お久しぶりのかんおです。
これからは週1投稿を心がけて行こうと思います。
teller書体変わりましたか?
⚠︎これはwrwrd様の名前をお借りした二次創作です。ご本人様とは一切関係ございません。
⚠︎BLです。苦手な人はブラウザバック。閲覧は自己責任でお願いします!
新旧詐欺師
…
「あ〜……雨ぇ…」
校舎から出ようと学校玄関から外を覗く。
つん、と鼻をつく雨の匂いに、近くを通り過ぎたトラックの排気ガスの匂いが混じって、雨の日特有の気持ち悪い臭いが辺りを充満していく。
玄関は湿気がすごくて蒸し暑く、空気が重く感じて呼吸することすら楽にできない。
ただでさえ癖毛でもこもこしてるのに、こういう日はありえないくらいにボリュームが増すのだ。
まったく…エミさんに譲ってあげたいね。
「走るかぁ……」
億劫な気持ちを必死に振り払って一歩踏み出した。
「あーもー!なんで走り出した途端に雨強くなるんだよー!!」
ザーザーと音を立てて周りの家の屋根で豪快な音を奏でる雨が憎くてたまらない。
向かい風のおかげでバチバチと体中に当たってくる雨粒が地味に痛い。
「うわっ、あ゛っ⁈」
雨粒が目に直撃して、思わず体を翻す。視界がぼやけたまま変に動いたから、足元が滑って体が斜めに傾いた。
ずしゃっ、と水溜りに勢いよく尻餅をついた。
体を受け止めようと後ろについた手から嫌な感覚がした。
「っ…つ……うぇ、まじか…」
まず目に映ったのは薄く赤色に濁った水溜り。
つぎに反射的に見たのは手。石か何かで引っ掻いたのか、長い傷が手のひらにできていた。深くはなさそうなのが幸いだ。
手首が動かない。捻ったのか。
「はあ〜…泣きそ…」
「大丈夫か?お前」
ふっ、と突然自分の周りに影が落ちて、雨がかからなくなった。
「え…えっと、誰…」
「おれ?んぁ〜…大先生って呼んで」
厚かましいやつだ。初対面で大“先生”だなんて。
しかし傘を差し出されている今、その相手にそんな悪態をつけるわけもなく。
「うわ、痛そ〜…。間に合わなかったわ、すまんなぁ…」
大先生によると、校舎を走って出た辺りから追いかけてたらしいが、途中で見失ったのだとか。見つけた時にちょうど俺が転んだらしい。
「俺絆創膏とか持ってねえよな…。いやその前に洗って消毒やんな」
「なんでそんな、」
初対面の人にここまでする人って普通いない。
追いかけるのもおかしいし、見失った後も探してるのもおかしいし、転んだところにわざわざ駆けつけて色々手当てしようとしてるところもおかしい。
「…やだった?」
「え?いや、全然…」
なんならここまで気にかけてもらったことが無かったので嬉しいまである。
「なら良かったわ。お前んち近い?」
「あー、あのコンビニすぎて少ししたくらい」
とりあえず家まで送ると言われて、されるがままにナビをしながら着いていく。
コンビニの前で一旦待っててとその中へ行ったかと思えば、消毒液やら包帯やらを持って出てきた。
「そんなせんでええのに…」
「なんかお前見逃せないんだよなぁ…。あれや、母性本能ってやつ?」
「なんやそれ」
ふは、とお互い軽く笑って歩いて。
もう雨は気にならなかった。
雨の音も、においも感じない。
少し大きな傘の下の断絶空間。
せいぜい2人入るのが限界な小さな空間が、なんだかとても心地が良かった。
コメント
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好きです。週一でも頑張って下さい!!