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トリトンはビル群を三棟まとめて貫通し、瓦礫と粉塵の中へ吹き飛ばされていた。
鉄骨が歪み、ガラスが砕け散る。
『右半身凍結確認。神経伝達遅延。機能出力49%』
――個人デバイスAIの無機質な報告。
トリトンは軽く舌打ちする。
体内循環を加速。生成水を凍結層の内側へ送り込み、氷と肉体の間に水膜を形成。
『内部加圧処理開始。剥離率28%』
氷が内側から弾け飛ぶ。
さらに水流を体表へ展開。層状に圧縮し、可変緩衝フィールドを構築。
「んーん……やだねぇ。本気出そうかな」
血を拭い、青いロングヘアーをかき上げる。
「顔は好みじゃないけどさ、ガニメデ。君の戦い方は嫌いじゃない」
ガニメデは確信していた。
(あの氷フックは直撃だ。内部まで凍らせたはずだ)
その瞬間。
轟音。
トリトンを吹き飛ばした方向から、水が噴き出す。
ビルの隙間という隙間から濁流が溢れ、廃都市を呑み込む。
ここで、別の声が響く。
『フィールドに大規模水流発生! トリトン、環境支配を開始!』
――トーナメント進行AIの実況。
声は明らかに熱を帯びている。
「チッ……!」
ガニメデは空中へ退避。迫る濁流を次々と凍結させる。
『ガニメデ、広域凍結で対抗! しかし水量が圧倒的だ!』
凍らせる端から砕ける。
『水圧上昇! 凍結層、保持不能!』
背中の傷が軋む。
『個人デバイス警告:背部損傷悪化』
(くそ……!)
上空ではトリトンが水の触手で浮遊している。
濁流は一方向へ収束している。
『おっと! 水流が一点へ集中! 地形スキャン――前方に低地! これは誘導だ!』
ガニメデが気づく。
「しまった……!」
「んーん、水圧で押し潰れなさい」
四方から水壁が立ち上がる。
完全包囲されたガニメデは焦っている。トリトンによる策により盆地へ追い込みが完成していた。
ガニメデは最大出力で凍結。
氷壁を構築。
だが水は止まらない。
「水圧が増加しているな。凍結は逆に質量を増やす! これはまずい!」
骨が軋む。
「くそカマ野郎がああぁ!」
「汚物が何か言ってるねぇ」
トリトンは楽しそうに笑う。
だが次の瞬間。
ガニメデは足裏へ氷爆弾を装着。
『何か仕掛けるぞ!?』
――氷爆弾は爆発して風を起こす。
爆圧で直上へ射出。
『突破成功! 急接近! 距離三メートル!』
進行AIは、前のめりになりながら解説する。
「お前だけが飛べると思うなよォ!!」
極低温を拳へ凝縮。
トリトンは微笑む。ガニメデの渾身の雄叫びは空回る。
「本当、君ってひとは」
――点火。
閃光。
爆炎。
衝撃波が空間を震わせる。
『爆発発生! 解析中――水素反応だー!』
ガニメデは地面へ叩きつけられる。
動かない。
『戦闘不能判定! カウント終了!』
トリトンが静かに降り立つ。
「水を分解して水素を生成。拡散させておいたんだよ」
『不可視領域爆殺戦術! トリトン、冷静に罠を完成させたァ!』
歓声が響く。
フィールドが粒子へ分解される。自身のアバターとのリンクも切れていく。
濁流が消え、都市が消え、光導ラインの床へ戻る。
トリトンは片膝をつくガニメデへ近づく。
「最後の突破は悪くなかったよ」
「……クソが、次は勝つ」
『敗者ガニメデ、医療プロトコル起動』
医療AIである白いロボットがやってきて治療を施している。
そして、イオが歩み寄る。
「無様だな」
イオは一言ガニメデに呟いてその場を去った。
(クソ女が…)
ガニメデは心の中で悪態をついた。
『さあ続いて第二試合! イオ vs エウロパ!』
床が発光する。
『フィールド設定:砂漠! 高温環境、視界不良、砂嵐発生率30%!』
都市が崩れ、砂丘が隆起する。
『両選手、アバター同期開始』
イオが歩く。
エウロパが無言で立つ。
『観客の皆様、次なる激突にご期待ください!』
光が二人を包む。
『第二試合――開始ッ!!』
砂嵐が巻き上がった。