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謳華のガラコンサートは無事に終わり、プレゼントされたお花やお菓子を皆で分けてお茶会を楽しんだ。
勉強と訓練に明け暮れたある日の夜。
「あ…。」
洗濯部屋で歌いながらワルツを踊っていたのを爆豪に見られた謳華。
「踊るなら自分の部屋で踊れ。」
「ごめん、誰もこないと思ってたから。ここ空いてるよ。」
爆豪も洗濯物を入れてスイッチを押す。
「…今の椿姫だろ。乾杯の歌。」
「そう。よく知ってるね。」
「椿姫と言えばこれだろ。」
短い会話。でもお互いこの場を離れる気はなさそうだ。
「踊る??」
「はぁ!?」
問答無用で謳華は歌い始め、爆豪の手を取った。
「歌えるんだ。」
謳華は爆豪が一緒に口ずさみ始めたことに驚く。
「オレに出来ないこと無ぇんだわ。」
「では改めて…。」
謳華が余りに情緒たっぷりに歌うものだから、思わず椿姫の舞台に立っているかのような錯覚に陥る。
「(こいつといると調子狂う…!!)」
何故こんな気持ちになるのかほんとは分かっているけど、信じたくなくて。
「また踊ろうよ。」
「お断りだ。」
「連れないなぁ。」
「いい時間潰しになった、ありがとな。」
「うん。じゃあお先にお休みなさい。」
謳華はまた乾杯の歌を口ずさみながら洗濯物を抱えてその場を後にした。
本日のお稽古は…。
「ごめん!!今日からお稽古見せられない!!」
「何かあったん??」
「今日から夜の女王のアリアの特訓するの。」
「魔笛で有名な曲ですわね。」
「オレそう言うの疎いんだけど、どんくらい有名なの??」
「CMとかで流れてる。オレでも知ってるぜ。」
と切島はスマホで夜の女王のアリアを流す。
「あー!!聞いたことあるある!!そんな題名だったのか!!」
「凄い難しそう。」
「緑谷君勘がいいね。これね最高難度で歌えるのは世界に数人なの。」
と会話に花を咲かせる謳華たちを遠巻きに見ながら爆豪は魔笛を調べる。
「(アイツにも歌えないもんがあるんだな…。復讐の歌か、アイツはどんな風に歌うんだ??)」
ついでにオペラの技法も調べてみる。
「じゃあ頑張ってきます!!」
皆の声援を受け謳華は寮を出た。
「(雨だし、魔笛でも観るか…。)」
スマホと飲み物を持ち、爆豪は自室に戻った。
その日の夜。
「また会ったね。」
今度は爆豪が先に洗濯しているところに謳華がやってきた。
「うまくいってるか、稽古は…。」
「全然ダメ。サビで声出なくなる。」
「コロラトゥーラって言うんだろ。あの歌いかた。」
「爆豪君オペラ好きなの??」
「別に。嗜みってやつ。」
「へぇ??あだっ!!」
顔を覗き込まれ嘘を見抜かれそうな気がしたので、謳華の眉間に人差し指をぶっさして距離を取らせる。
「(嗜みなんかじゃない。謳華が好きだから、謳華のこと知りたくて調べてるんだ。)」
爆豪は顔が赤くなってるのをばれないようにそっぽ向いた。謳華は唸りながら深呼吸を始める。
「呼吸法を極めないと。高い音をだし続けるために。」
「ヨガの呼吸に近いらしいな。」
「うん。常にその呼吸でいられたら良いんだけど…。」
「…次の稽古まで練習付き合ってやろうか??」
その言葉に謳華は息を呑んで驚く。
「ほんとほんとほんと!?嬉しい!!助かる!!」
「朝と放課後な。」
「学校行く前とか!?」
「そうだな。」
「私早起き得意だから!!」
「分かったよ。」
洗濯物を回収しながら。
「先に部屋戻る。それ終わったらお前も早く寝ろよ。」
「うん!!」
「(意外とはっちゃけたヤツだな…。)」
新たな謳華の一面を知れて満足な爆豪であった。