
『……吸血鬼の貴族は』
『……臆病だ』
「秘書が大事だからな」
沈黙。
『……次に刺客が来たら』
『……俺が先に斬る』
「……やめろ」
『……命令違反か』
「……そうだ」
『……困った主だ』
「……困った秘書だ」
夜の城で。
吸血鬼の貴族と秘書は、
誰にも知られず、互いの命を繋いでいた。
甘噛み
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