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急に涙のネジが壊れちゃうことってない?僕はね、最近はなかったんだけどさ。




「…っ、うぅ、、ぐすっ、、」


特にこれと言って何かがあったわけではないんだよ。

でも、日々過ごしていると何かしら傷付く事ってあって、それが気がつかないうちに溜まって、溢れ出したって感じ。


蛇口を捻ったら水が流れてくるように、僕の目からは涙が溢れて止まらなくて、蛇口の閉め方が分からなくなった僕は、ソファーの隅っこでただただ涙を流していた。




「ひっく、、っ、、」


どうしよ、あと少しで帰ってきちゃうんだよなぁ。

こんな泣いてたら心配かけちゃう…




「ただいまー。」


わぁ!どうしよう。帰ってきちゃった。


相変わらず涙は頬を伝っていて、止んでくれる様子はない。

目をゴシゴシ擦ってみるけど、全然意味をなさなくて…




ガチャっ




「…涼ちゃん?あ、え?泣いてるの?!」


いつもはリビングのドアを開けたらすぐに“おかえり”と声を掛けるのに、それが無かった為、仕事を終えて帰ってきた元貴がどうしたんだろう?と言う感じで僕の名前を呼んだけど、ソファーでシクシク泣いてる僕を見て、大きい目を更に大きくして驚いた顔をした。




「うぇ、、元貴、おかえり〜、、ひっく、、」

「た、ただいま…て、なんで泣いてるの?なんかあったの?」

「分かんなぃ〜、、なんか泣けてきちゃってっ、、」

「…分かんないのかー。」


数年に一回、あるこの状況に、もう10年以上一緒にいる元貴は、最初こそ驚いていたけど、“あ、そういう感じね”と状況を把握してくれた。

そして、隣にスッと座ると、僕の胸元顔を埋めるとぎゅっと抱きしめてくれた。




「あ、だめかも、、うぅっ、それ、もっと泣いちゃう。」

「やー、ダメかぁ。」


元貴は少し困ったように笑うと、あ!そうだ!と思い出したように床に置いてた鞄を開けて何かを取り出した。




「じゃーん!マンゴープリンーっ。」


元貴お得意のあの誰もが知る青い猫型ロボットのモノマネをしながら鞄から取り出したのは、前に元貴が美味しいと言っていたマンゴープリンだった。




「食べる?」

「ふふっ、食べる…」


本来、元貴はこういう役回りは苦手なタイプだと思うのだけど、一生懸命に僕を気遣ってくれているのが可愛くて思わず笑ってしまった。




「はい、どーぞ。」


元貴はキッチンからスプーンをひとつ持ってくると、僕に渡してきた。




「元貴は食べないの?」

「一個しかないし、ぼくは現場で食べさせてもらったから、涼ちゃん食べて。」


元貴はそう言うと、僕に体をぴったりと付けて、肩に顎を乗せた。




「早く早くっ。まじで美味しいから!」

「そぉ?じゃあ、いただきまーすっ。」


パクッ。


「美味しい〜〜!」

「でしょでしょ?」


マンゴープリンが美味しいのもあるけど、元貴が嬉しそうに僕を見ているを見て、幸せな気持ちでいっぱいになった。

自分が美味しいと思ったものを、好きな人も美味しいって思ってくれるのって嬉しいもんだよね。




「うそやんっ、泣き止んだと思ったのに、なんでまた目、うるうるしてるの?!」

「え、あ、ほんとだぁ。」


今の“ほんとだ”は、いつの間にか泣き止んでた事への言葉。

あまりに自然に涙が止まってたから気付かなかったけど、いつの間にか元貴が、涙の蛇口を閉めてくれていたみたい。




「へへっ、ありがと。元貴。」


僕はマンゴープリンをスプーンでひと掬いすると、僕の肩に顎の乗せてる元貴の口元に持っていった。




「…どういたしましてっ。」


元貴は少しだけ恥ずかそうにそう言うと、差し出されたそれをパクッと食べた。




「うまぁー。」

「好きな人と一緒に食べるともっと美味しくなるよねぇ。」

「んふっ、まーね。」












-fin-

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