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機動隊の大型車両が路地の入り口を封鎖し
サーチライトの強烈な光が、煤けた壁を真っ白に焼き付ける。
「ターゲットを確認、抵抗する者は容赦するな!」
拡声器から響く声は、もはや市民を守る警察のそれではない。
中臣代議士が飼い慣らした、国家という名の巨大な暴力だ。
「クソが……俺たちまで使い捨てかよ!」
大門が吐き捨て、機動隊の盾に向けて銃弾を叩き込んだ。
だが、特殊素材の防弾盾には傷一つ付かない。
逆に、機動隊側の容赦ないガス弾が路地に撃ち込まれ、視界が白い煙に覆われる。
「黒嵜、こっちだ!」
志摩が俺の腕を掴み、崩れかけた民家の隙間へと引きずり込んだ。
「大門たちはどうする!」
「放っておけ!奴らには奴らの落とし前がある。俺たちが守るべきは、その封筒だ!」
煙の中で、大門たちの悲鳴と怒号が聞こえる。
かつて肩を並べて戦った兄弟分たちが、国家の「掃除」によって呆気なく潰されていく。
俺の胸の奥で、どす黒い感情が渦巻いた。
親父、あんたはこれを見越していたのか。
組を、部下を、俺を……全部切り捨ててまで、あの玉座にしがみつきたいのか。
「……志摩。この封筒の中身、今ここで確認しろ」
俺は狭い隙間に身を潜め、拓海の遺した封筒を引き裂いた。
中から出てきたのは、数枚の写真。
そこには、中臣代議士と、俺の親父……
榊原組長が、血のついた「何か」を囲んで笑い合っている姿が写っていた。
そして、その背後には、まだ若かりし頃の志摩の姿もあった。
「……志摩。これは、どういう意味だ」
俺はドスよりも冷たい視線を志摩に向けた。
志摩は一瞬、顔を伏せたが
すぐに覚悟を決めたように俺を見返した。
「……それが、俺が警察を追われ、お前に加担している本当の理由だ。二十年前、俺は中臣と榊原が起こした『ある事件』の揉み消しに加担した。拓海は、その過去の亡霊を掘り起こしちまったんだ」
衝撃が脳を突き抜ける。
拓海が死んだ本当の理由は、現在の汚職だけじゃない。
二十年前から続く、この街の「呪い」そのものに触れたからだ。
「……あいつは、俺を救おうとしたんだな。こんな泥沼から」
俺はICレコーダーの再生ボタンを押した。
『……兄貴。俺、やっと分かったよ。俺たちが信じてた絆は、最初から血で汚れてたんだ。でも、兄貴だけは……兄貴だけは「人間」でいてくれよ』
拓海の震える声が、ノイズ混じりに響く。
その瞬間、俺の頬を濡らしたのは、雨か、それとも。
俺は懐からドスを抜き、逆に機動隊の包囲網へと歩き出した。