テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
魔界の月次清掃時間。
本来なら、
* 床を磨く
* 調理器具を消毒する
* ノスフェラトゥのヨダレを除去する
という極めて大事な業務が行われる時間なのだが。
FORSAKENでは違う。
この時間はなぜか毎回、
「不純イベント」が発生する。
そして今回の犠牲者は――アズールだった。
調理台の陰。
そこではジョンドゥが、完全に距離感を壊していた。
「1eggs、見て見て!」
満面の笑顔。
手には人間界のBL本。
「この158ページ! 壁ドンしながら“君の逃げ場はもうないよ”って言うシーン、最高なんだぁ!」
「だから何でそんなモン厨房に持ち込んでんだよ!!」
1eggs絶叫。
しかし遅い。
ジョンドゥはすでに、
1eggsを調理台へ追い詰めていた。
白いパン生地の身体で退路封鎖。
右腕ミキサーは低音回転。
ブォォン……
そして顔のすぐ横へ、
白い手をドン。
完璧な壁ドンだった。
しかも距離が近い。
近すぎる。
「……っ、お、おい!! 掃除はどうした掃除は!!」
1eggs真っ赤。
肋骨ガタガタ。
呼吸乱れまくり。
ジョンドゥはふにゃっと笑う。
「掃除より大事なことがあるよ」
「ねぇよ」
「1eggsとの愛を捏ねること」
「あるわけねぇだろ!!!」
ジョンドゥさらに接近。
甘い発酵臭。
至近距離。
「この本みたいに、もっと深く混ざり合って――」
その瞬間。
空気が死んだ。
マジで温度が下がった。
「……なるほど」
背後から声。
二人が凍りつく。
そこには。
アズール。
ウィザードハット。
死んだ魚の目。
そして鈍器みたいな300ページ報告書。
「清掃時間中に壁ドンとは。なるほど」
声が静かすぎて逆に怖い。
「掃除をサボって不純交遊。しかも業務スペースで。なるほど」
「ア、アズール様これは――」
「説明不要です」
次の瞬間。
ペシィィィン!!!
超綺麗なフォーム。
報告書の角が、
ジョンドゥと1eggsの頭へ同時直撃。
ダブルお仕置き。
「いったぁ……」
ジョンドゥ、笑顔のまま沈没。
1eggsは顔真っ赤のまま硬直。
アズールは淡々と続ける。
「厨房は愛の巣ではありません」
正論。
「ここは調理施設です」
正論。
「あなたたちがイチャついている間にも、スペクター様の紅茶品質が低下しています」
意味不明だけどなぜか正論感がある。
アズールはウィザードハットを押し上げた。
「どうしても公私の区別がつかないのであれば、組織として対応するしかありません」
ジョンドゥが目をキラキラさせる。
嫌な予感しかしない。
「二人の給与口座を統合します」
沈黙。
「つまり実質、強制結婚です」
数秒停止。
そして。
「あはははは!!」
ジョンドゥ大歓喜。
「最高だよアズール様!!」
ミキサー超回転。
ブォォォォォン!!!!
「僕と1eggsが一生同じ口座!? 家計共有!? 実質夫婦だね!!」
「違ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
1eggs絶叫。
しかし次の瞬間。
スン……
顔色消失。
「こうざ……とうごう……」
真っ白。
肋骨さらに白い。
「し、死……」
ガシャン!!!
金色のフライパン落下。
1eggs、その場に崩れ落ちた。
「キャパ超えたァ!?」
ホスフォラスがいつの間にか天井から見て爆笑している。
「骨野郎フリーズしてる!! ギャハハ!!」
アズール、深いため息。
「……完全に処理落ちしましたね」
死んだ魚の目のままメモを書き込む。
『新人骨、給与統合の単語で機能停止』
「口座統合案は保留します」
ジョンドゥ「えぇ〜」
「ですが」
アズールの目が光る。
「今月のボーナスは全額、清掃費へ回収します」
「横暴だろォォ!!」
「厨房で壁ドンした側が何を言っているんですか」
完璧な正論。
ぐうの音も出ない。
アズールはそのまま踵を返す。
去り際。
「あとジョンドゥ」
「なぁに?」
「BL本は没収です」
「!?!?!?!?」
「経費申請も却下します」
「そんなぁ!!」
ジョンドゥ絶望。
1eggsは床で真っ赤になったまま呻いている。
「こうざとうごう……むり……」
その横でジョンドゥが幸せそうにしゃがみ込む。
「ねぇ1eggs」
「しゃべるな……」
「夫婦口座って響き、すごくいいね!」
「だから違ぇって言ってんだろバカ生地野郎ォォォ!!!」
深夜の厨房に、
1eggsの悲鳴と、
ジョンドゥの幸せそうな笑い声、
そしてアズールの胃痛だけが、今日も静かに積み重なっていくのだった。
#主がうるさい
リコりす@おはよぉ〜
7,693
あおあお
8