テラーノベル
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海の音がいつも彼の声を攫う
そこに彼はいるのに
まるでいないように感じる
怖くなる度に手を何度も伸ばす
すぐに消えてしまいそうな
そんな彼の手は温かい
人の温度は優しさを伝える
それと同時に
いずれは引いていく波みたいに
人は有限の時間を生きている
それでも私は
その限られた時間の中で
彼を愛してしまった
上手くいかないのは目に見えているのに
彼の優しい手話や文字が
私の心にずっと残り続けている
好きだった人の筆跡やプレゼントが
苦しいことになって心に残る
それがずっとずっと嫌だった
口も耳もあるのに
使えない壊れた道具と同じように
意味がなくなってしまっている
誰かを恨めるならまだ良かった
でも恨めなかった
家族もいい人達ばかりで
周りも優しい人ばかりだから
自分の醜さだけが浮き立つ
聞こえないはずの何かが
ずっと私を責めている
逃げ道ばかり探してきた自分の弱さが
自分を後に首を絞めていく
言えばよかったなと何度も
枕を濡らした日々がある
たった短い言葉だけなのに
私はなんて未熟なんだろう
名 ▶︎吉野 栢(ヨシノ カヤ)
性 ▶︎女(15)
〝 耳が聞こえない少女 〟
〝 愛する人へ 〟
〝 終わりにできない愚かな私たちは 〟
〝 いつになったら互いを忘れられるんだろう 〟
#実況者
悪猫魔子(小説更新気分、低浮上
1,513
翠♪(不定期投稿)
36
よもぎもちぃ
160
コメント
3件
タイトルの絵文字も含めて、ひとつの詩のようなお話でしたね。耳が聞こえない15歳の栢さんの視点から、愛する人との距離や、自分を責める声が静かに、でも確かに伝わってきました。「人の温度は優しさを伝える」と「いずれは引いていく波」——その対比が胸に刺さります。あなたの筆致はとても繊細で、短い言葉のひとつひとつに余韻が宿っていました。続きが気になります。