昼休み、体育祭の喧騒が少し落ち着いたグラウンド。あちこちでカップルが楽しそうにハチマキを交換していて、その流れに🌸も少しそわそわしていた。
そんな様子を遠くから見ていたのが、黒尾鉄朗。
腕を組んでにやにやしながら、ゆっくり歩いてくる。
「……あれぇ? もしかしてさぁ、お嬢さんってば。
みんながハチマキ交換してるの見て、ちょっと羨ましくなっちゃった感じ?」
からかう声。いつものふざけた笑い。
でも目だけは、じっと🌸を見ている。
「べ、べつに……!」
「へぇ〜? べつに〜? ふぅん?」
わざと顔を近づけてくる。
「じゃあ俺のこのハチマキ、欲しくないってことでいい? いらないなら、他の子にあげよっかな〜」
「ちょっ……! それはダメ!」
言った瞬間、黒尾の唇がにやっとつり上がる。
「言うと思った。かわい〜ねぇ、ほんと」
そう言って、彼は自分の赤いハチマキをゆるくほどくと、
ひょい、と🌸の頭にかけてくれる。
「ほら。俺の、つけときな」
指先が髪に触れる。
普段ふざけてばかりなのに、こういう時だけ妙に優しい。
「……てつくんの匂いする」
ぽつっと零した言葉に、黒尾が嬉しそうに目を細める。
「でしょー? わざとだよ。
俺の付けてんだから、今日一日はもう逃げらんないからね」
「何から逃げるのよ」
「俺から決まってんでしょ。
ほら、🌸のも、貸して?」
言われるままに、自分のハチマキを差し出すと、
黒尾はそれをゆっくり自分の頭に巻いた。
「……ん。これでよし」
巻き終えた瞬間、黒尾は🌸の腰を軽く引き寄せる。
「交換したからにはさ。
ちゃんと“俺の彼女”って、みんなに見せつけてもいい?」
「やっ……恥ずかしいよ……」
「恥ずかしがるのかわいすぎ。…無理。耐えられない」
声がほんの少しだけ低くなる。
余裕ぶってるのに、目が完全に独占欲。
そのまま、🌸の頬に指を添えて、
すれ違う生徒たちを気にしながらも――
「……俺のだからね」
耳元で甘く言う。
「体育祭終わったらさ。
今日の分、全部まとめて甘やかしてあげるから覚悟しといて?」
にやっと笑う黒尾鉄朗。
でも手の温かさは、誰より優しい。
コメント
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は、ハチマキ交換だとッ!? クッ傷が痛むぜ☆←ハチマキ交換した人と一ヶ月で別れた者です