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「待って待って……。え?人と妖精族が関係を断った理由って意見の相違によるあれでしょ?それと妖精族に被害が多く出たからって話しじゃ………。」
「えぇそうよ。けど、それは『表』に出すストーリーなの。人と妖精族の意見の相違は真実で妖精族に被害が多く出たは嘘の話。」
「なんで、そんな嘘の話を作ってまで人との関係を断つことにしたんだ?」
「簡単な話よ、『勇者』に選ばれた人間の大多数はまだ16歳の若い芽。そんな子が世界を救うなんて重荷を背負って戦うなんておかしな話じゃない?
しかも、その旅は生死を分かつ危険が常に張り付いてる。そんな状態で『勇者』の親族は安心して旅を許してくれてると思う?」
「そりゃ旅には出したくないだろうけど、世界を救うためって国から言われたら…。」
「そう。国から言われたら断ることは出来ないから出すしかない。けど、勇者だろうとなんだろうと親からすればただの愛息子、愛娘なの。
この世に一人しかいない大切な存在を簡単に手放せなんて言われてるのと変わんない。そんな酷なこと言われて納得いくわけは無い。 」
「だからそんな創作話を?」
「えぇ。そして、この話を作ろうと決断した一番理由は『最後の勇者』との別れがあったから。」
「最後の勇者っていうと、妖精族をバディにしてた時代の最後の人ってことだよな?」
「そう。彼との出会いと別れがこの話を作り妖精族にもそう刷り込ませて互いに悲しい思いをさせない為に作ったの。 」
「そこまでの話は分かったけど、この話と『自爆魔法』の話って繋がってなくない?」
「いいえ、繋がってます。なんせこの『自爆魔法』を生み出したのがその勇者様ご本人で、封印するように話したのも彼なんです。」
「え?」
「………少し長くなりますが、事の経緯をお話しましょう。『最後の勇者 【アクス】』様の冒険の軌跡を。」
彼は歴代の勇者達の中でも異質な存在でした。他の勇者は仲間と共に協力して敵を倒すという連携を意識した方が多く居たのですが、彼は一人で全てを解決してしまうのです。
それだけでなく、歴代の勇者は優しさに溢れ村や町で困ってる人を放っておけないそんな性格が多くいましたが、彼は対極に位置してると言っていいでしょう。困っていようがなんだろうが、まず出るのは『損得勘定』助けたことによって自らが得られるメリットデメリットを考え、そこでメリットが多く出るならようやく話を聞くというラインに立つ。そんな人物が勇者として選ばれたのです。
剣術なんてものも教わったことがないのに我流でどんどん強くなり、仲間の戦士と模擬戦をしても、とある地点から勇者様が勝ち続け遂には試合にすらならないほどです。そこまで勇者様は単体でとても強くなり仲間の存在もほとんど要らないとまで思われてました。
戦士の役目は果たせず、魔法使いも詠唱してる頃には魔物は倒れており、賢者も勇者様が傷を負うことはほとんどなく役目を果たせてない期間が長く続きました。そしてそのまま魔王との最後の戦い。
流石にこの道中で無傷とは行かず、魔王幹部との戦闘で自分を除く仲間達は疲労困憊。魔王とやり合うには体力が持たずみな片膝を付いてただ眺めていることしか出来ない。そんな中で勇者様だけが魔王と対等にやり合うことが出来ており、支援無しに善戦している程です。そして遂に魔王を討ち取りました。が束の間彼は真の姿を見せ、再び勇者様の前に現れたのです。戦闘狂と言われた勇者様と言えど、既に体力は限界を超えてました。彼は立ってることでさえやっとではあります。しかし、ここで倒れれば世界が壊れてしまう。だから彼は膝をおらなかった。
ボロボロな状態でも彼は戦闘を楽しみ、真の姿を表した魔王と真っ向から戦い、なんと瀕死にまで追い込みました。あと一撃を与えればお互い勝てる。そんな時魔王は策を講じたのです。それは、勇者の退路を断つこと。魔王のいる空間は私たちのいる世界とは別の空間に作られており、その出入口は一つしかない。その出入口を壊すことで元の世界に帰れず相打ちに持っていこうと考えたのです。
それを理解した勇者様は、ここで初めて仲間たちと会話を交わしました。そこでずっとひた隠しにしてきた彼の気持ちが一気に溢れ出てきていたのです。自分のワンマンについて来てくれた感謝とその謝罪。また、一人一人に焦点を当て、そこでもまた感謝と謝罪を何度も繰り返し、案内人として任命された妖精にもありがとうと感謝を述べ、今まで見せたことない笑顔をここで初めて見せたのです。
そして、ひとしきり話し終えたあと彼がこれからやることを説明してくれました。その内容こそが『自爆魔法』です。世界を救うなんて彼にとってこの際どうでも良くて、ただ自分の行いに対して償いをするならば 自分以外を生きて帰す事だと彼は話し、出口に向かうよう指示を出します。もちろん仲間のみんなはそれに猛反対しますが、彼の決意…『覚悟』は揺らぐことはなくそれを察した戦士はほか二人を連れて出口に向かっていきました。
最後までその場を離れなかったのは案内人の妖精。感情だけで彼の理性的な意見を否定してなんとしてでも生きて帰ろうと説得するもそれは叶うことはなかった。そして、遂に彼は自分がこれから行う魔法を後世に伝えて欲しいと話したのです。後世に残すことで自分の存在を忘れられないようにしたかったのか、はたまた自分と同じように『覚悟』をもった人に継承したかったのか、真意は不明ですがそれを伝えたあとに最後、家族に感謝の言葉と謝罪の伝言を託し妖精を出口の方にと吹き飛ばし、彼は魔王と共に次元の狭間で消え去りました。
その後彼と共に旅をした仲間達は世界から感謝されるが、その顔に生気はほとんどなく宴が行われた翌日から行方は知れず、伝言を託された妖精は涙で顔を歪ませながら彼の家族にことの全てを話し、伝言を伝えそして自分の森にと戻っていきました。
戻った妖精はもう二度とこんな悲しい思いはしたくないさせたくないと心に誓い、人と妖精族は関わってはいけない掟を作り里に広め託された自爆魔法も伝承させず闇に葬ろうと心に決めたのです。
「これが、最後の勇者アクス様の軌跡です」
「………そんなバックストーリーがあるのに、それを外に出そうとは思わないんだな?」
「えぇ。誰も悲しませたくないですから。」
「ま、人が人である以上その負の連鎖は途切れることは無いから『勇者』という存在が消えることは無いよ。」
「…そう、ですよね。」
「けど、そうまでして誰も悲しませたくなかったという点は否定しない。」
「お心遣いありがとうございます。」
「で?そんなバックストーリーがある『自爆魔法』をこれから俺は伝授されるの?」
「あなたが望むのなら…。」
「確かにステータス的に俺はなーんにも出来ないけど、かと言って欲しいかと言われれば別にって感じなんだよな。」
「では、やめておきますか?」
「うーん……。」
結構悩みどころな話ではあるんだよなぁ。ていうのも、町を出る時フムルおばばに困難が立ち塞がりそれはマリンちゃん関連のもの。て脅されてて、あの人の勘はほぼ予知みたいなもので信憑性が高いんだよね。その厄介事に巻き込まれた際マリンを助ける術を持たない俺は、困難そのものに立ち向かうことができるか怪しいって話ではある。
が、だからと言ってこの『自爆魔法』を会得したらしたで最悪の場合『自分が死ぬ』という覚悟のもとで魔法を使わないと行けない場面になったら嫌ではある。それではマリンを悲しませてしまう。目先の壁を壊すのに俺の命を投げ捨てるのはまず俺がそんな覚悟決めるのに時間かかるし、それをクリアしたとしてマリンが悲しむ結果は見えてる。
どちらを取るかなぁ。『強さ』か『情』の二択、か……。
「悩んでいますが、先程もお話した通りこの魔法は『覚悟』によって差が出る魔法です。例で話した『自分が死ぬ覚悟』まで行けば、それは確かに『自爆魔法』とはなりますが、逆に言えば『○○を守りたい』でも、高火力な魔法を放てるんですよ?
威力が左右されるのは『覚悟』の大きさによって変わってくるものです。名前こそ『自爆魔法』なんて物騒なものにしてますが、それはアクス様がそのように使ったから自爆魔法と称してるだけで、性質自体は自爆魔法でもなんでもないです。」
「その、覚悟ってやつの度合いが分かんないだよね。ほら、こんな性格の男だから覚悟もクソもない人生歩んできてるし…。」
「人という生き物は危機的状況になって始めて真価を発揮する生物だと私は思ってます。その真価こそが覚悟ではあるのですが、あなたは仲間をとても大切に思う心の持ち主ですから、きっと『その時』が来たらこの魔法があなたを助けてくれるはずです。」
「……まぁ、うん。『覚悟』ね。
そうだな、別に覚えたとして使う使わないは結局俺次第だもんな。隠し球として持っておく分には悪くない、か?」
「では、この魔法をあなたにお教えします。アクス様が望んだであろう人物に……。」