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「ごっ、ごめんね! お付き合いしているのよね。あなたの三日月涼はどこから?」


「ぶふぉおっ!」


春日さんが風邪薬のCMみたいに言うものだから、私たち三人は盛大に噴き出してしまった。


笑っているところで次の料理が出され、次はスッポンと干し貝柱、フカヒレのスープだ。


スッポンスープって飲んだ事がないので恐る恐るだったけれど、意外とクセがなく普通の美味しいお出汁のスープみたいだ。


少しとろみがあって熱いので、私はフウフウ冷ましながら飲んだ。


恵はスープを一口飲んだあと、照れながら話し始める。


「朱里と篠宮さん、涼さんと四人でGWにランドとシーにお泊まりデートしたんですよ。その時妙に気に入られたみたいで、グイグイこられて、……気がついたら付き合う感じになって、先日の事件が起こって心配した彼に言われて、……ど、同棲してます……」


それを聞き、春日さんとエミリさんは「おおー……」と感心している。


そして二人は恵の指に嵌まっているラビティーのリングを見て、ニチャア……と笑い、うんうんと頷いた。


「で、〝不落の御曹司〟って付き合ってみたらどんな感じ?」


春日さんは興味津々に尋ねてくる。


恵は困って私を見るけれど、「思ったままに言えば?」と促すと、モソモソと話し始めた。


「……優しいです。大人で、私がどんな子供っぽい事を言っても、男性に慣れてなくても、包み込むような優しさでどこまでも付き合ってくれて。……でも、結構グイグイくるところもあって、優しいし嫌じゃないのに、気がついたら向こうのペースになってる感じです」


「フゥウ~……」


春日さんとエミリさんは静かにはやし立て、お照れタイムの恵はムスッとしてスープの続きにとりかかる。


「か、春日さんはどうなんですか。話が途中でしたよ。神くんとどういうデートをしたんですか?」


恵がやり返し、春日さんは「えっ? 私?」という顔をしたあと、クネクネして「や~だ~」と勿体ぶる。


「いいから言え」


エミリさんにせっつかれ、彼女はクネリンクネリンしながら、大ぶりな海老のチリソースを食べつつ言う。


「やっぱりお決まりの水族館デートをしたり~、映画にも行ってみたりぃ……。勇気を出して手を握ってみたら、キュッてしてくれたの! キュッて! ふひひっ」


興奮のあまり、お嬢様がはしたない笑い方をしているのは大目に見よう。


「ユキくん、めっちゃいい匂いがするのよ~! 歩いていて他の人とぶつかりそうになった時、『危ないですよ』って引き寄せてくれて、その時にフワーッと! フワーッ! といい匂いがして、私の頭の中もフワーッ! としちゃった!」


私は生ぬるい笑みで、語彙力が消失した春日さんを見守る。


「立てばイケメン、座れば美麗、歩く姿は国宝級」


春日さんはうっとりとした顔で言い、「エッチなお肉だわ~」と言いながら、牛肉の煮込みにナイフを入れる。


いやぁ……、エッチね……。お肉はエッチだけど……。


私はとろけるお肉を口に入れ、「んンふぃ……」と頷く。


「気が合いそうって思ったけど、本当に気が合って良かったですね。私たちもナイスキューピッドできて良かったです」


恵は自分の話題から気を逸らそうと、余計に春日さんをおだてて転がそうとしている。


「本当に皆といたらいい事ばっかり起こって、本当に感謝してるわ。……と、友達になれたし、キューピッドだし、……んっふふふふ……、好き!」


いい感じに酔った春日さんは、最後に「好き」で纏めると、クイーッとワインを飲む。


最後にズワイガニを使った金色の炒飯が出て、それをレンゲですくって食べつつ、春日さんは私に話を振ってくる。


「篠宮さんは元気? 大切な恋人に手を出されて、どす黒いオーラ出してない? もうそろそろ新体制になった就任パーティーをやるんでしょ? うちも招かれてるから行くけど、晴れ姿楽しみにしてるわね」


「あ、はい。今日も家で仕事をしていて大変そうなんですが、器用な人なので仕事は問題なくこなしていると思います。……むしろ新人秘書の私が足を引っ張ってしまって、申し訳ないぐらいで……。エミリさんが経験豊富な第二秘書を紹介すると言ってくれたので、学んでいきたいと思っています」


「ん、頑張って。私もツテがないか探してみるわね」


彼女はグッとサムズアップしたあと、溜め息をついて言う。


「この面子で結婚したあと、新婚女子会旅行とかできたらいいわねぇ」


「あ、賛成。楽しそう」


エミリさんが頷く。


「男性陣は……、揃ったらどうなるのかしらね? 篠宮さんと三日月さんは親友なんでしょ? で、篠宮さんと神くんも上司と部下で仲がいい? それで風磨さん……と」


春日さんに言われ、私は「うーん……」となってしまった。

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